第9話 キングおぶ陰キャ

『休学って事は、元は、そのがくしゃーってところに通っていたのか?』


「は、はい‥…‥と、友達も、いいい、いっぱいいました!い、いっぱい!」


こーんなに、こーんなに、と左腕だけを大きく広げて友達の多さをアピールするイリス。


右腕まで広げないのは、俺への配慮だろうな。嬉しい。


『どんな子達だった?やっぱ、お貴族様?お姫様だし。』


「わ、私の事を‥....‥た、頼りにしてくれる‥..‥子達です‥..‥き、貴族ではありません‥...‥」


へぇー。平民と仲良しのお姫様とか、なんだか小説みたいだ。


「お、お金をよ、よくねだる子達でして‥...‥お、お金の事がだ、だいすきなんです‥...‥」


『え?』


「で、でも、お金をあげたら、な、何故か、いつも消えちゃって......」


不思議ですねー、と心配そうに笑うイリス。


お前の方が心配だ......


『.......その子達以外に友達はいるか?』


「い、いませんけど.......あ!一人います。」


大事な思い出でもあったのか、パーッと笑顔になったイリス。


『お、誰?』


「こ、校舎裏のミャーちゃんです!」


『........ミャーちゃん?』


「ミャーちゃん!」


『猫さん?』


「猫さん!」


..............頭を抱えることが出来ないが、頭を抱えたくなった..............


この子、意外と、いや、メチャクチャ可哀想な子じゃない?


もっと優しくした方が良さそうだな.........


「あ、後.........その‥......‥きゅ、休学ですけど..............わ、私、み、三日後に学舎に戻るんですよね?」


『そっか......__』


「それで、さ、再試験ってのをう、受けなくちゃならなくて.......」


『そっか.......』


「でも、ぜ、全然勉強できてなくて........」


『..........ヤバくない?それヤバくない?!』


受けられなかったらどうなるの?!


イリス、王族でしょ?!風評被害ヤバい事になるよ?!


この国にちゃんとしたメディア媒体があるか分からないが、王族が試験に落ちたと伝わったらヤバい。


俺みたいになる。俺は三次試験まで落ち、中卒になった男‥........‥山田トゥインクルスター綺羅々。


俺みたいにならないよう、俺が全力でカバーしなくちゃなりませんな。





・・・





年に世界中から数万人の人が集まり、その門を叩く。


受け入れらる者もいれば、あっさり返される者もいる。


世界有数の教育機関。


学舎ハデシス。


かの広い校舎の一室で、ある女の子が口を開けた。


「あの子、休学明けるって。どうすんの?」


その隣に座っている女の子が答えた。


「どうすんの?って、言われてもね‥...._‥」


貢がせるだけ貢がせたし‥...‥と、無造作に頭を掻いた。


「そーだね‥...‥踊らせるのも面白そうじゃない?」


ニチャァ、と気色悪い笑みを見せるのであった。

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