第7話 慈愛の肩ポンポン
ギリ火傷する熱さのスープをイリスの頭にぶっかけたイリスの姉は、イリスの反応がお気に召さなかったのか、不満そうに言った。
「実の姉に挨拶はなくて?もしかして、腕だけじゃなく、脳まで腐っちゃったのかしら?」
「い、いいえ.......ご、ごきげんよう。お姉さま........」
あれが......."姉"........ね......
食堂に来るまでイリスから聞いた話だが、イリスは第六王女であり、五人の姉がいるらしい。
因みに、兄も四人いるそうだ。
ここまで来たら、大体予想がつく。
こんなに跡継ぎがいて、揉め事がない筈がないじゃん。
当然の結果と言うべきか、イリスは一部の兄達と姉達によって何度も悪質な嫌がらせを受けそうになった
が、
パパである魔王がイリスを大変可愛がっており、嫌がらせを受けそうになったら、ザ・パパガードで、守ってきた訳。
..........イリスが家出を決行し、期待外れになるまでは............
家出を決行し、四ヶ月後、イリスはボロボロになって、パパのところに戻った。
んで、ボロボロのイリスを見たパパは、我が子に失望して、ザ・パパガードを取り消した。
..................父の愛情とは.........
大きな壁が取り消された事によって、イリスを毛嫌いにしていた一部のご家族は、水を得た魚の如く、イリスを虐め始めた。
今、イリスにスープをぶっかけたのも、その嫌がらせの一環だろうか?
だとしたら酷すぎる。
子供にやって良いことじゃない。
少しの怒りを覚え、激しくピクピク動く俺(中指)
中指(俺)が動くのを感じたイリスは、左手で抑え、小声で「黙って下さい............」と囁いた。
そこで、ダーーーーン!!!とイリスの姉がテーブルを叩いた。
「...........今、なんて、言いましたの?」
青筋を顔に立てて、鬼の形相で..........
それを見たイリスはすっかり腰を抜かし、舌を噛みながら答えた、
「な、何も言ってまひぇん!」
「言ったでしょう?!"黙れ、婚期過ぎのクソババァ"って!!」
「言ってないでしゅ?!!」
「いいえ、言いましたわ!!"いい加減、就活しろ!クソニート!"って言いましたわ!」
ギャアギャアと機関銃のようにありもしない罵詈雑言を吐き散らかし始めるイリスの姉。
そこまでは言ってない。何言ってんだ?この女。
俺はさらに大きな怒りを覚え、より激しくピクピク動き始めた。振動で、右手が動くぐらい。
それを必死にイリスが左手で抑えた。
「だから、黙って下さい!!くッッ抑えられません!!」
「...............?!!」
「待て!暴れないで下さい!静まって下さいッッ!!」
「................!!」
ガチで食堂全体が静まった。
元より王女二人が喧嘩(?)をしたら、そりゃ、人目を集めるわ。
うん。なんていうか。絵面がイタい。
右手を抑えて「抑えられない!」とか言ったらね?あれじゃん。中学生に発病例の多いあれじゃん。
イリスの姉の怒りの目は、だんだんと優しい目に変わりつつあった。
「怒る気も無くなりましたわ........何かあったら、私の部屋まで来なさい..........詫びの茶ぐらい出しますわ。」
イリスは肩を優しくポンポンされた。
数秒後、自分が何を言ったのか客観視したイリスはひどく赤面した。
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