【完結】最強転生者のゆかいなスローライフ生活 ~戦いに巻き込まれるけれど、モフモフとハーレム付きのスローライフに意地でもしがみつく~
1-28. 樹海の真面目な調査だと思っていたらそこそこ楽しかった(3/5)
1-28. 樹海の真面目な調査だと思っていたらそこそこ楽しかった(3/5)
樹海と世界樹の調査は、大きく2つに分けられる。
1つは、樹海の状況を調査すること。樹海は広すぎて、一度に見ることはできないため、24の区画に分けて、1年かけてすべてを見るようにしている。
もう1つは、世界樹の状況を調査すること。世界樹はこの世界における循環システムの根幹であるため、毎回、様子を見るようにしている。
「思ったよりも歩きやすいな」
木々はうっそうと茂り、大地に複雑に根を張る。樹海の中は木々の枝葉が重なるように生えているためか、日光に照らされる部分が少なく木陰がかなり暗く感じられる。それもあって、コケとキノコがびっしりと地上を覆い尽くしている上に湿度が高い。なんとも住むには不適な場所である。
その中をナジュミネは大きな木の根をくぐったり、飛び越えたりと常人であれば苦労する足場も意に介さずにムツキたちと同じくらいのスピードで付いてきている。
「ミセスはさすが魔王、鍛え方が違うようですね」
「ふふっ。元魔王だがな。プロミネンスに魔法だけではなく身体も鍛えられたからな。それに鬼族でもあるから、単純な腕っぷしでも並の兵士に負けぬぞ」
「心強いですね」
「ところで、旦那様。どうしたんだ? 先ほどから口数がやけに少ない気がするが」
「あ。ごめん。仕事に集中していた」
大嘘である。
ムツキは旅行の話を切り出すタイミングを考えているだけである。もちろん、仕事もしているが、口数が少ない理由は仕事ではない。
「……すまぬ。旦那様が仕事中なのに浮かれていた」
ナジュミネはムツキの一言に、笑顔が消えて、しゅんとしてしまった。アルは、大至急フォローをするようにムツキに目配せをする。ムツキもハッと気づき、言葉を一生懸命に紡ぎ出す。
「あ、いや、そういう意味じゃ。ナジュに見せたいモフモフがいないな、って思って焦っていたんだ。ナジュが一緒にいてくれて、楽しんでくれている方が俺は嬉しいな」
ナジュミネはパっと笑顔を取り戻す。
「そうか! ありがとう。そこまで妾に気を遣わなくて良いぞ? 妾は旦那様と一緒にこうしているだけで楽しいし嬉しいからな」
「ミセスには感服するばかりです」
「ワン! ハッ……ハッ……ハッ」
今日のお供の一匹、ビーグルが何かを見つけたようでムツキとナジュミネに知らせる。
「ん。これは何だ?」
「これは今回の目的の1つさ。この時期に咲く花で、見た通り、揺らめく火のような花びらの色と形は、まるでナジュの髪のようだよな。良い香りもするから嗅いでごらん」
ムツキがしゃがんで手で仰ぐようなポーズをしたので、ナジュミネはそれに倣ってしゃがみ込んだ後に手を振って香りを嗅いでみた。彼女の鼻腔を砂糖菓子のような甘い香りが満たしていく。
「これは、これこそ花の香りと言わんばかりの甘い香りだな」
自然と綻んだ笑顔をするナジュミネを見て、ムツキはその花を採る。
「はい。プレゼント」
「ありがとう。しかし、採ってもいいものなのか?」
ムツキは問題ないといった仕草をして、おどけてみせる。ナジュミネはその仕草に少し微笑む。
「ああ。これの群生地はこの先にあるんだ。ここに1本だけ咲いていても、おそらく枯れるだけだからな。それならナジュに渡した方がずっといい」
「こんな素敵なプレゼントをありがとう。大切にしたいから、枯れる前に押し花にしようかな」
「ワン! ワン!」
「どうやら、さっき言った群生地が近いな。驚くと思うから、見に行こうか」
ムツキは、ナジュミネの手を取って歩き始めた。彼女には手から伝わる温もりと気に掛けてくれているという優しさが何より嬉しかった。
アルと妖精たちは少し離れて付いていった。なるべく2人の視界に入らないように、音も声も立てないようにひっそりとしている。
そして、先を歩く2人は開けた所に出た。
「すごい」
ナジュミネは思わず言葉が零れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます