1-14. 単なる力試しだと思ったら誓約付きの神前試合(ガチ)だった(4/5)

「ユースアウィス様。ムツキは様々な魔法に心得があるのですか」


 プロミネンスはユウの隣でムツキとナジュミネの戦いを見ていた。彼から見て、ムツキの強さは規格外中の規格外であり、異常そのものだった。


「いぬさんチーム、いい連携ニャ! うさぎさんチーム、がんばるニャ! ねこさんチームも負けるニャニャ!」


「ワンワン!」


「長いから、普段はユウでいいよ。私はプロみんって呼ぶね。それと、そうだよ。ムツキにできないことはほとんどないんだよね。」


「できないことはほぼない?」


「ニャニャニャ!」


 プロミネンスがそう聞き返す。


「もっと応援の声を張り上げるニャ!」


「プゥプゥ」


「そう。武器は何を持たせても使いこなせちゃうし、魔法なんて知られているものは全部使えるし、なんだったら、私も想像していなかったような新しい魔法も自分で作り出しているんだよ。空を飛ぶ魔法【レヴィテーション】もそう。私の方が後で教えてもらっちゃったくらい」


「神の想像していない魔法をつくる?!」


 魔法にはユウが決めたセオリーがあり、そのセオリーに沿って新しく魔法が発見されたり、誰かしか編み出せない固有魔法のようなものはあったりしても、それはあくまでもユウの知る範囲である。


 しかし、ムツキは例外中の例外のようだ。


「ニャ、ニャニャ! ニャー!」


「いい調子ニャ! ご主人にきっとオイラたちの応援が届いているニャ!」


「そう。ムツキにとってはとても簡単なことなんだ。それに、ムツキが本当に本気を出したら、私も勝てないかもしれない……ううん、勝てないし、この世界を滅ぼすこともムツキには超簡単だよ」


「バウッ!」


「なんと!」


 プロミネンスはムツキという存在が自分たち魔人族の崇めている者たちよりも恐ろしいものだと知った。


「おぉ! ご主人がすごいニャ! さすがニャ!」


「だけど、ムツキは本気を絶対に出さないし、スローライフを過ごしたいから世界を滅ぼさないし、何よりすっごく優しいの。力に溺れないし、力を悪用する気もない。本当に強くて優しい心がムツキの最大の強さなんだよ」


 ユウがムツキを見つめながら恋する乙女のような表情をして説明するので、プロミネンスは目の前の神様もただの一人の女の子なのだと認識した。


「なるほど。ユウ様はムツキがお気に入りなのですな」


「ご主人、かっこいいニャ! 輝いているニャ! 本当に物理的に輝いているニャ! ピッカピカニャ!」


「もちろんだよ! あ。ナジュみんがムツキのハーレムに入っても、私が1番なんだからね! ナジュみんは2番だからね!」


 ユウはナジュミネではなく、プロミネンスに宣言しておいた。いずれナジュミネにもそう宣言するだろう。


「まあ、魔人族はより強い種や種の多様性を残すために多夫多妻制を採用している国が多いので、問題ないと思いますぞ。実際、炎の魔王領もその仕組みを採用していますからな。ただ、ナジュミネが2番に甘んじるかは分かりませんがな。はっはっは」


 プロミネンスはナジュミネの負けず嫌いを表現したかったようでそのような言い回しをした。


「おぉ! すごいニャ。もうそろそろ決着が着きそうだニャ!」


「ん-、負けたら慰み者でもいいって言っていたんだから、2番どころか増えれば増えるほど下がるかもだけどね?」


「……そうじゃった」


 プロミネンスはナジュミネに既に勝ち目が見えていないので、負けた時の対応をどうするか考えなければいけなかった。


 考えるべきことは、炎の魔王を再度選ぶということである。


「っていうか、多夫多妻? ムツキ以外の男がいるなら、ムツキのハーレムに入れてあげないんだから!」


「ニャー、ニャー。」


 ねこさんチームはとっておきのラインダンスを披露し始める。


「いや、まあ、仕組み上はそうですが、ナジュミネが負ければ、他の男とくっつきようがありますまいよ」


 プロミネンスはナジュミネが幸せになれれば、それでいいと思っている。


「まあ、ナジュミネはなんだかんだで既に惚れているようじゃし、ムツキも満更じゃなさそうじゃし。悪いことにはならんじゃろ。悪いことになれば、……まあ、それも人生かの」


 ユウとプロミネンスは、そろそろ終わりを迎えそうな試合に目を戻した。


 ケットと愉快なモフモフ応援団たちは興奮冷めやらぬようでさっきからずっと鳴いていた。


 応援団の近くで話をするとしばしばこういう状況になるものだ。

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