1-5. ただの幼女だと思っていたら女神様だった(1/3)

 女の子の正体は、この世界の唯一神 女神ユースアウィスである。この世界を作った神であり、つまり、幼く見えても実年齢はこの世界より上である。


 具体的な年齢を伝えることはできない。


「年齢は乙女の秘密だよ!」


「年齢? ユウ、誰に言っているんだ?」


 ユースアウィスだと長すぎるので、ムツキだけでなく周りからも普段はユウと呼ばれている。


「さぁてね」


 この女神はこの世界でのムツキの育ての親でもあり、1人目の伴侶でもある。神話でも親子や親せきと結婚して子どもを生すことはよくあることだ。ムツキがケットたちに出会うまではユウが全てのお世話をしていたのだ。


「ケトちん。私のご飯あるー?」


「ユウ様、もちろん、ご用意していますニャ」


 ケットは恭しく礼をして、猫たちに食事を運ばせる。


「ユウ、乗れ」


「ありがとー、クーちゃん」


 クーはユウが座ったことを確認して椅子まで彼女を運ぶ。彼女はクーの艶やかな長毛を嬉しそうに撫で触る。クーはそれをこそばゆそうな反応をしながら嬉しそうにしている。


「いただきます! あーん」


 ユウは椅子に浅く座り、仔猫にエプロンをつけてもらうと口を大きく開ける。


「ニャ」


「ん-。美味しいっ。さすが!」


「喜んでもらえてニャによりですニャ。あ、口が少し汚れていますニャ」


「んー」


 ユウは口を閉じて尖らせながら、ケットにナプキンで口を拭いてもらう。


「拭けましたニャ」


「……老けた?」


「絶対に言葉の意味が違いますニャ……」


「そっか。あーん」


「ニャ」


「ん-。これも美味しい!」


 椅子に座っているユウは何の迷いもなく、いろいろと猫や犬から奉仕を受けていた。


 そう、神である彼女は周りから奉仕を受けることに何の躊躇もなかったため、ムツキが最強になる代償の呪いをこれでもかと付与できたわけである。


 こうして、妖精とはいえ動物たちに食べさせてもらう男と幼女がいるというシュールな絵面ができあがる。


「ところで、世界の管理というのも大変なんだな」


「まあ、いつ何が起こるか分からないから、割とてきとーだけどね」


 ユウは今も世界の管理を行っており、急激な変化は極力起きないようにしている。今の彼女の部屋には管理に必要なツールがあり、ムツキでさえも部屋に入ることはできない。


「そういえば、今日も人族が来たんだね」


 ユウは傍らにいるウサギを撫でつつ、ムツキにそう訊ねた。


「ああ、そうなんだよ。困ったもんだ」


 ムツキは嫌そうな顔をしながら首を縦に振る。


「今日も……あれ、なんて国だっけか。ともかく、変な国からやってきたんだ。本当に困ったもんだ」


「まあ、ここは場所がねー」


 ムツキたちが拠点にしているのは、妖精たちの楽園、世界樹の樹海である。中央には世界の中心とも言える世界樹が生えており、その周りをまるで海のように広大な森林が囲っている。


 資源が豊富なこの樹海は人族や魔人族に目を付けられてしまっている。昔こそ、妖精たちが彼らを追い払うこともできたが、やがて組織的に動くようになってきた彼らに脅かされつつもあった。

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