1-3. 最強で万能だと思っていたら生活力皆無だった(2/3)
「ニャ」
「ワン」
ムツキが脱衣所に着くと、猫や犬が肉球の手を巧みに使いながらもせっせと彼の服を脱がし始めた。
何故か。
ムツキは戦闘において最強であることの代償として、呪いとも言える様々なデバフが掛けられていた。
その1つ、着脱不可の呪い。自分で衣服を脱ぐことができない呪い。無理に脱ごうとすると服が弾ける。よく分からない呪いである。以前、彼が無理に脱ごうとしたら、下着まで爆散して全裸になった。
「いつもありがとう」
「ニャ」
猫は鳴き声と身振りで、気にしないでください、と伝えているようだった。
人間の言語を使えるのはケット、クー、アルだけで、ほかの猫、犬、ウサギは理解できるものの話せないようだ。
「さて、入るか」
次に、ムツキは開けられた扉をくぐって風呂場に着く。
彼が風呂用の小さな椅子に座って呟く。
「【バブルソープ】」
すると、ムツキの身体に細かい石鹸の泡が纏わりついた。
「ぷぅ! ぷぅ!」
その後、ウサギたちがせっせと彼の身体を洗い始めた。犬や猫も途中から交代で彼の身体を洗っていく。
洗髪不可の呪い、および、洗身不可の呪い。自分で髪を洗うことも身体を洗うこともままならない呪い。彼自身の意志でできるのは食事前に手を洗うくらいである。よく分からない呪いである。
「ワン」
やがて、ムツキに付いていた泡がすべて流されて、犬が洗い終わったとばかりに鳴いた。
「ありがとう」
「ワン!」
そして、ムツキは猫や犬が見る中、外にある露天風呂へ向かおうとしていた。猫が扉を開ける。
風呂場はスーパー銭湯さながらにいくつかの風呂があり、その中に雄大な星空を見られるようになっている露天風呂もあった。
「あぁ。幸せだ。溶けそう」
「ニャ?!」
「バウ?!」
「あははは。ごめんな。本当に溶けるわけじゃなくて、疲れが取れているってことだよ」
「にゃ~」
猫と犬がホッとしたようで小さく鳴いた。
しばらくして、十二分に浸かったムツキは立ち上がり、再度軽くお湯で身体を流した後、脱衣所の方へ向かった。
もちろん、身体を拭いて、ラフな部屋着に着替えさせるのも仔猫や仔犬の役割だった。
「【ドライベール】」
そう呟いたムツキの頭髪周りを乾いた風が優しく包み込む。ドライヤー代わりの魔法のようだ。
「おぉ、身も心もさっぱりしたようですニャ」
「いつも大満足だ!」
「そう言ってもらえると皆も嬉しいですニャ」
リビングにはケットがソファを掃除して待っていた。
ムツキはそのソファに座ると、やがて、先ほどとは別の仔犬や仔猫、そして、仔ウサギがムツキに寄ってくる。
「ニャー」
ムツキは寄ってきた彼らを優しく撫で始める。
「プゥプゥ」
「ワン! ワン!」
撫でてもらえていないと鳴いたり構って構って攻撃を始めたりする者もいる。
「幸せだなあ!」
これが、彼の幸福のひと時、おモフである!
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