1-2. 最強で万能だと思っていたら生活力皆無だった(1/3)
「やっぱり、今日もいい天気だったなあ」
太陽も山の奥へと沈み始める頃、まだまだ暖かな陽気に包まれている。
目の前に広がる大きな畑や家畜のいる大きな牧場を眺めながら、ムツキがロッキングチェアに座って揺られている。
「幸せだなあ」
そう呟くムツキの膝にはタオルケットがあり、その上にキジトラの仔猫が丸まって寝ていた。
「ふにゃ」
「……幸せだなあっ!」
ムツキは起こさないようにゆっくりと、まだ仔猫ならではのふわっとした柔らかい毛並みを堪能するように撫でている。頭からお尻へ流れるように優しく優しく撫でまわす。
「のどかだ。これこそ、スローライフの極みだな」
「ご主人は妖精が好きニャんだニャー」
ムツキの目の前にはいつの間にか、胸元の白色の毛以外は黒色の毛並みをしている猫ケット、象のように大きく全身が碧色をしている長毛種の犬クーがおり、そして、鋭く黒いツノを生やした山吹色のウサギが遠くからやってきていた。
そのウサギはケットと同じくらいの大きさをしており、紅色の眼光がツノ以上に鋭い。そして、ウサギはムツキに恭しく礼をする。
「マイロード。アル、ただいま帰還しました」
山吹色のウサギはアルと名乗り、仔猫を起こさないように小さな声で挨拶をした後にケットの隣にいる。
「にゃー」
しかし、気配に気付いたのか、仔猫は起き上がった。
「みんな、ありがとう。ちょっと変なこともあったが、みんなのおかげで今日もスローライフを満喫できたよ」
ケット、クー、アルはそれぞれ嬉しそうである。
「さて、家に入ろう。クーも小さくなってくれ」
「わかった」
クーはその象のような大きさからゴールデンレトリーバーくらいの大きさになった。
そして、1人と4匹は大きなログハウスの中に入っていった。
丸太や木の板でできているログハウスは木の匂いで爽やかな香りが充満している。そのログハウスの中には、夕食の準備を始めている猫や犬、ウサギがそれぞれ数十匹単位で忙しなく二足歩行で動き回っている。
「ご主人、ご飯はまだできていニャいから、お風呂にしますかニャ、それとも、おモフにしますかニャ」
ケットの口からおモフという謎の単語も飛び、それに答えるためにムツキは即座に口を開く。
「風呂でモフがいい!」
ケットは少し考えた後に、2本の尻尾を勢いよく横に揺らす。
「お風呂では毛が濡れるので、おモフはできニャいニャ。全身がビッタビタだニャ」
「それもそうか。じゃあ、風呂に入って、さっぱりしてから、モフだ」
「それニャら、承知しましたニャ」
ケットは一枚の大きな葉っぱを見る。
大きな葉っぱは紙の代わりのようで、ケットはそれを見ながら何匹かに指示を出し始めた。
数匹の猫と数匹の犬が二足歩行で来て、整列した。
「ニャ!」
「バウ!」
「よい返事ニャ。それでは、ご主人。この仔たちにいろいろと申しつけてくださいニャ。決してご自身でしニャいようにしてくださいニャ」
「分かった」
ムツキはそう言って、数匹の動物たちとともに脱衣所に向かうのだった。
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