第11話 無能をぶん殴って、推理ショーへ!!

「じゃあ、番長裁判の前。美術準備室に行ったそうだが」


「……はい。行きました。その時には、飛ケ谷は生きてて寝てました。話はしてないです」


 ふむ。


 3年の教室で、行われる事情聴取。


 俺とリリアの座る机の前の席に座り。冷静に話をする3年・蘆屋秀麿。


 コイツ以外にも、3年はいるが。俺らのずっと後ろのロッカーあたりで、じっと固唾を飲んで見守っているだけだ。


 こいつらは、俺が全員しばき倒した覚えあるからな。


 実力でかなわないって、分かってるんだ。ええ。


「そうですか。あの、2年生の坂東シンジさんに慕われてるとか」


「!!」


 む? なんだ?


 坂東の名前に反応して、顔をしかめた?


 これは、怒り?


 なんだ?


「……あいつが、どうかしたか?」


「いえ。番長に復帰させたいそうで」


「あいつはな。俺は違う」


「そうですか」


 ……こいつ、マジで番長になりたくいんだな。


 あれ? じゃあ、そういうこと?


 こいつ、2年の坂東の事。嫌いなんじゃね?


 っま、いいか。


「あと一つ。1年の参謀。あいつ、抗争の時に見たか?」


「1年? ああ、加藤か。いや見てないが」


 そうか。


「他の3年で、見た奴いるかー?」


「「「「「いや、見てないっす」」」」」


 ふーん分かった。邪魔したな。


 そう言って、俺達は3年の教室から出た。


 どう思う?


「2年生の話題ででた表情が気になります。あれは、自分への怒りです」


 え? 2年にじゃなくて?


「ええ。目を伏せ、唇を噛んでいました。っが、手に力は入ってない」


「あれは、相手より。むしろ、自分に失望するよう感じ。

自分自身に対する失望・怒りでしょう」


「つまり、2年生。坂東シンジの期待か何かを裏切ってしまったと感じているのでは?」


 ふーん。そっか。

 

 俺としては、蘆屋は、坂東嫌いだと思うぞ。


「? そうなんですか?」


 ああ、坂東シンジは、あいつを番長に復帰させたい。


 でも、奴にはそれがマジでない。


 自分で言ったろ? その気はないって。


 あれは本心だ。


 番長したくないんだよ。


「え、元番なのに!?」


 多分な。


 それに、飛ケ谷が死んで、次の番長に自分の出番が、もう一回くるかもしれねぇ。


 選挙とかいうふざけた制度で終わらされた、夢よもう一度が来るかもしれねぇ。


 それなのに、あいつには熱がない。


 ただの腑抜けだ。


「ふーむ」


 それと、1年参謀の行動が気になる。


 ダチが言ってたが、俺は秀麿と、副将たちぶっ飛ばして、参謀も殴ったらしいんだが。


 1年の参謀。あいつ殴った覚えないんだよなァ?

 

 ホントに参加してたっけ? あいつ?


「つまり、加藤四五六がいなかった時間があるのでは。っと?」


 あるかもしらん。


 2年にも聞くべ。


「そうですね」


 っという訳で!


「2年の坂東シンジか? 少し話を聞きたい」


「! 極道番長……!! わ、分かりました」


 次は、秀麿を慕っている2年。


 坂東シンジに会った!!


「どうぞ、座ってください」


「ああ」


「どうも」


 2年の教室に入り。坂東シンジに話を聞く。


「お前が、美術準備室に行ったとき。飛ケ谷はどうだった?」


「俺が番長の美術準備室に行ったら。死んでなかったよ」 


 ふむ。


「では、その時。部屋がどのような様子だったか言ってください」


 お、リリアが突っ込んだ。


「え。その。グースか寝てたよ」


「彼の顔は? 部屋は? 匂いは? 陶器は?」


「……思い出せるか! そんなの!!」


「なるほど。分かりました。あなたは犯人ではない。

ただし、犯人をかばっている!!」


 おお! 更にぶっこみ!!


 どうする!? シンジィ!!


「! ち、違う! 俺だ! ああ認める! 俺が殺したんだ! 

行ったら寝てたから!! で、殺したんだ!! 赤い陶器で!」


 あ。こいつ引っかかった。


「違います。あなたは、嘘を言っている」


「な!?」


 死因は、白い陶器。


 赤じゃねぇ。


「え?!」


「あなたは、3年生の先輩が殺したと思って、かばってるだけです」


「!! ちがう! 俺が殺し」


 おい、3年の先輩も殺して無いぞ。


「え!?」


「あなた、何かお願いをしませんでしたか? 番長に話をしてほしい。タイマンを受けたりするように言ってほしいとか」


「あ、ああ。そうだ。南の番長に2度も負けて、しかもクソシャバイ方法で負けたらしいから。西校番長の名を守るために。引導を渡してやってくれ! そして、あんたが番長復帰して! 西校を盛り上げてほしいって!!」


 あー。なーほーね。


「そうですか。それで分かりました。彼が自分を恥じた理由が」


「え?」


 そもそも、行かなかったんだな。あいつ。準備室に。


「え!?」


「そうです。番長をしたくなかった彼は、会いに行くのをやめた。

あなたの声を無視したから、自分を恥じているんです」


 そうか。


 じゃ、なんで行ってない奴をかばうかと考えたら。


「死んでたんですね? 番長が」


「……ああ。そうだ。部屋に入ったら血の海で、奴が死んでた。先輩がやったと思ったけど、違ったのか!! 

く! すいません! 先輩! 俺がわがまま言ったから! 追い込んじまった! 勝手に期待押し付けて! 先輩のこと考えず! くそぉ!!」


 そういうのいいから。事実だけ整理するぞ。


 あ、ついでに抗争の時。1年の参謀見たか?


「あ、はい。え、1年ですか? 見てないな」


 そうか。じゃ、整理するとだ。


 はじめは、3年、2年、2年、1年でいって、1年が死んでるといったが。


 本当は『3年の前に誰か来てて殺してた』ってことになる。


「ええ。つまり、誰か、3年(部屋へ行ってない)、2年(番長死んでる)、2年、1年(番長死んでる)ということですね」


 1年の場所は、最後尾と決定できないがな。


 それでも、『3年(部屋へ行ってない)、2年(番長死んでる)』がセットで確定というのはでかい。


「ええ。そして、次で決まるでしょう」


 もう一人の副番! 


 2年生・石崎仙太郎の話で!!


* * *


「って訳だ。きりきり吐いてもらおうか」


「は、吐いてって」


 さて、他の2年生に呼んでもらって、やってきたもう一人の副番! 


 2年生・石崎仙太郎! 


 手を斬ってて包帯を巻いた彼は、居心地悪そうに席に座りつつ。


「お、俺が行ったとき、飛ケ谷は生きてたよ。グースカ寝てた」


 っと、嘘をついた。


「嘘はいいです。3年生・蘆屋秀麿と2年生・坂東シンジの証言で、あなたが準備室に行ったとき。すでに死んでた事は、わかってます」


「え!?」


 まァそれも。3年・蘆屋秀麿、2年・坂東シンジ、2年・石崎仙太郎の順なら。の話だがな。


「!!!」


「話してくれませんか? でないと警察が来る」


「!? え!?」


「警察は、プロです。絶対に証拠を見つけますよ。

あなたの割った、赤い陶器の器から。指紋と血痕を」


 あと、血の足跡つけて保健室まで行って、足跡拭いたこともな。って!?


「こいつが割ったの!? 紅い陶器を!?」


「!!!」


「消去法で、そうです。

3年の蘆屋秀麿はそもそも部屋に入らず、2年の坂東シンジは、紅い陶器が死因と思っていたので、彼ではない。つまり」


 壊したのは、1年の加藤四五六か、お前ってことになるな。


 でも、1年はよくわからんつってたが。あいつの可能性もあるんじゃ?


「腰が引けてたそうなので、ないと思いますよ。あと、それが嘘で実際に割ってた場合。死体に叩き付けて割ったぜ! とか、びっくりして割っちゃった!! って言いませんか? おしゃべり好きですし」


 あー、それはそうかも。ベラベラ喋ってたもんな。


 自分でしてたら、語らない方がおかしいか。


 それを考えると、血の足跡が加藤なら、それもいいそう。


 血の足跡ついて、大変でしたよーって。


 なら。


「あなたしかいないんですよ。紅い陶器で、死んでる番長を殴ったのは」


「……ああ、そうだ。部屋に入って、血の海で。その中で、寝てるように死んでるの見て。ムカついたんだ」


「あいつには、好き放題殴られたことあったし。恨みがあった。

だから、しね! しね! と思て、陶器で殴ったよ。まァ、死んでたんだけどな」


 で、痛みに手を見たら手が切れてて。血が結構噴き出したと。


「ふ。その通り。光り物扱う俺が、馬鹿みたいだったよ。今でも反省している。

そして、ヤバいと思った俺は、保健室に直行。先生が出張でいないの忘れてて、必死に消毒と包帯で手当てしたよ」


 なるほど。じゃあ、血の足跡は、『死体を殴った後に、美術準備室から保健室へ行った』足跡か。


「そうだ。自分で手当てした後、血の足跡に気付いてな。

このままじゃ疑われると思って、必死に掃除して、逃げた。

拭いたモップは、保健室の窓から見える植え込みの中に投げたよ。しかし」


「俺は殺して無い」


 なら。


「ええ。犯人は、1年・加藤四五六です」


「……それ、マジの話か? あいつが殺しって?

証拠は? あるんならいいけど、 違うなら。外部の犯行ってのも」


「証拠は、多分あります」


 え、あるの!?


「多分?」


 ええ。部屋の中が血だらけだった。あなたが足跡を残すくらい。それを考えれば、おのずと!


 おお、そうなのか! じゃあ、捕まえれそうっと思った!


 その時!!


「見つけたぞ! 石崎仙太郎! 逮捕するぅぅう!!!」


「「「え!?」」」


 そう、警察が! 無能刑事の西川が! 制服のポリ公を連れてやってきて! 


 ――手錠! ガチャン!!


 石崎仙太郎が捕まり!!


「!? な、なんで!? 俺は殺してない!!」


「シャラァァァップ!!! お前の指紋が、紅い陶器から出たんだよぉ! この殺人犯がァァあ!!! って、ああ!?」


「あん?」


「お前ぇぇえ!!! 六道ぉぉお!!! ついでに逮捕だァァあ!!!」


「え」


 ついでに、俺も逮捕しようと! してきたのでぇ! 


「阿保かボケ!!」


 ――閃光の右フック!! ドゴォ!!!


「!? ぐえ!!」


 フックで西川を殴り倒し! 


 喉に足を置いた!!


 っで!


「こ、この野郎!」


「うごくなァ!! こいつの首! 踏み殺すぞぉ!!」


「!!! っぐ!!」


 と言って! 足に体重乗せて、西川を呻かせたのだ!!


 たく! どうなってんだ!!


 とりあえず、リリアを逃がすのが優先! 


 なんとかしねぇと!!


 っと、脱出計画ねってると!!


「双方辞めろ! お前たち下がれ!!」


「土方パイセン!!」


 救世主・土方パイセン!


 警察を止めてくれた!


 フーーー!!!


「マジ感謝っす! 先輩!!」


「いいから、お前も足降ろせ」


 はーい。


 っと、西川を解放すると!!


「こ、この! ふざけ」


「西川。お前は黙ってろ!!」


「なんだとォ!?」


「警察も来て、いいタイミングです。推理ショーをしましょう!」


「「「「「……え!?」」」」」


 西川の発言を遮り!!


 推理ショーとなったのであった!!!

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