第10話 西校で情報収集。1年の参謀役に話を聞いてみた

「ここが西校だ」


「おお! デカい! 南校と同じくらい?」


「あー、正式には南校の方が小さいけど。南校は勝手に増築・改造してるからな。規模で言うと、同じくらいか?」


「改造!? 増築!? え!?」


 九龍城みたいなもんだよ。


 そう言いながら、俺達は西港に入る。


 で。


「おい」


「あ? って、極道番長!? ちゃ、チャース!!」


「「「「「『『『『『!? チャース!!』』』』』」」」」」


「おう」


「あ、あの。何の御用でしょうか?」


「ちょっと聞きたいことあってな。西校の参謀と、副番と、元番について聞かせてくれ」


「はい! で、では! ご説明させていただきます!!」


『『『『『「「「「「ます!」」」」」』』』』』』


 ん。


 手短にな。


『『『『『「「「「「はい!!」」」」」』』』』』


 そう適当に声かけたヤンキーの集団は、俺の聞きたいことを教えてくれた。


 まず、参謀についてだが。なんと、1年生だという!

 

 え、マジで?!


「マジっす! 1年の、かっつん事。加藤四五六かとうしごろってやつっすね」


「1年で頭角現した奴で、結構いろんな情報知ってんすよね。死んだ飛ケ谷のシャバイ事件の事も、こいつが全員に広めてましたし」


 へー。


 有能だな。おい。


「そうか。副番は? 2人いるだろ」


「っす! 副長は、2年のシンさん事、『坂東シンジ』と」


「かまいたちの仙太郎っすね。2年の『石崎仙太郎』っす」


 あー、聞いたことあるカモ。


 かまいたちの奴って、ヒカリもんの奴か。

 

 なんかいかぶっ飛ばした記憶あるかも。


「そうっす」


「光り物?」


 ナイフの事だよ。


 喧嘩で普通に使ってくる奴だ。


「え」


 まァ、学生のナイフなんてほとんど細いから、刃の向きに注意して叩けばすぐ折れるけどな。


 *六道弥勒個人の意見です。絶対に真似しないでください。


「なるほど。じゃあ、元番は? 3年か?」


「そうっすね。3年の、芦屋秀麿あしやひでまろ先輩っす! 皆からは、秀さんか、麻呂先輩って呼ばれてるっす。少林寺拳法? か、なんか古武術の達人らしいっすよ。瓦割り、10枚できるって」


 ふーん。そっか。


 俺もできるから、そんな珍しいことじゃないけど。実力者っぽいな。


「じゃあ、次だ。そいつら、美術準備室には、行ったんだよな? ん?」


「「「「「!!!」」」」」


 聞いてんだ。応えろよ。な?


「は、はいっす! 警察にも言ってないけど、言うッス!」


 よし。言え。


「その、俺ら、番長裁判が始まるときに校庭に行ってたんですけど」


「その時、3年の秀麿先輩が、美術準備室に行って。次に、2年の坂東シンジが行って」


「その次に、2年の石崎仙太郎が行ってたらしいです」


 らしい?


「俺らも直で見たわけじゃなくて、秀さんとシンが行ってきて『飛ケ谷と少し話そうとしたけど寝ててダメだった』って話をしてたのと」


「回り身て、仙太郎がいないから言ってたんじゃねって話で」


 あー、なるほど。


「その。後で分かったんですけど、ちなみに、仙太郎は保健室にいました」


 あ? 保健室に?


「ええ。手を切ったそうです」


 ほーん。光物の奴が、手をねー。


 ま、いいや。


 そんで、仙太郎以外が揃って、番長裁判だな?


「はい! 番長裁判始まって、番長解任が決定。んで、解任告げて来いってことで。1年の加藤が、行ってこいとなったんす」


 あ? 一年だけに行かせたのか?


「ええ。解散で。皆、教室に帰りました」


「っで、少ししたら。校庭に極道番長たちが来たので、まァ。はい」


 なるほどな。


 つまり、番長裁判前に、元番、副番、副番が、美術準備室に訪れ。


 番長裁判の後に、参謀が行ったと。


「その、すいません! これだけ聞かせてください!

他の生徒や、外部の人間は? 来ましたか?」


「いや、警察にも聞かれたッスけど、それはマジでないっす」


「生徒は、全員校庭に参加してて、絶対飛ケ谷を引きずり落とすって、息巻いてたんで」


「皆お互いを見てるから、いないとわかるッスよ。な?」


「「「「「うんうん」」」」」


「むしろ、それで秀さんと、シンジと、仙太郎がいないの分かったんすから」


 なるほど。部外者は?


「見てないっすね。でも、校門から学校は見えますし。中にセンコーもいたんで、入ったらバレるっすよ」


「そもそも、正門も裏門も閉めてたんで。誰も入れないと思いますが」


 ああ、そういや閉めてたな。


 簡単に開けれたから忘れてた。


「そうっすよ! 極道番長たち、どうやって入ってきたんすか? 」


 ん? 乗り越えて開けたに決まってんだろ。


 パルクールなめんな。


「「「「「あ、はい」」」」」


 ふむ。そんなところか。


「では、やっぱり」


「ああ、犯人は元番・芦屋秀麿あしやひでまろ、副番の2年・坂東シンジ、石崎仙太郎。そして、1年の加藤四五六の、だれかだな」


「では、1年の加藤から話を聞いてみますか」


 せやな。


 こうして!


「加藤だな? ちょっといいか」


「え、あ!? 極道番長!? はい! 大丈夫です!!」


 1年の加藤四五六! 本人を見つけて!


 話を聞いたのである!!! 


* * *


「聞きたいことがあってな。あー」


「まずはあなたの事を聞かせてください。ああ、私は弥勒さんの助手ですので。気にせず」


「あ、はい」


 話を聞きたいというと、空き教室を自由に使ってくれと西校の生徒たちに言われ、そこへ移動。


 適当な机に座って、改めて! 加藤四五六えの聴取を開始だ!!


「では、ううん! 1年の加藤四五六っす! これでも西校の参謀やってます!」


 そうか。


 えー、お前が番長裁判の結果を伝えに行ったと聞いてるが。


「ええ! そうです! 僕が入った時には、死んでましたね。番長裁判の結果を、僕が伝えるように言われて! 張り切っていったら、あれですもん! ぶったまげましたよ!!」


 それはそうだろうな。


「血の海ですからねー」


「そうなんですよー! 今でも思い出しますよー! 顔は寝てるようなのに、血がべったりで! 教室中が血の海! 鉄の匂いもすごくて! 腰が抜けました!! それで慌てて外出たら、カチコミされて。あ、いや。なんでもないっす!!」


 ふむふむ。


 リリア。なんかあるか?


 俺は正直、なんも思いつかないが。


「そうですね。では、あなたが殺しました?」


「!?」


 ブッ! 思いっ切り聞くなWWW おい!!!WWW


「い、いいえ! いいえぇ! とんでもない! 飛ケ谷さんは、尊敬すべき人ですから!! そんな!!」


 ……うん?


 その言い方だと……まあいいか。


「そうですか。では、死体を見た時、陶器は割れてましたか?」


「あー、割れてたような? ないような?」


 はっきりしないな。


 さっきまで、あれだけべらべら喋ってたくせに。


「情報屋として、何か情報は?」


「そーですねぇ。3年生の蘆屋秀麿先輩は、もともと番長だったんすよ! でも、選挙で負けて番長降りた! だから、飛ケ谷番長には、うらみがありますね!!」


 まァ、そうだろうな。


 選挙で決める事自体、俺はおかしいと思うが。


「しかも、情報によると1番最初に会いに行ったらしいんですよ!」


 それは聞いた。


「で、その次に行った坂東シンジ先輩曰く! 飛ケ谷は寝てた。死んでないって」


 ああ、そんなことを聞いたな。


 って、おい。何一つ新しい情報ないぞ。


 そこら辺の生徒に聞けば、一発で分かる情報じゃねぇか。


「いやいや! 肝心なのはココカラなんですよ!! 実は、坂東シンジ先輩って、元番の蘆屋秀麿に惚れこんで! 西校に来た人なんです」


 ほう?


「っで、選挙に負けてからも! シンジ先輩の方が秀麿先輩を復帰させたがってるんすわ!」


「もう一回選挙しようとか、タイマン勝負挑んで勝とうとか! 説得してるのも何度も見たって証言がありますしね!!」


「あれじゃ、『秀麿先輩が番長を殺してても。絶対にかばいます』ね!!」


 ! なるほど。そう言うことか。


「そういう関係なんですね。では、もう一人の2年生。石崎仙太郎さんのことは?」


「ああ、仙太郎先輩ですか! 彼は、手をめっちゃ怪我してました! 掌をざっくりと!

あれは、ごく最近の傷です! おそらく、番長が死んだ日に切ってますよ!」


 ふーん。


「あの日は保険の先生がいなくて。自分で血止めしてたらしいですね。2年の友人に愚痴ってたって聞きましたから」


 マジで手を切ったのか。


 光り物扱う奴が、斬るか? 自分の手を?


 うーん???


「ありがとうございます! 凄い情報量ですね!」


「いえいえ! それほどでも!」


「でも一人足りないわ」


「え?」


「あなた」


「ああ! 僕は西校が誇る情報屋! なんでも詳しく調べて伝える! ジャーナリストって奴ですよ! 当然犯人じゃない! 第一! 僕じゃ、番長に勝てません! 喧嘩強い人だったから!!」


 これは嘘ついてるぞ。


 飛ケ谷はめっちゃ弱い。


「し! ううん! どうもありがとうございました。では」


「ええ! 解決頑張ってください!! 見事解決したら、僕が情報を広めますよ!!」


 そう見送られ、俺達は空き教室を出た。


 どうだった?


「情報を具体的に言う人。彼の癖でしょう。

だから、死体発見の匂い、血、顔、部屋の様子に、自分の様子。詳しく言った」


 なるほど。


 ジャーナリストを名乗るだけあるらしい。


「ただ、陶器については、はっきりと言わなかったのが気になりますね。

顔や匂いまで感じ取っていたのに。部屋の血を見れば、『破片も見えたはず』なのに」


 そうだな。


 そんでもって、陶器の質問と同じように。詳しく言わなかった質問がある。


「ええ」


「「あなたが殺したか」」


 尊敬すべき人だからころさない。すべき人。しているわけじゃあない。


 あれは、野心あるタイプだ。


「なるほど。つまり、かなり怪しいと。

詳しく言わなかった陶器と殺し。これが気になりますね」


 ああ。


 まァ、単純に知らなかったからかもしれんが。


「うん?」


 ジャーナリストなら、知らないことを、うかつに言えんだろ。


「……なるほど。的を得ているかもしれない。


じゃ、次いきましょう」


 おう。2年だな?


「いえ、3年生です」


 あれ? まァ良いけど。


 という訳で!


「どうも。極道番長。で、そちらは?」


「助手です。事件を調べてまして」


「ああ。なるほど……?」


「っで、秀麿さん。飛ケ谷が死んだときの話。聞いていいかな」


「ええ。どうぞ。知ってることは、お話しますよ」


 3年の教室まで行って、蘆屋秀麿に!


 話を聞きに行ったのであった!!

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