第9話 コンビニの先輩とメガネ君

「らっしゃーせーって、おお! 極道じゃん! おひさー!」


 さて、件のコンビニにやってきたが、お! レジ先輩じゃーん!


 何かわかるかな?


「あ、久しぶりっす! すんません。昨日のことでちょっと聞きたいことあるんすけど」


「うん? 昨日?」


「西校の番長が死ぬ前、ここにきてるかもしんないんっすよ」


「あー、あれか。新聞に乗ってたやつ。いやー、でも、どうだろ。

遅番の奴ならわかるかもしれんけど、俺さっき店に来たからさー」


 あー。そっすかー。


 そうなると難しいな。


「遅番の奴に聞こうか?」


「いや、いっす。ありがとうございます。お礼に、菓子と飲み物買いますわ」


「おう! ありがとう! じゃんじゃん買ってけ!」


 当たり前っすよ! このコーナー全部買いますんで!!


「ヒューーー!!! さすが番長! 太っ腹ァァあ!!!」


「え、あの。そこまでお金だして大丈夫なんですか?」


 ダイジョブダイジョブ。


 南校の番長たるもの。常に数十万は持っとくべしって教え守ってるから俺。


 経済的にはよゆーよ。よゆー。


 リリアも一緒に食おうぜ!!


「え、ありがとうございます! やったー! って、そんなルールあるんですか!?」


「応よ! 番長たるもの、ダチにおごって! おごられてだからな! それぐらい持ってないとアカンわ! ってか、誰? この娘。まさか、これ! これか!!」


 小指立てんな。せんぱい。

 

 うぜぇ。


「探偵で、俺のダチです! 俺の容疑の解明して、サツにぎゃふんといわしてくれる! めっちゃ頼れる可愛い奴です!」


「か、かわ!?/// ううん! 五十嵐リリアです。探偵です。どうも」


「なるほど。こりゃかわいい」


 でしょ?


「ムー! 可愛いってゆうな!!/// モー!!!」


「「っはっはっは!!!」」


 っと、にこやかに談笑しながら!


 お菓子コーナーを買いあさっていると!!


「お! らっしゃーせー! って、おや?」


「え、めっちゃお菓子かってる?! なにこれ、ヨーチューブの撮影?」


「うん?」


 コンビニ入ってきた。黒い学生服の、メガネ君が驚いていた。


 あの制服って。


「東校か」


「ですね。南まで来るんだ」


 あー、塾帰りじゃね?


 ストリートの近くに、あった気がする。


 ここら辺、飯屋や弁当屋も多いから、そういうの目当ての企業も多いんだよ。


「ああ、塾ですか。うん? でも、平日の朝ですよ? 普通に学校じゃ」


 せやな。


 それ言うならお前もだし。さぼりじゃね?


「弥勒さんもですよー。でも、何か気になる……」


 って、しゃべってたら。


「! あ! 思い出した!」


「あん?」


 なんか先輩が思い出したらしい。


「君! 数日前に西校の番長に絡まれてたろ!」


「!!」


 おや。そうなのか。


 これは昨日も、あってる可能性あるか?


 よし。


「なあ、あんた」


「え!? あ、はい!?」


「ちょっと聞きたいんだが。昨日の夜。ここで、西校の番長に……」


 会わなかったかと、言ったところで!!


「!? す、すいませんでした! 僕が! 僕が!!


僕が殺しました!!」


「「「え」」」


 なんか、めっちゃ爆弾発言が出たのであった。


「落ち着いた?」


「は、はい。すみません」


 よかった。落ち着いたな。


 あの爆弾発言の後。先輩が。


『落ち着けって。あれだったら、店の奥で話すか? 店長権限で許す!!』


 と、言って、コンビニの奥に案内してくれた。


 そこで俺が買った飲み物とか、おかしくって落ち着いたらしい。


 尚、一番食ったのはリリアの模様。


 パクパク食ってるのが可愛かった。


 後、先輩店長だったんすね。


 バイトと思ってすんませんした! めっちゃ助かります!!


 んで。


「昨日の事。話してくれるか?」


 改めて聞いてみた。


「は、はい! えっと、あれは塾の帰りでした。コンビニ寄ろうとしたら。裏路地? っぽい場所から。

ボロボロの西校番長が出てきて」


「何言ってるかよくわからずに、絡んできて。嫌だったので。こう、強めに殴ったら……」


 倒れて動かなくなったと。


「はい」


 ふむ。


「で、怖くなって逃げたら、今朝の新聞で死んだって知って。誰にも言えなくて」


 そうかー。


 でも、お前は殺して無くね?


「そうですね。飛ケ谷は、西校の美術準備室で。白い陶器で、頭割られて死んでるので」


「え、そうなんですか?」


 そうだぞ。


 ちな、俺が第一発見者。


「え!?」


 だァらお前は白! 無罪!!


「いや、暴行……いえ、正当防衛ですね。この場合。なので、大丈夫かと」


「……!!! よかった! ああ! よかった!!」


 そうだな。


 クソに絡まれて、怖かったよな。よしよし。


 っで、そのあと番長がどこに行ったかは?


「知りません。見てないです。怖くて逃げたので」


 ふむ。まァ、しゃーないか。


「その時の時間は?」


「えっと、夜遅くでした」


 なるほど。


 じゃあ、深夜1時ごろと仮定して。


 自転車がないボロボロの飛ケ谷が、夜で一人。


 3時間歩いたら、学校に着きそうだな。


「そうですね。あってると思います。何度も負けてるんで、歩くのも遅かったでしょうし」

 

 せやな。


「しかし、そうなると。少し疑問が。

なぜ、飛ケ谷は、学校に? ボロボロで休みたいなら、家ではダメなんですか?」


 いや、家は帰らない。


 ヤンキーの中には、家族と良好な奴もいるが、関係悪い奴もいる。


 あと、あまりにも夜遅いと、帰ったら家族の迷惑になるとかな。


「ああ。なるほど。それで」


 学校で寝たり、自分で治療する。


「なるほど。では、西校番長は、『コンビニでやられてから西校に行って、美術準備室で寝た』可能性が高い」


 そうだな。


 俺も同じ立場なら、そうすると思……。


 いや、やっぱ分からんわ。


 そもそも、喧嘩負けたことないから。俺。


「そうですか。しかしそうなると、今までの捜査は無駄でしたね。

学校に来るまでに、何者かとトラブルがあって。怨恨とか、復讐とか。そういう関係でー……とも考えてたんですが」


 トラブルはあったが、飛ケ谷が負けて終わってるからな。


 復讐も、クソもねぇわ。


「そうですねー。ごめんなさい。弥勒さん。無駄足でした」


 いや、そんなことはない。


 確かな情報はあった。


「「え?」」


 いい方は悪いが、そこのメガネ君。君でも、倒せるほど。飛ケ谷はボロボロだったわけだ。


「め、メガネ君……ま、まァ、そうですね。

格闘技経験0の僕のパンチでも、ワンパンでしたよ」


 うむ。そこまでボロボロな状態の飛ケ谷なら、だれでも殺せる!


「「!! あ!!」」


 つまり、西校の誰でも! 殺意を持って奴を襲えば!


 抵抗されることなく、殺せた可能性が高いってことだ。


「な、なるほど!!」


「確かに!!」


 そして、もう一つ。


「!? まだ情報が?」


 ああ。あの金髪チビが言ってたろ。


 番長に、愛想を尽かして去ったと。


「え、ええ」


 つまり、俺にやられたことを知っている奴らが去っている訳だ。


 ならば、当然! 彼らは登校する!


 そう!


「番長裁判を、開催するために!!」


「「ば、番長裁判?!」」


 番長裁判! もしくは、番長審議、会議、いろいろ言われる奴だが。結局は一つ!


 番長にふさわしくない奴を、どうやって番長から降ろすかの相談だ。


 参加者は、番長以外の全ヤンキーが基本!


 つまり、飛ケ谷以外の、全校生徒が! 屋上……いや、人数を考えれば! 校庭で行われる番長裁判に参加したことだろう!!


「へー! そんなのあるんだ!」


「え、じゃあその裁判の結果!!」


 流石に、殺しちまえ! とはならないと思うが。


 負け方が負け方で、激シャバだったからなァ。


 否定できん。


「うわァ……ヤンキーの世界、こっわ! 東校で良かった」


「もしくは、犯人が裁判を利用して。飛ケ谷を全員で殺す。

天誅へもっていった可能性もありますね」


 ああ。それも当然ある。

 

 だが、裁判の内容は置いといて。


 俺が気になるのは、役職だ。


「「役職?」」


 ああ。番長に引導を渡す役職の人間が、裁判の結果を伝えに行ったはずだ。


 それは、裏番や、副番、元番、参謀とかの役割だが。西校に、裏はいなかったはず。


 だから、副番の2人と、元番の1人。あと、参謀の情報通の1人。


 その4人が容疑者だ。


「へー!!! 番長の世界ってそうなってるんですね」


「想像できない世界。異世界の話みたい(困惑)」


 ああ、番長を選挙で選ぶっつー西校でも、この序列は守ってた。

 

 抗争の時にもいたっぽいしな。


 知らずにぶっ飛ばしたけど。


 だから、話し合いの決まりを伝えるメッセンジャー役も、それらの誰かが行ったはず。


 番長やめろって言いに行って、喧嘩になる可能性もあるしな。


 選挙でわざわざ選ばんだろ。


「「なるほどー」」


 そして、番長は弱っていた。


 だから、副番の2人と、元番の1人。


 あと、参謀の情報通の1人に!


 殺害ができるチャンスも、動機もあった!!


 こいつらを調べたら、真相は分かるはずだ!!


「ええ! 調べましょう!!」


「え、そんな簡単に調べられるんですか!? 警察にも言ってないのに」


 ああ。俺が抗争で勝ってるからな。


 勝利した番長権限で、全員から聞き出してやるぜ!!


「で、できるんだ(驚愕)」


「すごいです! 早速行きましょう!!」


 ああ、行こうぜ!!


 そうして!


「着いたぜ! ここが西校だ!」


「おおお!!!」


 俺たちは、西校に乗り込んだのさ!!

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