獣の烙印 棄てられた、おとぎばなしの復讐劇
模倣未満
罪の末路
序章 瞳に映るもの
おかあさんが教えてくれた、おとぎばなしを思い出す。
人を襲う恐ろしい“怪物”と、それに立ち向かう勇敢な“騎士”の話。
いろいろなお話があったけれど、結末は大抵同じ。
“騎士”の活躍で、“怪物”は討ち倒されて、人々は平和に暮らせるようになりました。
捕われていた姫も救い出されました。騎士と姫は結ばれることになりました。
めでたしめでたし。そういう筋書きの、ありふれた幻想。
だから、いま幼子の瞳に映るのは、きっとおとぎばなしとして語られるはずのもの。
王様に選ばれた、世に
けれど、かつての故郷の滅びには、ついぞ現れなかったもの。
ため息が漏れるほど、
目を惹きつけて止まない輝きでありながら、同時に
白刃は、あらゆるを分かつ概念の具現。触れるもの全てに断層を生む。
歴史も、物性も、在り方も、すべて無価値と破断した。
――ならば、いまその天災地変たる絶対に対峙している存在はなんなのか?
刻む
おとぎばなしに語られた、“騎士”に相対するものは、“怪物”のはずだ。
だというのに、それは、どう見ても
あの輝ける“騎士”の力は、もはや人という規格から外れていた。同じ形をしただけの、まったく異なる生き物でしかない。
この先、幼子は、あれに辿り着くことができるだろうか?
きっと、とてもとても難しい。まるで、空の星を目指すどころか、その手に掴もうとする無茶無謀。聞けば誰もが、笑うだろう。
けれど、その
人が辿り着ける術のみをもって、絶対に挑んでいた。
勇壮だなんて、とても言えない。美麗さなんて、もっての他。汚泥でのたうつ無価値な
憎悪と
対峙する“騎士”にとり、さぞかし、惨めで、不様で、醜悪だったろう。
けれど、――いま瞳に映る
幼子もまた、
だから、言葉を失って。ただ、この戦いを見ていた。
見続けていたのだ。
▼▲▼
これは、きっと少し
物語は、ひとまず救われない罪の末路から。
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