第10話 デート
来栖瑠璃とのデートの日がやってきた。
俺は朝早くから準備をして、約束の時間に集合場所についた。
もちろん30分はやくついた。
約束は18時からだったが、17時半からそこにいた。
10分前くらいになって、瑠璃が向こうからやってきた。
瑠璃は俺に手を振る。
瑠璃はいつにもまして美人だった。
紺色の、ぴちっとしたワンピースを着ていてセクシーだ。
「ユランさん、待ちましたか?」
「いや、俺も今来たところだ」
瑠璃は俺の姿を上から下までずらっと見渡した。
目線が、俺の髪の毛にいく。
「髪、切ったんですね……。似合ってます」
「ありがとう」
さっそく作戦成功だ。
俺はあらかじめ、万能鑑定で瑠璃の好みがショートカットの男性であることを知っているからな。
びちっとかっこよく、この日のためにショートカットでそろえてきた甲斐があった。
そして、こんどは俺のスーツを眺める瑠璃。
このスーツは特注品で、100万以上した高級品だ。
一目見ただけで、そんじょそこらのスーツとは違うとわかるだろう。
「そのスーツも、かっこいいです。似合ってます。私とのデートのために、おしゃれしてきてくれたんですね。うれしい」
「ああ、瑠璃もそのワンピース、似合っているぞ」
「あ、ありがとうございます……」
このスーツも、作戦通りだ。
瑠璃はスーツ姿の男性に萌えるからな。
俺と瑠璃が並んで歩くと、俺のほうがかなり背が高かった。
これも厚底ブーツのおかげだな。
今のところ、作戦通りだ。
俺は瑠璃をエスコートして、フランス料理店へ行く。
高級なフランス料理店だが、予約してあったのでスムーズだ。
「高そうなお店で……緊張しますね……。私、こういうところ初めてです……」
「そうなのか……。俺もまあ、あまりこないかな」
「私、フランス料理って好きなんですよね」
「それはよかった」
はい、知ってました。
瑠璃がフランス料理好きなことも調査済みだ。
いやあしかし、この万能鑑定はすごく便利だな。
デートでも、あらかじめ情報を得ていることでスムーズに立ち回れる。
しばらくして料理と飲み物が運ばれてきた。
俺たちは酒を飲み、料理を食べ、会話を楽しんだ。
「あらためて、この前は助けていただいてありがとうございました。それに、デートOKしてくれて、うれしいです。ありがとうございました」
「いやいや、こちらこそだよ。俺も瑠璃とデートできてうれしい。助けたのはたまたまだから、本当に気にするな……」
「そういえば、ユランさんって普段はなにをされているんですか……?」
「俺か? 俺は普段はダンジョン配信者……かな……」
コンビニのバイトはもうやめたし、俺の今の職業はダンジョン配信者ということになるだろうか。
「奇遇です! 私も、実はダンジョン配信やってて……」
はい、これも万能鑑定で知っている情報です。
「知ってる。るりりんだろ。有名人だ」
彼女はチャンネル登録者150万人超えの、超人気ダンチューバーだ。
彼女のステータスを見てから気づいたことだが、俺も彼女のチャンネルを何度か見たことがあった。
よく見れば、万能鑑定がなくても気づいていたかもしれないな。
まあ、彼女ほどの美しさだ、一般人なわけないよな。
誰がどう見ても、モデルか芸能人だ。
「あ……気づいていたんですね……」
「当然だ。それだけ美人だからな。すぐに気づく」
「わ、私が美人ですか……? あ、ありがとうございます……へへ……///」
瑠璃は照れたそぶりを見せる。
どうやらあまり美人だと言われなれていないのだろうか。
彼女ほどの人なら、言われなれていそうなものだけどな。
そういえば、ステータスにも男性経験がないと書いてあったな。
あまりこれまで男性とかかわってきていないからか。
まあ、瑠璃は同性からみても美人だけどな。
とにかく、瑠璃はあまり男性慣れしていないから、褒められ慣れていないのか。
これは、このちょうしで押せば落とせそうだぞ。
ステータスにも、押しに弱いと書いてあったしな。
飯を食べ終わって、瑠璃はトイレに行く。
そのあいだに、俺はスマートに会計を済ませておく。
戻ってきた瑠璃は、驚いていた。
「あ……すみません……。私が支払うつもりだったのに……。あくまでこれは私が誘った、私からのお礼なんですから、ぜひ私に払わせてください」
と、瑠璃は二人分の料金を俺に手渡してくる。
しかし、俺はそれを受け取らない。
「いや、ここは俺に払わせてくれよ。男として、かっこつけさせてくれ。それに、お礼なら、君のような美しい女性と食事できただけで、十分すぎるお礼になってるさ」
「わ、わかりました……。じゃあ、次は私に払わせてくださいね?」
「ああ、そういうことにしよう」
瑠璃は俺を立てておごらせてくれた。
しかも、次は自分がおごるというふうにして、スムーズに、事を運んでいる。
いい女性だ。
たまに、かたくなにおごらせてくれない女性がいるが、あれは男としては困るんだよな……。
こっちははなから驕るつもりでいるのに、なんだか変な空気にもなるし。
押し問答は、一回でいい。
「さて、いこうか」
「はい……」
俺は店を出て、瑠璃と夜の街を歩く。
さりげなく、俺は車道がわを歩く。
そして、俺たちはルルブランという店の前を歩く。
ルルブランは、瑠璃の好きな雑貨屋だ。
通り過ぎるとき、瑠璃の目線がルルブランに吸い込まれる。
俺は立ち止まり、瑠璃に言う。
「入るか?」
「いいんですか……?」
「ああ、かわいらしいお店だ。俺も興味がある」
「じゃあ……」
俺たちはルルブランの中に入った。
そしてしばらく一緒に雑貨をみて、イチャイチャと会話を交わす。
これも万能鑑定のおかげだ。
あらかじめ、俺は瑠璃がこの店が好きだと知っていた。
だから、この店の前をわざと通ったのだ。
スムーズなデートができるのも、万能鑑定のおかげだ。
「これ……かわいい」
「じゃあ、これを俺からプレゼントするよ」
俺は瑠璃が見ていた雑貨をレジにもっていく。
「だ、だめですよ……! 今日は私からのお礼なのに……。そんなお金を払わせてばかりで……受け取れません」
「いや、いいんだ。これは俺から今日のお礼だ。ぜひ受け取ってくれよ」
「そんな……あ、じゃあこうしましょう。じゃあ代わりに、私もこれをユランさんにプレゼントします」
そう言うと、瑠璃はもう一個雑貨を手にとって、レジにもっていく。
なるほど、お互いにプレゼントしようということか。
いい折衷案だ。
瑠璃は非常によくできた、いい娘だな。
「わかった、そうしよう。お互いにプレゼントだ」
「大事にしますね!」
俺たちはお互いのプレゼントを買い、店をあとにした。
さて、このあとからが肝心だ。
「瑠璃、まだ時間はあるか?」
「え、ええ……」
瑠璃は顔を赤らめて言う。
なるほど、そっちも覚悟はできているということか。
俺は瑠璃の手をひいて、歩き出す。
「あ……」
瑠璃の手をにぎると、どうやら緊張しているようで震えていた。
まあ、男性経験がないというから、無理もない。
ここは、俺なりにやさしくエスコートしよう。
俺は夜景の見える定番スポットにやってきた。
「どうだ? 綺麗だろ」
「すごい……ロマンチックです……」
万能鑑定によって、瑠璃は夜景の見えるロマンチックなスポットに憧れていることがあらかじめわかっていたからな。
これも、あらかじめこのスポットをリサーチしておいたのだ。
いい感じの雰囲気になってきたので、俺は切りだす。
「瑠璃、君はこの夜景よりも綺麗だ」
「ユランさん……」
俺は瑠璃にやさしく口づけをした。
瑠璃は拒むことなく、俺の口づけを受け入れる。
そして、お互いに目を合わせる。
「瑠璃……いこうか」
「はい……」
そこからはあとは手を繋いで、ホテルにむかうだけだ。
我ながら、完璧なデートプランだ。
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