第3話 覚醒


「なんだ……? これは……! アーティファクト……!」


 それは、まだ未鑑定のアーティファクトだった。

 アーティファクトは、最初はただの黒い塊だ。

 そして鑑定するまでは、その中身はわからない。

 だから探索者たちは、アーティファクトを一度持ち帰り、鑑定屋に出すことで、始めてアーティファクトを使えるようになる。

 だけど、僕には鑑定スキルがある。

 鑑定スキルはなんの戦闘能力にもならないけれど……。

 だけど、鑑定スキルにも唯一、いいところがあった。


 それはその場でアーティファクトを鑑定できるということだ。

 まあ、普通は誰もそんなことしない。

 そんなことしなくても、普通に戦えるからね。

 だけど、僕は悠長なことはいってられない状況だ。

 つかえるものは、なんでもつかわなくちゃ。


 ええい、一か八か……!

 僕はそのばで、このアーティファクトを鑑定してみることにした。


【スキル進化の実】


「なんだこれは……!?」


 スキル進化の実って書いてあるけど……。

 くそ……今の状況を打開できる、強い武器とかを期待したんだけどな……。

 こんな実じゃ、なんにもならない。

 だいたい、スキル進化の実ってなんだよ。

 僕のスキルは鑑定スキルだけだ。

 鑑定スキルが進化したところで、ただの鑑定スキルだろ?

 鑑定スキルをいくら進化させても、戦闘には役立たない。


 だけど、ないよりはましか……。

 とりあえず、僕は一か八か、そのスキル進化の実を食べてみることにした。


「ええい、ままよ」


 こうしているうちにも、オーガが目の前に迫りくる。

 オーガは腕を振り上げ、僕を殺そうとしている。

 そのときだった。


【鑑定スキルが、万能鑑定に進化しました――】


 だけど、万能鑑定っていったってただの鑑定スキルなんだろう?

 そんなスキルきいたこともないけど、どうせ役に立たないだろう。

 でも、一か八か……!


「万能鑑定……!」


 僕は万能鑑定を使用してみた。

 すると――。


 オーガの情報が、頭の中に入り込んでくる。


「なんだこれ……!?」


 今までの鑑定スキルは、ただアーティファクトを鑑定するだけのものだった。

 だけど、それが万能鑑定となったことで、モンスターも鑑定できるようになったみたいだ。



============

 オーガ

 Lv45

 攻撃 1060

 防御 674

 魔力 839

 敏捷 321


 スキル 強撃

 弱点 足もと

============

 


 僕の脳内に、オーガの詳細なステータスが映し出される。

 その間わずか0コンマ1秒。

 オーガは目の前で、今しも僕を殺そうとしている。

 だが、僕の思考は光速で回転する。


 オーガのスキル、強撃か……。

 そのときだった。


【オーガから、スキル強撃を取得しました――】


 まさか……!?

 そのまさかだった。

 僕のステータスを確認すると、なんと僕はスキル強撃を覚えていたのだ。

 いくら努力しても、鑑定スキル以外は覚えなかったこの僕がだ。

 まさか、この万能鑑定、鑑定した相手のスキルを奪えるのか……?

 だったら、これはとんでもないスキルだぞ……!?


 万能鑑定、それは文字通り、万能の鑑定スキルだった。

 なんと、鑑定した相手のスキルまでうつしとる。

 でも、これなら……なんとかなるかも……!

 僕は迫りくるオーガに向かって、スキルを使ってみることにした。


「ええい……! 強撃――!!!!」


 僕がスキルを発動させると、オーガに向かって衝撃波がはなたれた。


「グオオオオ……!!!?」


 オーガの顔面に攻撃が直撃した。

 それでオーガは一瞬ひるみ、一歩後ろに下がる。


「さすがにこれだけじゃ倒せないか……」


 だけど、そうだ……!

 さっきオーガを鑑定したときに、弱点っていうのがあったな。

 そこを突けば、僕でもオーガを倒せるかもしれない……!

 オーガは足元が弱点らしいけど……。


 ふとオーガの足元を見る。

 すると、なんとそこには、弱点となる部分が、赤くハイライト表示されていた。


「あそこを狙えばいいんだな……!」


 万能鑑定、すごく便利なスキルだ。

 これなら、僕でもオーガを……!


「よし……! いまだ……! 強撃――!!!!」


 僕はスキルを、オーガの弱点に向かって炸裂させる!

 すると。


「グオオオオ!!!!」


 ――ギャイーン!

 ――ドシーン!


 みごと、オーガを倒すことができた。


「やった……!!!!」


 僕が……この僕が……!

 戦闘能力のなかった、雑魚だったこの僕が、オーガを倒すことができた……!

 めちゃくちゃうれしかった。

 しかも、強敵を倒したことで、僕はレベル15から20に一気にレベルアップだ!


「ふぅ……なんとかなったなぁ……一命をとりとめた……。これも、万能鑑定のおかげだ」


 このスキルさえあれば、なんとかこのダンジョンから抜け出せるかもしれない。

 よし、こうしちゃいれらない。

 すぐにこのダンジョンを抜け出そう。


 僕はダンジョンの出口を目指し始めた――。


 そして、僕をこんな目に合わせた奴らに復讐するんだ。

 みていろよ、五味、馬場、九頭……!

 あいつらのことは絶対に許さない。

 僕を陥れ、殺そうとしたやつらだ。

 あいつらになら、どんな復讐をしたって、生ぬるい。そうだろ……?

 僕を殺そうとしたってことは、僕の妹にも手を出したのと同じことだ。

 僕は妹のためなら、なんだってする。


 僕が死んだら、その庇護下である妹にも危害が加わるからね。

 僕は僕を殺そうとしたことよりも、妹の害になるような行いを彼らがしたことに腹を立てているんだ。

 僕が死んで、妹の学費が払えなくなったらどうしてくれるつもりだったんだ……?

 そうだよ。

 前から、あいつらはいけ好かないと思ってたんだ。

 どうせ、僕にしたことだけじゃない。

 あんなやつらは、常日頃から、クソみたいな行いをしているのだろう。


 だったら、あんなやつら、死んだほうがましだよね……?

 あんなクズたちは、社会にとっても悪だ。

 そんな奴らに、僕は鉄槌を下そうと思う。

 そうだよ、僕が裁く……!


 この僕が……!

 できる、この万能鑑定の力があれば、奴らに復讐を……!

 僕は悪が大嫌いなんだよ。

 社会にはびこる悪が……!

 弱いもの虐めするやつらが、反吐がでるほど嫌いだ。

 間違ったもの、正しくないもの、悪が大嫌いだ。

 悪を滅ぼすためなら、なんだってやるさ。


 そうだよ、せっかくこんな力が手に入ったんだ。

 いっそのこと、社会にはびこる悪を全部駆逐してやろうじゃないか。

 この僕が……!

 いや、この俺が――!!!!


 この俺、闇雲ユランがな……!!!!



=============

【あとがき】


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