第67話 一目瞭然

 ぐわぁぁぁぁ!!

 怖い、怖い!

 地下十階から地下十一階へは、滑り台方式のシュートを下っていくのだが。

 これがすごい急な角度の滑り台で、なんだこれ、時速何キロでてるんだ?

 俺はそこそこ丈夫なズボンをはいているから大丈夫だが……。

 これ、アニエスさんみたいなふんどしスタイルだとお尻がすりおろされちゃうぞ。

 うわぁぁ、しっかしなんだこれまじでジェットコースタ―かよ!

 俺は地下十一階になんとか到着すると、カメラのスイッチをいれ、


「おい、ケツの下に耐久性エンチャントした風呂敷しいてこいよ、じゃないと大根おろしになるぞ!」


 と叫んだ。

 配信を通じてタブレットで多分俺の声は紗哩シャーリーたちにも届いているはずだ。

 そのとおり、俺につづいてみんなが風呂敷をソリがわりにして降りてくる。

 石化したままのアニエスさんも、風呂敷につつまれて滑り降りてきた。

 

 俺、紗哩シャーリー、みっしー、ローラ。それに石化したままのアニエスさん。

 俺たち五人は、SSS級ダンジョンである亀貝ダンジョンの地下十一階に到達したのだ。

 ラスボスであるダイヤモンドドラゴンは地下十五階にいるという。

 少しずつ、近づいてきている。


 あたりを見回す。

 つくりとしては、一目で人工物だとわかる床に壁。

 壁の中には一定間隔ごとにうっすら光る石が埋め込まれている。

 天井は高く、十メートル近くあるんじゃないか? そこにもやはり光る石が埋め込まれている。

 通路の広さは七、八メートルくらい。

 地下九階は草原だったし、地下十階は自然の洞窟みたいなつくりだった。

 それに比べると、ごく一般的な迷宮のつくりをしている。

 しかしまさか人間がつくったわけでもあるまいに、これどうやってつくりあげたんだろうな?

 魔法かなにかなんだろうか?

 ダンジョンについてはまだ詳しくその成り立ちとかがわかっていない。

 全世界の研究者たちがその真相を探っているところだ。

 俺たちのこの探索も、その一助になっているかもしれない。

 なにしろ、SSS級ダンジョンの深層階なんて、到達できる人間なんてほんとに数少ないからな。


 さて、俺たちは慎重に先を進んでいく。

 この先、どんなモンスターが襲ってくるかわからない。

 必ず襲ってくるはずだ。

 俺たちの中で一番戦闘力の低いみっしーを中心にして、隊列を組んで歩いていく。

 

 探索をはじめて、一時間がたった。

 いまだに一匹のモンスターにも逢っていない。

 しかし、ほんと広いなここのダンジョンは。

 端から端までで十キロはあるんじゃないか?

 それが迷宮になっているんだから、すべて踏破するのに最低でも数日はかかりそうだ。


「いったん、小休止にしよう」


 俺たちは地面に座り込む。

 もちろん、周りへの警戒は怠らない。

 水分補給し、焼いたコカトリスの肉を口の中に放り込む。

 うーん、うまい。

 やはり鶏肉は天然ものにかぎる。

 ブロイラーとはうまみが違うな。


「ふう、ずっと歩いていたから暑いなー……」


 みっしーが手の平をうちわみたいにぱたぱたして、シャツの襟口もぱたぱたさせる。

 ……お。

 ちょっと、胸元が見える……。

 みっしーって、おっきいよな……。

 まだ十六歳とかいってたか……?

 それにしてはもう、ほんと、スイカみたいにまん丸なのがふたつ……。

 俺の視線に気が付いたのか、ちらりと俺を見てからすぐに目を逸らして向こうの方を向くみっしー。


「ふー、ほんとにあっついなあー……」


 今度はシャツの裾をちょっとひきあげる。

 綺麗なおへそが見えた。

 腰、ほっせえなあ……。

 肌も綺麗だしなー。

 なんだろ、全然目を離せないぞ?

 ローラはそんなようすを見て、俺の方をすこし笑みを含んだ表情で見て、


「あー、ほんとに暑いね……私も暑くなってきたよ……」


 身に着けていた肘あてと膝あてを外すと、さらに着ていたスポーツウェアの上着も脱ぎ捨てる。

 中はTシャツ一枚だ。


「あー! 脱ぐと、涼しいねえ……。さすがに武闘家としては、こんな肌を晒すのは戦闘中にはしたくないからさー。今のうちに涼んでおくよー」


 ローラのしなやかな筋肉をつやつやの褐色の肌が包み込んでいる。

 すごいプロポーションだ、まるで芸術作品じゃんか。

 胸はみっしーほどじゃないけどけっこう大きいよなー。


「いやー、汗かいちゃったよ。ね、モトキ、私、汗臭くない?」:


 ローラが俺の目の前に腕を差し出す。


「嗅いでみて?」


 えーと、なんだこれ、うん、でも、


「別に、いい匂いだぞ?」


 そこにみっしーが、


「あ、私も!」


 と腕を俺の鼻先に差し出す。

 くんくんくん。


「うん、みっしーもいい匂いだ」

「そ? よかった!」


 そういって二人は俺の横にぴったりと身体をくっつけて座った。

 ぴったりと身体をくっつけて座った。

 ぴったりと身体を! くっつけて!

 っていうか!

 おっぱいを!

 おしつけて!


 右の腕にはみっしーのすんげーでっかいおっぱい、

 左のうでにはローラのそこそこでっかいおっぱい、

 やわらかくてあったかくて頭の中がぽわーんとする。


「あのさー、お兄ちゃん」

「な、なんだ」


 やばい、紗哩シャーリー、これは怒るかな、お兄ちゃんのエッチとかいって俺を叩いてくるかな。


「日本の法律ってさー」

「な、なんだ……」

「兄妹だと結婚できないんだよねー」


 急に何を言い出してるんだ、この妹?


「でもあたし、一度調べたことあるけど、……兄妹でアレしちゃ駄目、ってどこにも書いてなかった」


 ……?

 な、なんの話だ……?

 しちゃ駄目?

 なにをするのが?


「ね、おにー、ちゃん」


 紗哩シャーリーがそういって、俺の背中に胸を押し付けるようにして抱き着いてきて、耳もとで、


「お兄ちゃん……お兄ちゃん……」


 とささやく。

 聞きなれた妹の声、でもなぜかそれは脳天に響いてきて……。


「お兄ちゃん……」


 紗哩シャーリーは、そういって俺の耳に、パクリと甘噛みしてきて、そのままペロペロと舌の先で舐めてきた。


 あ、やばい。


 脳細胞がスパークする。

 気持ちいい。

 耳に感じる粘膜の感触、腕に感じる二人のおっぱいの感触、背中にもおっぱい。

 三人の女の子の体温を感じて。

 脳みそがふわふわし始めた。

 これ、俺、もう、なんでもいいや、やっちゃうぞ。

 やるぞ。

 やる。


〈一目瞭然でこれ攻撃受けているぞ〉

〈インキュバス/サキュバスだなこれ〉

〈淫魔の精神攻撃か〉

〈ふつーにやべーぞ、誰も気が付いてなさそう〉

〈耳―! その耳はあたしの! 耳―! ばかばかばか! 耳!〉

〈攻撃受けている本人たちはそれに気づきもしないままに飲まず食わずでお互いに死ぬまでやり続ける〉

〈耳! ファースト耳ペロペロが! あたしのなのに!〉

〈俺たちのコメントにももう目がいかないみたい〉

〈耳さん落ち着け〉

〈目を覚ませー!!!!〉

〈死ぬぞまじで〉

〈コメント見ろー!〉

〈おーい!〉

〈ぐちゃぐちゃに骨が折れても内臓がつぶれても死ぬまでお互いに絡み合うんだぞ・・・なかなか凄惨な死に方するぞこれ〉

〈その前にyootubeの規約でAIに反応されたらBANされる〉

〈あ、それ一番やばい、BANされたらこのパーティ終わりだし〉

〈わりと今までで最高のピンチ〉

【¥50000】〈耳―! ペロペロしたいー! 混ぜろー! お金払うから! prprprprprpr〉

〈カメラの向き的にまだセーフだけどやばいぞBANされたら死〉


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