第31話 ヴァンパイアロード


「こないだのヴァンパイアを卒論にした人、今日いるかな?」


 俺が尋ねる。

 もともとA級探索者にすぎなかった俺たちは、SSS級のモンスターのことなんてそんなに真面目に調べたことないから知らないことだらけだ。

 こういうのは知っている人に聞くに限る。


【¥100】〈卒論ヴァンパイアは私です。いますよー〉


「お、助かる。この、ヴァンパイアロードってのはいったいなんだ? ヴァンパイアのつよい奴、くらいの認識しかないんだが……」


【¥100】〈ヴァンパイアロードはその名の通り、ヴァンパイアの中の王といえる存在です。このあいだ基樹もときさんが倒したネームドのSS級ヴァンパイア、アリシア・ナルディはヴァンパイアの中でも個体識別されている強力なヴァンパイアでしたが、ヴァンパイアロードとなると、そのアリシアよりもさらに一段強力な能力をもっているものと思われます。

 基本的な能力はすべてにおいてあのアリシアよりも上でしょう。〉


「まじか、あのアリシアよりも上か……」


【¥100】〈ヴァンパイアロードともなると、アンデッドモンスターの王ともいえます。つまり、あらゆるアンデッドモンスタ―を使役することができるのです。


 SSS級探索者であるアニエスさんのパーティを全滅させたってことは、よほどの戦力をそろえて組織的な攻撃を加えた可能性があります。


 なにしろ、知能も人間を上回るといわれ、そのカリスマ性にほとんどのモンスターがひざまずく、と言われているのです。


 はっきりいって、モンスターとしての格はそこのダンジョンのラスボス、ダイヤモンドドラゴンと同じかそれ以上。


 人類の敵としての格と実力を兼ね備えた、まさに『魔王級』のモンスター、それがヴァンパイアロードです。

 そんなヴァンパイアロードがなぜ亀貝ダンジョンにいるのか……? もとからいたのか、それともなにかの理由であとから来たのか? 

 それはわかりません〉


「ヴァンパイアロードって世界に何人もいるもんなのか?」


【¥100】〈現在存在が確認されているのは四人です。

 ミロシュ・ツェペシュ

 イジー・ラウドヴィク

 ザラ・チモフェーイェヴィチ

 そして、

 アンジェラ・ナルディ

 です。〉


「……アンジェラ……ナルディ……?」


【¥100】〈実際に血縁関係があるのかは不明ですが、アリシア・ナルディとは姉妹であると自称していました。ちなみにヴァンパイアは変身能力があるので外見が似ているかどうかで血縁関係を類推することはできないです〉


 実際に実の妹かどうかはともかくとして、妹と称していたヴァンパイアがやられてしまったのだ、妹のかたき討ちのためにこのダンジョンにきたってわけか……。


「つまり、これから私たちが戦うのって、魔王クラスのモンスターってこと……?」


 紗哩シャーリーが唇を震わせてそういう。


「SSS級探索者のアニエスさんのパーティが負けた相手と……。でも、基樹さんなら、いや、私たちなら大丈夫だよ、勝てるよ!」


 さすが強メンタルのみっしーだ。ってか、みっしーは虫よりもヴァンパイアロードの方が怖くないぽいな。


「やれるだけ、やろう。心の準備をしとけ。もうしばらくしたらここにやつらがくるかもしれん。そうだ、ヴァンパイアロードの弱点って、なにかあるか?」


【¥100】〈普通のヴァンパイアと同じです。倒すには日光が一番よいでしょう。あとは心臓を破壊する方法もあります。銀の弾丸が使えればよいのですが。杭を使って心臓を打ち抜き、地面にはりつけにする方法もあります。ただ、ヴァンパイアロードは強い不死性があり、修復能力も極めて高いので、やはり日光が一番よいです。……ダンジョン内だと難しいですね。ニンニクでダメージ入ると思いますけど、倒せるほどではありません。流れる水は渡れませんが、渡れないだけです。十字架は効きません〉


「日光ならさ、前にアリシアにやったみたいに、みっしーの閃光の魔法をつかえばいいんじゃないかな?」


 紗哩シャーリーの提案に、俺は、


「悪くないとは思うけど、問題がある。俺自身も今、ヴァンパイアなんだ。しかも、アニエスさんもヴァンパイア化して、多分、こないだの紗哩シャーリーみたいに自我をうしなっている可能性もある。でも今のタイミングならまだ、アンジェラを倒せばアニエスさんも人間にもどれるかもしれない。つまり、俺と、アニエスさんを巻き込む形では閃光の魔法を使えない。俺もアニエスさんも滅んじゃうからな……。それは、もうほかにどうしようもなくなったときの、最後の最後の手段ってわけだ。せっかくヴァンパイアに有効な手立てをもっているのに、使えないなんてハンデだな」


 結局、物理で殴るしかないのか……?


「セット、gaagle Adsense! 残高オープン!」


[ゲンザイノシュウエキ:8,642,800エン]


 これだけの金額で、ラスボスクラスのモンスターとたたかわなきゃいけないのだ。



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