第27話 ちゃんとして!
「その前に、
「うん、いいよお兄ちゃん」
「ちょちょちょっと、ダメだよ、
俺は先日の戦闘で半ヴァンパイア化してしまった。
正直、身体能力だけでいえば向上して.いる実感があるので、探索には有利な面もあるけど、こうして一日に二回、直接人間の血を必要とするのは厄介だ。
あとほかのヴァンパイアと同じくニンニクも苦手らしいけど、幸いなことにダンジョンの中にはニンニクはないし、流れる川もない。ちなみに鏡を見る習慣はもとからない。ま、たまに
さて、
「だめだよ、
「いやでも
「私たちは今、チームでしょ?」
「それは、そうだけど」
「じゃあ、兄妹とか関係なく、チームで分かち合うのが普通でしょ! そんなに血を吸っちゃったら
みっしーはぐいっと自分のシャツの襟もとを開けると、
「はい、ほら! 今すぐ噛みつく! 噛め!」
といった。
その迫力に押されて、俺は、
「お、おう……」
といってみっしーの両肩に手をおき、その首筋にかみつこうとして――。
あ。
みっしーってさ、けっこう、胸がでっかいんだけどさ。
こういう体勢になると、こう、胸と胸が触れちゃうっていうかさ。
弾力のあるやさしい感触が俺に伝わってきた。
目の前には十六歳のすべすべの肌。
ピカピカに輝いている、毛穴のひとつもないぞ、十六歳とはこういうことか。
少し汗の匂いがして、それがみっしー自身の肌の香りと混じって、それを鼻腔の奥で感じると、なんかこう、脳みそがくらっとして心地よくふわっと意識がどこかへ持っていかれるような感触に襲われる。
ちょっとは緊張しているのか、みっしーの身体は細かく震えていた。
それを抑えるかのように俺は両手に力を入れて肩をがしっとつかむ。
「……んっ……」
みっしーが声をあげて体を硬くした。
「……噛むぞ……」
「ぅん……」
俺はまっしろでつやつやしているみっしーの首筋に、ガプリと牙を立てた。
「……んはっ……」
みっしーが思わず膝から崩れそうになるところを俺は力づくで抱き寄せ、さらに牙を奥深くへ。
そして。
ジュルルルルルルッルル!
みっしーの血液を飲み込んだ。
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
うまーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!
口の中に血が満ちる。
舌で味わう。
ゴクン、と飲み込む。
手の指の先から足の指の先までパワーがいきわたるのを感じた。
舌の味蕾から、神経を通って俺の脳内の原始的な部分へとこの喜びが伝わっていく。
脳みその中でパチンパチンとなにかがはじけるほどの快感。
脳内が快楽物質で満たされ、俺は無我夢中でみっしーを抱きしめる。
ゴクンゴクンゴクン。
喉を鳴らして血を飲む。
このうまさと多幸感はなんと表現したらいいのか。
俺の腕の中で身体を硬くしているみっしーの体温が、さらに俺の脳内の快楽物質の放出を促進させる。
もっと飲みたい、もっと……!
もっと!
もっと!
吸いつくして吸いつくして……!!
「お兄ちゃん、いい加減にして!」
ハッとして身体を離した。
「みっしーがひからびて死んじゃうよ! 吸いすぎ! 馬鹿お兄ちゃん! 欲望に忠実すぎない!? もー! 欲望はちゃんとコントロールしなさい! あとは妹で発散するとかしなさい!」
ぷんすか怒って俺の頭をポカポカ叩く
「い、いや悪い悪い、つい……。みっしー、大丈夫か?」
「あーうん、私も今、別の世界へいってたよ、あはは……。ヴァンパイアに血を吸われるのって、……こんな感じなんだねー。やばいわー。あははは。……私もヴァンパイアになっちゃいそう……」
実際のところは俺は半ヴァンパイアに過ぎないし、眷属を増やす意志もないからそうはならないけどな。
〈なんか今のみっしーの顔エロかったぞ〉
【¥500】〈たすかる〉
〈たすかる〉
〈たすかる〉
〈お兄ちゃんうらやましい〉
【¥100】〈エッロ〉
〈みっしーの血なら俺もほしい、お兄ちゃんがねたましい〉
〈俺もみっしーにかみつきたい! うらやましい!〉
〈俺はみっしーの耳にかみつきたい〉
〈血を吸った仲とかもうこれ夫婦以上じゃない?〉
〈エッッッッッッッッ〉
【¥5000】〈みっしーは俺のだからな! ちゃんと連れて帰らなかったら許さんから〉
〈妹で発散、とは?〉
〈みっしー気持ちよさそうだった、私もお兄ちゃんに吸われたい〉
〈むしろ私がみっしーになりたかった。ぎゅっとされて噛みつかれたい〉
〈シャリちゃんで発散とかやばすぎえろすぎ〉
〈待てお前ら、なんで男も女も発情してるんだ。……ふぅ……〉
〈あーみっしーの血を俺も吸いたいなーうらやましー〉
【¥10000】〈みっしーになりたかった。お兄ちゃんに乱暴に血を吸われたいよ〉
なんか最近のコメント欄、みっしーファンだけじゃなくて俺自身にも女性ファンがついているっぽいんだが……。
これはもしや、モテ期到来か?
あの有名なおふぱこなるものがついにこの俺にもできるチャンスが、
いてててててて!!!!
耳をひっぱられた。
「あのね、コメント欄のお馬鹿さんたち。よーくお聞きください。お兄ちゃんはあたしのものなので、今後一生女の人とはお付き合いさせませんから!」
〈よし、俺は男だからセーフ。お兄ちゃん、付き合ってください〉
〈俺も男。
【¥27000】〈えっと、俺も男なんだけど、俺はほりたい方だから、お兄ちゃんにお嫁さんなってもらっていいですか〉
「ほんとにお馬鹿さん! 男でも女でもみっしーでもダメぇ! お兄ちゃんはあたしのなの!」
そして
「一生お兄ちゃんのものになる人間は、あたしだけなの!」
おおそうか、
サイドテールの髪の毛を撫でてやると、
「えへへへ~~~」
と俺を見上げて笑った。
「あのーそこのご兄妹さん? あの、向こうからごはんがやってきましたけど」
心底あきれ返ったみっしーの声に振り向くと、なるほど、向こうから巨大な八本足のタコがこちらへと向かってきていた。
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