第21話 てえてえ
コメントが来た。
【¥100】〈卒論でつかった文献をちょっと調べてみました。レアケースだけど、前例がないわけじゃないみたいです。
ヴァンパイアになりたてのヴァンパイア、今回の場合はシャーリーちゃんのことですね、シャーリーちゃんは他人をヴァンパイアにする力がまだ弱い状態でした。
さらに別の人間の血を吸った直後にもとのヴァンパイアが倒されて人間に戻りました。その場合、シャーリーちゃんからの魔力の供給も失われるから、血を吸われた人間、つまり基樹さんが完全にヴァンパイアになることはない。
ただし、吸われた人間である基樹さんは後遺症として二週間ほどは不完全ながらもヴァンパイア化します。あの、最高に言いにくいですが、この時シャーリーちゃんをその、やっつけると(すみません)、
そのあいだは日光に弱く、生命の維持に人間の血液を必要となります。一日に二回ほど、それぞれ100CCほどの人間の生き血が必要になるそうです。
血を吸わないと命の危険があるほど衰弱するみたいです〉
「……サンキュー、めちゃくちゃ詳しくて助かったぜ。よくわかった」
やはりネットっていうのは、いろんなことに詳しい奴がいて助かる。
「ぐすっ、お兄ちゃん、ごめんね……あたしがお兄ちゃんを噛んじゃったから……ひっく、ひっく」
泣いている
「おまえのせいじゃないさ。お前はなにひとつ、悪くない。悪いのはあのヴァンパイアだからな。モンスターとの戦闘ではいろんなリスクがある。俺はお前を守れただけで、すごくうれしいぞ」
「うん、うん、お兄ちゃんごめん、お兄ちゃん大好き!」
俺に抱き着いてくる
「俺もお前のこと好きだぞ」
俺の胸に顔をうずめる
〈てえてえ〉
【¥1500】〈兄妹愛〉
〈尊死〉
〈俺、お兄ちゃんの妹になりたい。男だけど〉
〈私、お兄ちゃんの妹に生まれたかった〉
〈じゃあ俺はみっしーの子供に生まれる〉
とりあえず疲れた。
正直、疲れ切ってしまった。
「今日は休息をとろう。一応、順番に寝よう。まずはみっしーと
「でも、お兄ちゃんから休んで……」
「俺はあとでいいから、まずお前らから休んでくれ」
みっしーと
ないよりはましかと思って、風呂敷をかけてやった。
二人とも疲れ切っていたのだろう、横になったかと思うとすぐに寝息を立て始めた。
二人の寝顔を眺める。
ぷるぷるのほっぺたに俺の血がついている。
指の先でこすってやると、「うーん」と寝返りをうった。
みっしーもさすが日本随一の美少女配信者、寝ている表情も綺麗だ。
テレポーターの罠でSSS級ダンジョンの地下八階にたった一人で飛ばされて、左足をモンスターに食いちぎられ、その状態で一人でずっと救出を待って生き延び、右腕を刀で切り離された。
普通の人間の一生分の災難を受けたといっていい。
これでちゃんと正気を保っていられるのはとんでもないメンタル強者だなあ。
きちんと、守ってやらないと。
そういや、残高はあといくら残っているんだ?
「残高オープン」
[ゲンザイノシュウエキ 842,000円]
さっきのヴァンパイアとの戦闘で160万円くらい使ってしまったからな。
今日はもう深夜になるからこれ以上のスパチャはそうそうたくさん入らないし、明日は……火曜日か、平日だからこれも昼間のあいだはそんなにスパチャが入らないだろう。
明日の夕方までは動き回らない方がいいかもしれない。
……うん俺も眠い、というか死ぬほど疲れている。
肉体的な疲労はマネーインジェクションで多少は癒せてる気がするけど、精神的な疲労がめちゃくちゃたまっているぞ。
しかし、二週間のあいだ半ヴァンパイアか。
ってことは、このダンジョンを抜け出せるとしても、ダンジョン内にいる間はずっと半ヴァンパイアでいることになりそうだ。
……なんだか、血がほしいような気もする……。
みっしーの白くてなめらかな首元の皮膚を見てたら、よだれが出てきた。
めっちゃかみつきたい。
うまそー!!
その衝動を抑えながら、俺は眠り込んじゃわないよう、立ち上がって妹たちの寝顔を眺め続けた。
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