第8話

と言う訳で早速表通りに戻って高級ブランドのお店に……

って何処にあるんだろう?


「マスター。

こっちですよ」


ルリがすぐに案内を始めてくれた。


「ルリはここに詳しいの?」

「はい。

昔、しばらくここに住んでいた事があるので」

「そうなの?」

「はい。

丁度マスターに手籠めにされる前の依頼で滞在してました」

「いやいや。

手籠めになんかしてないよ」


当時はまだルリは子供だよ。

僕はロリコンじゃないから子供は犯さないんだよ。


「……」

「なんで黙るの?

そこで黙ると本当に僕が手籠めにしたみたいじゃん」

「でも、それまで私は誰にも見つからず完璧に暗殺を遂行してました。

それをマスターは私に気付くだけで無く、完膚なきまで制圧されました。

これはもう手籠めにされたと言っても過言では無いかと」

「いや、過言だね」


確かにあの時殺すつもりだったけど、犯す気は一切無かったからね。

しつこい様だけど、僕はロリコンじゃないからね。


「そうですか……

過言ですか……」


なんでちょっと残念そうなわけ?

絶対に手籠めにされて無い方がいいよね?


おや?

隠れないと。


僕はルリを路地裏に引き摺り込んで路地裏に隠れた。

そのすぐ後で建物からジュニア達3人が出て来た。


危ない危ない。

見つかったらめんどくさいからね。


「マスターはここでご所望ですか?」


ルリが何を勘違いしてか上着を脱ぎ始めた。


「違う違う。

勘違いだよ」

「上で無くて下でしたか?」

「違うって。

見つかったらややこしいのわかるでしょ?」

「はい。

でも、私は多分認識されませんよ」

「あっ。

そう言えば……」

「それに私は見られてもなんともありませんが」

「それもそうだね」

「それなのに私を路地裏に連れ込むって事は……」

「違ーう。

これはうっかりだから。

こらっ、スカートに手をかけない」


全く油断も隙もあったもんじゃないよ。


「これは失礼しました。

マスターは脱がす方がお好きなのですね」

「そうだね。

僕は犯すの専門だから無理矢理脱がす方が……って何言わすねん」

「では、どうぞ」


ルリは両手を真上にあげて目を瞑る。


「いやいや。

やらないからね」

「やらないのですか?」

「やらないって。

もしかしてだけど、ルリも僕の理性を破壊しようとしてる?」

「わかりますか?」

「わかるよ。

わかりたく無かったけどね。

本当に君達は何がしたいんだよ」

「マスターは言いました。

悪党は欲望に忠実だと。

ですので私はマスターに手籠めにされる事を望んでおります。

それはもう無茶苦茶に。

私はマスターの前だけはドMですので」


いや、胸を張って言う事じゃないでしょ。

なんのカミングアウトやねん。


「僕にそう言う特殊な性癖はありません」

「そうですか……

やっぱり初めてマスターにお会いした時にしっかり手籠めにされとくべきでした」

「あのさ。

残念そうにしてるけど、僕は今も昔もロリコンじゃないからね。

だからあの時犯すとか選択肢に無かったから」

「なるほど。

つまりスミレ様の言う通りマスターの理性を破壊するしか無いと言う事ですね。

わかりました。

頑張ります」


いや、何もわかってないよね?



一流の店には一流の品が並ぶ。

当然値段も一流である。


その中でも一際輝く瑠璃色の宝石が埋め込まれたネクタイピンをルリにプレゼントした。


お値段も一際輝いていたけど、ルリの今日一番の笑顔に比べれば安いもんだ。


お金なんて稼げばいいだけの話。

ギャンブルで。


店を出るとすっかり夕方になっていた。


「そう言えば、今回の仕事は何だったの?」

「はい。

鬼人の総裁オイリィの暗殺でございます」

「それはルリの得意分野だね」

「はい。

死体すら残すなという少し面倒な依頼でしたが、誰にも気付かれる事なく完璧に遂行して参りました」

「流石だね。

ルリに狙われたらもうお終いだね」

「はい。

もちろんです。

私が暗殺出来ないのはマスターのみです」


ルリは小さな胸を誇らしげに張った。


「ところでマスター」

「なに?」

「このままホテルにお戻りですか?」

「そうなんだよ〜

なんか夜に帰らないとルージュが暴れるって言ってるんだ」

「ルージュが暴れるとこんな国一溜まりも無いですね」

「そうなんだよね」

「でも、マスター。

こんな国どうでも良くありませんか?」

「まあね。

でもチャップ達が公演終わるまではあって貰わないと彼らが困るでしょ」

「流石ですマスター。

お優しいです」

「いや、チャップ達がいないとまた学園に通わないといけないからだよ」

「なるほど。

マスターは先の先まで見越しておられるのですね」

「別に先の先って程先の事でも無いけどね」

「となると、あの鬱陶しい連中はホテルまで付いて来てしまいますが……」


ルリが言ってるのは店を出てから尾行してくる連中の事。


「差し当たり高級店に一人で入って買い物して出て来た僕を外国のお坊ちゃんと勘違いしてるんだろうね。

「相変わらず治安の悪い国ですね」

「まあ、仕方ないよ。

国内でずっと紛争してたら貧富の差が広がる一方だからね。

そうなると必然的に治安も悪くなるよね。

きっと、人気が無くなった瞬間襲われるんだろうね」

「大丈夫ですマスター。

マスターを襲おうとした時点で万死に値します。

私が片付けておきます」

「そうだね。

よろしく頼むよ」


ルリは音も無くスッと消える。

そして僕を付けて来ていた連中も順番に消えていった。

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