第11話

僕の大好きな義姉さんを襲おうとした悪党共が僕と言う悪党に阻まれると言う悪夢のフィナーレ。

その後について少し話をするね。


翌朝、義姉さんは自分の家に帰って行ったのを見計らって再び僕のお家に忍び込んだ。


昨日まで義姉さんが寝てたベットにダイブしようとしたのに、またもや寝室に行く前にスミレに止められてしまった。


昨日の奴らはスミレが残らず葬ってくれたみたい。

もう義姉さんが狙われる事は無いそうだ。


スミレが言うのだから間違い無いだろう。


義姉さんを狙った奴がどんな面か拝むつもりだったけど、スミレに殺しちゃったって可愛く言われたからどうでも良くなった。


ただ今回はスミレには助けられたから、お礼も兼ねて途中だった僕のコレクションを案内する事にした。


やっぱりお宝とは素晴らしい。

スミレも終始上機嫌だった。


「ねえスミレ。

お願いがあるんだけど」


僕は一通り案内し終えてからスミレに話しかけた。


「いいわよ」

「まだ何も言って無いよ」

「私があなたのお願い聞かないわけ無いでしょ」

「じゃあ男湯を――」

「却下よ」


なんでやねん。

今お願い聞いてくれるって言ったやん。


「……ここにあるお宝を全部ナイトメア・ルミナスに移動して欲しいんだ」

「お安い御用よ」


スミレはすぐに取り掛かってくれて、すぐにすっからかんになった。


「先に戻っといてくれる。

好きなの持って行っていいから」

「いいけど、あなたは?」

「この家の処理をしてからすぐに戻るよ」


スミレと別れてから僕はすぐに地下室を埋めて元通りにした。

それから前世で何度かやり取りをしていたプローカーと連絡を取った。


それから必要な手続きを終えた僕は、再び義姉さんに会いに行った。

前世の善正 夢路の姿に変身して。


「義姉さん」


僕は仕事帰りの義姉さんに声をかける。

義姉さんは突然の僕の声にビックリしたみたいに僕の方を見た。

でも僕を見てすぐにいつもの優しい顔になった。


「どうしたの夢路。

珍しいわね。

夢路から私に会いに来るなんて」

「ごめんね。

ずっと連絡しなくって」

「いいわよ。

元気にしてたのでしょ?」

「うん。

元気にはしてた」


一回死んじゃったけどね。


「ありがとう義姉さん。

僕がいない間もあの家を綺麗にしていてくれたんだね」

「そんな事気にしなくていいのよ。

私達家族なんだから」


そう。

義姉さんは気にしない。

それが大変だとも苦労だとも思わない。

だからこそあの家は残してはおけない。

これ以上義姉さんの貴重な時間を奪ってはいけないんだ。


「義姉さん。

これあげるよ」


僕は封筒を義姉さんに渡した。


「何これ?」

「あの家は売ったんだ」

「え!?」

「ずっと前から買い手を探してたんだけど、やっと売れたんだ」


もちろんこれは嘘だ。


「ちょっと待って。

あの家は夢路の――」

「いいんだ。

もう住む事は無いから」

「住む事が無いってどう言う――」

「売ったお金はそこに入ってるから」

「え!?」


義姉さんは慌てて封筒の中身を確認して、中に入っていた通帳を開いた。


「待って待って!

こんな大金受け取れないわ」

「気にしないでよ」

「無理よ。

こんな大金……」


義姉さんは通帳を見直して唖然としていた。

そんな義姉さんを気にせずに僕は話を進める。


「あっても困る物じゃないでしょ?」

「困るわよこんな大金急に渡されたら。

これは夢路のお金でしょ?」

「いいんだ。

僕は義姉さんに受け取って欲しいんだ」

「でもあの家は元々夢路の両親ので、今は夢路のだったのよ」

「僕には必要無いんだ。

もう使う事の無いお金だから」

「使う事無いってそんな事……」


義姉さんは言葉を止めて僕をじっと見た。

そしてゆっくりと口を開いた。


「どこか遠くに行くの?」

「うん。

すごーく遠く」

「父さんと母さんには会っていかないの?」

「うん。

あんまり時間が無いんだ」

「そうなのね」


義姉さんとの間に沈黙が流れる。

その沈黙を何処か哀しげに笑った義姉さんが破る。


「わかったわ。

このお金は私が預かっとく。

だからいつでも取りにおいで」

「いや、それは義姉さんが――」

「私が貰ったお金をどうしようが私の勝手でしょ?」

「それはそうだけど……」

「あと――」


義姉さんが急に怖い顔で睨む。


「義をつけるのは辞めなさいといつも言ってるでしょ。

私は正真正銘あなたのお姉さんなんだから」

「わかったよ姉さん」

「うん、よろしい」


そしていつもの優しい笑顔に戻った。


やっぱり義姉さんはいつも変わらない。

美人で可愛いくて優しくて正しい。

僕とは正反対の人。

僕の憧れの人だ。


だけどもうお別れしないといけない。

僕なんかの為に時間を割かせてはいけない。

凄く名残惜しいけどさよならしないと。


「もう行くね。

姉さん」

「うん」

「さよう――」

「行ってらっしゃい」


姉さんが僕のさようならを掻き消す様に被せて来た。

それも最高の笑顔で。


「行ってらっしゃい夢路。

一緒いた彼女さんにもよろしくね。

凄くお似合いよ」

「いや、あれは……」


辞めよう。

これ以上は長くなるだけだ。

長くなるだけ僕が辛くなるだけだ。


「うん。

行って来ます姉さん」


僕は姉さんに背を向けてその場を後にした。

もうこの姿で会う事は決して無いだろう。

だってこの世界の善正 夢路はもう何処にも居ないのだから。


さあ、モグちゃんに頼まれたフィルムを忘れずに買って帰らないと。


あれ?

なんか最後姉さんが変な事言ってた気がするぞ?

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