第6話

世界中を周って素敵な景色をご紹介しよう。

って思ってだけど、スミレは街中の方が気になるみたい。


あっちの世界に無い技術が気になるんだろうね。

まあ、今日はスミレを案内するって決めたからね。

彼女の好きな所を見せてあげよう。


「ねえ、みんな揃いも揃って何を持っているの?」

「あれがスマートフォンだよ」

「あれが前の話に出て来た?」

「そうだね。

持ち運び出来る電話だね」

「確か遠くの人と話が出来るのよね?」

「そうだよ」

「なるほどね。

だから一人で喋ってる人がいるのね。

でも、不思議ね」


スミレは心底不思議そうに首を傾げた。


「なにが?」

「お話ししたいなら会いに行けばいいのに」

「みんなそれぞれ予定があるし、遠くて行けないんだよ」

「私なら何がなんでも会いにいくわね。

例え世界の果てにだって」

「確かにスミレなら何処へでも行けちゃうね」

「あれはなに?」


スミレは家電量販店の前にあるテレビを指刺した。


「あれはテレビだね。

映像を記録する物があって、それを映し出す物なんだ」

「へぇー。

って事はこれは本当にあった事?」

「今映ってるのはそうだね。

完全な作り物もあるけどね」

「魔力は全然感じないわ」

「無いからね」

「本当にこの世界には魔力が無いのね」

「無くは無いよ。

ただ必要無いんだ。

人は便利を求める生き物だからね。

その為にこの世界では科学力を、あっちの世界では魔力を選択したに過ぎない」

「その中でもヒカゲは何でも取り入れたのね」

「だってそっちの方が面白いじゃん」

「そうね。

私もそう思うわ」


そう言ってテレビに映るニュースを凝視していた。


あれ?

待てよ。


「ねえスミレ」

「なに?」

「何言ってるか分かるの?」


そう、言葉の壁だ。


僕は霊力を使って言葉に乗った感情や意味を直接読み取っているから他所の言葉を聞き取れる。

逆は感情を乗せてるから通じる。

ようは言霊の応用だ。


これはスミレも出来る事だ。

でもこれには欠点がある。


テレビやラジオなど、一回信号に変換されて何かを通してしまうとわからないのだ。


正直そこまで困る事では無いから気にして無かったけど、もしかしたらスミレはこの欠点を補う手段を知っているのかもしれない。


「ええ。

わかるわ」

「どうやってるの?」

「精霊に通訳して貰ってるの」


なるほど。

精霊術か。

それは僕には習得出来て無い技だ。


まだだけどね。

いつかは使えるようになりたいと思ってはいるんだ。


「ここにも精霊がいるの?」

「ええ。

むしろこっちの方が多いわね」

「それは意外だ。

もっと自然豊かな所にいると思ってた」

「みんなそんなイメージあるみたいだけど、そんな事は無いわよ。

精霊って好奇心が旺盛な人が多いの。

だからむしろ生物が沢山いる所の方が多いわ」


なんだって。

それは盲点だった。

てっきり人の踏み入れ無い所にいると思ってたよ。


これは固定概念に囚われていたね。

僕の美学に反してるじゃないか。

深く反省だ。


お?

って事は精霊術の鍛錬場所も間違っていたのかもしれない。

今度からは場所を変えてやってみよう。


それからは僕が質問攻めにあった。

目に見える物全てに目を輝かせるその姿は側から見るとお上りさんだ。


だけど、ここにいる誰よりも超絶美人のスミレはそれはもう目立っている。


特に街行く男共の視線は必ず一回は通過している。


それをスミレは理解してるのだろう。

絶妙なタイミングで視線を切っている。

声をかけて来そうな相手には視線で牽制していた。

それでもまだ諦めない勇者が現れると、僕の近くに来て男がいるアピールをしている。


その時の男共の嫉妬の視線がたまらないね。


「ちょっと鬱陶しさまであるわね」


スミレが僕にアピールするように言う。


「それは仕方ない事だよ。

スミレは誰もが目で追う程の超絶美人だからね」

「ヒカゲも?」

「もちろん。

僕はスミレと出会った時から超絶美人になるって知ってたからね」

「なら、あなたの想像通りの超絶美人になれたかしら?」

「いや、違うね。

僕の想像以上の超絶美人になってるよ」

「フフフ。

ありがとう」


スミレは嬉しそうに笑った。

その笑顔に僕の心臓は跳ね上がる。


「でも、まだ足りないのよね」

「そんな事無いと思うよ」

「いえ、まだまだよ。

だって……」


スミレが続きを聞いて欲しそうに僕を見る。

これは踏み込んだらマズイと僕の勘が言っている。

だけどそんな目で見られて放置出来ないよ。


「だって、なに?」

「ヒカゲの理性を吹き飛ばす程では無いもの」


そう言ってイタズラっぽく笑った。


ほら、僕の勘は大当たりだ。

破壊力半端無いって。


「ねえ、どうしたら良いと思う?」

「それ、僕に聞いちゃうんだ」

「だってあなたが一番答えを知ってるでしょ?」

「それはそうだよ。

でも、スミレも答えは分かってるよね?

だって僕の美学を一番理解出来てるのは君なんだから」

「もちろんよ。

だから、あなたは私はヒカゲの理性を破壊しないといけないのよね」


やっぱりだ。

最近僕は気付いてたんだ。

スミレは本気で僕の理性を破壊しに来てるって。

と言うか、初めからその気だった気がしないでも無い。


スミレ程の超絶美人に本気で攻めて来られるとなると強敵である事間違い無しだ。


これは気合いを入れ直さないと。

だって、これは負けられない戦いなんだから。

僕の美学は絶対なんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る