第4話

モグちゃんの家から飛び上がって縦穴を抜ける。

そこは前と変わらず日本の山だった。


「ここがあなたが居た世界……」


スミレは見慣れない景色に感動してるみたいだ。

僕は前回同様特に何も思わない。


「さあ、さっさとフィルムを買いに行こうか。

でも、その格好は目立つね」


僕は遠くウヨウヨいる街行く人達の服装を見て、僕とスミレの服装を変化させた。


うん。

スミレは超絶美人だから何着ても似合うね。


「これがこの世界の服……」


これもまた感動してるみたいだ。

服の隅々まで見回している。


服に興味深々な所は女の子だね。


「覚えたわ。

ヒカゲはこう言う感じの服が好みなのね」

「いや、僕の好みとかでは無いよ。

ただスミレには似合いそうだなって思って生成しただけだよ」

「なるほど。

ヒカゲが私の為に作ってくれたのね。

とっても気に入ったわ」

「それは良かった。

さて行きますか」


僕達はサクッと山を降りて街中に入った。


早速カメラ屋さんに――


「ねえヒカゲ」

「なに?」

「お金持ってるの?」

「あっ」


そういや向こうの金貨しか持って無い。

素材が金だから換金出来ない事も無いけど……


「僕の家に行こうか」

「当時のヒカゲの家?」

「そう。

家は残って無いかも知れないけど、あの秘密の地下室は発見されて無い自信があるんだ」

「是非行きたいわ」


そんなに食い気味に来る?

そうかお宝に興味あるんだな。

それなら期待してていいよ。

僕の選りすぐりのお宝があるから。



せっかくなので街中をぶらぶらしながら向かい、スミレの聞かれた事を教える事にした。


初めて見る物にスミレは興味深々で聞いて来たので、喋っている内にあっという間に僕の家の前まで到着した。


なんと僕の家はそのままだった。

他の誰かが住んでいる形跡もない。

表札も『善正』のまま。

そもそもあれから何年ぐらい経ったんだろう?


「ここがヒカゲの家?」

「そうだよ。

正確には家だった場所だね」

「どちら様?」


家の前で会話してたら声をかけられた。

僕とスミレは同時に声のする方を見た。


その女性はすっかり大人びていたけど、僕が見間違うはず無い。

変わらず可愛くて美人の義姉さんだ。


「夢路のお友達?」

「えーと……」

「私、夢路君の恋人なんです。

遠距離なんですけど」

「え!?」


スミレの発言に義姉さんが心底驚きの声を上げた。


無理も無い。

かく言う僕だって驚いているのだから。


「スミレ。

そう言う嘘は――」

「そうなの!?

夢路にこんな美人の彼女が居たなんて知らなかったわ!」


信じちゃったよ。

もう、義姉さんったら純粋過ぎるよ。

僕は彼女所か、友達だっていなかったの知ってるのに。


「私はスミレって言います。

この子は弟のヒカゲ」


なんと僕は弟になってしまったでは無いか。

一体何を考えているんだ?


「私は夢路の姉の由理。

よろしくね。

でも、せっかく来てくれたのにごめんなさいね。

夢路ったら4年前にフラッと何処かに行ったきり帰って来て無いみたいなの。

もしかして何処に行ったのか知ってる?」

「いいえ。

私もそれぐらいから連絡取れなくて、やっとここに来れたんです」

「そうなの……

夢路の事だから大丈夫だとは思うんだけど……」


義姉さんは何故か僕の方を見て首を傾げる。


「私もそう思います」


スミレは意味深な顔でこっちを見た。


「立ち話もあれだから、中にどうぞ」

「ごめんね。

僕達、これから用事があるんだ」

「そうなのね。

残念だけど仕方ないわね。

もし夢路の事何かわかったら連絡して頂戴」


そう言って義姉さんは名刺を僕達二人に渡した。

名刺の肩書きには『警部』と書かれていた。


「警察官なの?」

「ええ、そうよ」


義姉さんは誇らしげに答えた。


どうやら義姉さんは夢を叶えたみたいだ。

流石義姉さんだ。


「私は今晩はここに泊まる気だから、良かったら尋ねて来てね」


そう言って義姉さんは家に入って行った。


扉の隙間から覗いたけど、家の中は綺麗に整っている様に見えた。


もしかしたら義姉さんがこうやって定期的に掃除に来て来るているのかな?


やっぱり義姉さんは優しいや。


「よかったの?」


少し歩き出してからスミレが小声で僕に尋ねた。


「何が?」

「久しぶりにお姉さんと会ったのに」

「いいんだ。

義姉さんにとって今の僕は赤の他人だからね」

「でも話したい事はないの?」

「う〜ん……

話したい事ね〜

特に無いかな。

その内僕の事なんて忘れるよ。

そうなった方がいいに決まってる」


その内死亡扱いになるからね。

でも、そうなるとあの家はどうなるんだろう?

なんとか義家族の物になる様にしたいな〜


「それで、お金はどうするの?」

「そう言えばそうだね。

まあ、夜中にこっそりと取りに行くよ」

「なら、それまでは観光ね」


スミレが嬉しそうに僕の腕に抱きついた。


「まだまだこの世界はわからない所だらけだから、色々教えてね」

「いいよ。

僕のオススメの絶景スポットも案内してあげるね」


その超絶美人の完璧な笑顔に応えちゃうよ。

とりあえず世界一周はしないとね。

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