第9話

村を蹂躙していた盗賊達が一人残らずワイバーンに食い殺される悪夢のフィナーレ。

その後について少し話をするね。


朝起きたら隣でスミレが寝ているドッキリを受けた。


本当にびっくりしたよ。

なんかベッドが沈んだと思ったのはこの為だったんだね。

魔力で作ったボディスーツも無くなってるから全裸だし。


全く、身内じゃなかったら貞操奪ってたね。

だってこんな綺麗な子が全裸で無防備に寝てるんだよ。

それはもう無茶苦茶に犯してたよ。


サラの件もそうだけど、彼女には貞操概念って物を教えてあげないといけないね。


特に悪党を相手する時は気をつけるように言っておかないと。


そう思いつつも、せっかくだしゆっくりと目に焼き付ける様に堪能させてもらった。


本当に綺麗になったね。

僕が想像した以上の美人に育っている。

僕の理性を吹き飛ばしそうになる女はそうそういないよ。


女の子は恋をすると綺麗になると言うから、彼女も恋をしてるのかな?


もしそうなら、その恋が成就するといいね。


一時期は迫害されて殺されかけた彼女には幸せになって欲しいと心から願う。

全身くまなく視姦しながら言うのもあれだけど……


そんな彼女にバレない内に布団を被せてあげた。

その後何回か捲って視姦したけどね。



時間通りに起きて来たスミレは、全裸な事に気づいたのか自分の体をチェックしてから開口一番。


「私に何かした?」


どうやら貞操観念はあるらしい。

って事は昨日は寝落ちしちゃったって事か。

全くうっかり屋さんだね。


「安心して、何もして無いよ」


たっぷりと視姦してたけどね。

もうありとあらゆる所を楽しませてもらった。


「そう」


ぶっきらぼうに言って、魔力のボディスーツを身に纏う。

何故かちょっと残念そう。


そうか、わかったぞ。

スミレは僕に手を出させてそれをネタに金品を奪う気だったんだ。


正しくハニートラップ。

なかなかやるね。


確かに彼女程のプロポーションがあれば効果は絶大だろう。

女性の美しさは武器になるからね。


でも良かったね身内で。

前世で数々のハニートラップにはあったけど、全員返りうちにしてやったよ。

もれなく足腰立たなくなるまで相手してあげたね。

そのままポイっとして来た。


なんたって僕は悪党だからね。

同じ悪党には容赦しないのさ。



それで報酬のサラによるナモナイ村観光はどれも素晴らしい物だった。

サラの感性には脱帽だね。


普通地元って言うと見慣れてしまった、美しいとか言う感性は鈍ってくる物なんだ。

それなのに彼女は美しい物を美しいと思い続けられる。

自然の毎回違う一面を楽しめる。


そうじゃないとこんな素晴らしい景色を余す事無く案内出来ないだろう。

これは一種の才能だね。

とても羨ましい才能だ。


前世だったらインスタ映えとか言ってバシバシ写真を撮る人で殺到するけど、そんな無粋な輩もいない。

この世界には写真と言うものは存在しないからね。


前世の知識を使えば簡単に作れるけど、そんな事するつもりは毛頭無い。

そもそも写真で残す事を僕は嫌っている。


なんにしてもその時その時の一瞬が大事なんだ。

その一瞬を自らの五感全てを使って堪能するからこそ価値がある。


写真や映像で見るなんてナンセンスだ。

僕は世界中のどこにあったって見たい物は自分で見に行く。


そういや、この世界には僕のように転生して来た人はいないのだろうか?


よくある前世の知識でこの世界に無い物を、いかにも自分が発明して大金持ちって奴いないな。


もちろん僕はする気は無い。

そんな面倒な事しなくても金は集まるからね。


むしろそう言う奴を募集中だ。


人の知識を無断で使ってボロ儲けする悪党がいたら、ごっそりその売り上げを奪いに行ける。

そんな僕の変わりにお金を集めてくれる転生者募集だね。


なんだかんだとアンヌが愛した景色ツアーをスミレと2人で堪能して村に帰ると、アイビーとエルザがいた。


それにはびっくりだったね。

あのアイビーって子、サラが居なくなったからってここまで馬走らせて来たみたい。


そこまでする?

すごい正義感だ。

賞賛に値するよ。


更にはエルザまでいる。

彼女の目的は僕と一緒らしい。


バッタリ遭遇って訳にもいかないので僕達は、余韻に浸る間も無く王都に逃げ帰った。


正義を前に僕達悪党は逃げるしか無いのさ。


サラは契約で口外しない約束だし、僕の素顔を見たナムとか言う爺さんもサラの貞操を盾に脅して来たから大丈夫だろう。



王都に帰った頃にはすっかり日が落ちていた。


今日も帰ってホテルで寝ることにしよう。


おっと、その前にスミレとお別れしとかないと。

今日もハニートラップを仕掛けられるかもしれない。


彼女の裸体を毎日見て理性を保ってられる自信は正直無い。


僕は男だからね。

それなりの性欲はある。

むしろ僕は何に対しても欲深い男だ。


「ヒカゲ、ついて来て」


僕が別れを告げる前にスミレが動いた。


なんか仕掛けてくる気か?


「どこに行くの?」

「ギルドに案内するわ」


……そういやそんな約束したような気がするね。

じゃあ行かないとね。


スミレに案内されて王都の繁華街にたどり着いた。

賑わっている昼間とは打って変わって静まり帰っている。


その路地裏にひっそりと佇む空き店舗があった。

内装は綺麗なまま保存されていて、純喫茶っぽい雰囲気を醸し出している。


明日からでも営業出来そうな雰囲気だ。


「ここで喫茶店でもするの?」

「あなたは喫茶店は好き?」

「好きだよ。

特にモーニングセットとか大好きだね。

ただ苦いの苦手だからコーヒーは飲めないんだよね」

「そうなのね。

あなたが来るならやってみてもいいかも」

「確かに店舗するなら固定客の確保は大事だね。

僕も足繁く通う様にするよ」

「本当に?

なら早速進めるわ」


ん?これってもしかして僕が搾り取られる流れ?

まあ彼女達に僕のお金が流れるならいっか。


「ここよ」


スミレが一番奥の部屋に入って、更に奥の壁に手を当てる。

スミレの魔力に反応して手をついた所に小さな魔法陣が浮かび上がった。

すると僕達が立っている床の一部がエレベーターみたいに下に降りて行った。


「ここが私達のギルド『ナイトメア・ルミナス』の本部よ」


ここが?マジで?

高級ホテルのロビーみたい。

すごい本格的な秘密基地じゃん。


「中を案内するわ」


中はもっと凄かった。

地下15階まであり、ギルドと言うより豪邸のようだ。


集会所やトレーニングルールや宝物庫、プールなどの設備が充実している。

更にはそれぞれの居住スペースや食堂など、ここで生活出来る全てが揃っている。


前世の僕の秘密基地もそれなりには充実させていたけど、これには到底及ばない。


そういや、僕が死んだ後はあのお宝どうなったんだろう?

今度気が向いたら世界渡る方法考えて見に行ってみるか。


「みんなはここで住んでるの?」

「そうよ」

「いいな〜。

こんな所でみんなと住んでたら楽しいだろうな」


僕の家も男爵家だからそれなりの豪邸だけど、僕のカーストが低いから居場所が少なかった。

今度の寮もきっと落ち着かない。


僕はこの世界で落ち着ける場所を見つけられるのは学園を卒業してからになりそうだな。


「あなたの部屋もあるわよ」

「本当に?」

「もちろん」


やったー。

凄く嬉しいサプライズだ。

落ち着ける場所が早くも見つかりそうだよ。


みんな優しいな。

僕は小さな部屋でもいいよ。

ゆっくり体を伸ばして寝れるスペースがあれば何も文句は言わないよ。


「ここがあなたの部屋よ」

「え?ウソでしょ?」


そこは予想を遥かに超える部屋だった。


「この地下6階は全てあなたの部屋よ。

生活に必要な物は全て揃っているわ」


部屋ってより、もう家じゃん。

しかもかなり広めの。


「必要な物があったら言って。

すぐに用意するから。

あと狭くなっても言ってね。

新しいスペースも用意――」

「スミレ、ちょっと待って」

「どうしたの?」

「広過ぎない?」

「そんな事無いわ。

あなた専用の宝物庫も込みだから。

あなたがこれからいろんな物を奪って来たら、こんなスペースなんてすぐに狭くなるわ」


確かにそう言われるとそうかも知れない。

まあ、せっかくの好意だし遠慮なく頂くとしよう。


「私達のプライベートスペースは下の7階になるわ。

各自の鍵は魔力を登録しているから入り口で魔力を流し込むと開くわ。

この部屋は便宜上私達誰でも入れるようにしてたけど、あなた以外は入れないようにしておくわね。

ちなみに私達のプライベートスペースはどの部屋もあなたなら入れるようにしているから」

「え?それマズく無い?」


一応身内とはいえ君達女の子だよ。

男の子の僕が勝手に入れるのは気が気でないでしょ?


「何故?

みんな自分であなたが入れない様にできるけど、誰もやって無いわ。

あなたならいつでも大歓迎よ」


なるほど、いつでも遊びに来てって言う事だな。

まだまだ遊びたい盛りなんだな。

みんなまだまだお子ちゃまだな。


「そういう事ならこの部屋もみんなが入れるままでいいよ」

「いいの?」

「もちろん。

いつでもおいでよ」


僕が行って変なタイミングだったら大変だからね。

君達が遊びに来たらいい。

いつでも遊び相手になるよ。

こんな部屋頂いてそれぐらいしか恩返し出来ないけどね。


「わかった。

みんなにも伝えておくわ」


スミレは凄く嬉しそうにしている。

やっぱりまだ遊びたい盛りなんだな。

よし、みんなで遊べる物をいっぱい用意しておこう。


「じゃあ、みんな待たせているから付いて来て」


最後に案内されたのは、とても豪華な扉。


「この部屋は?」

「ギルドマスターであるあなたの為の玉座の間よ」


そういや僕がギルドマスターとか言ってたね。

あれでしょあれ。

文化祭は楽しみたいけど、文化祭実行委員長はやりたくないってやつ。


仕方ないな〜

みんな僕を仲間外れにしないで楽しそうな事に混ぜて貰ってるし。

僕がギルドマスターやってあげるよ。


どうせ非合法の裏ギルドだから名前だけだし。


扉を開けるとみんな並んで待っていた。

その前をスミレに案内先導されながら奥の玉座へと歩いていく。


そういや全部で7人だったね。

みんな見違える程美人になったね。

よかった髪の毛の色の名前にしといて。

危うく分かんなくなる所だったよ。


そしてこの部屋は凄く美しい部屋だ。

地下なのに虹色のステンドガラスから日光が入って来てる様な演出。

みんなの美的センスが輝いている。

奥の玉座なんて、メタリックパープルでカッコいい。


「ここがあなたの玉座よ。

座って」


僕が大人しく座ると同時にみんなが片膝をついた。


みんな練習したんだね。

寸分違わぬ動きで綺麗に揃っている。


「第七色、節食のルージュ」

「第六色、無関心のミカン」

「第五色、勤勉のカナリア」

「第四色、寡欲のヨモギ」

「第三色、純潔のソラ」

「第二色、謙虚のルリ」


なになに?

みんな二つ名みたいなの作っちゃったの!?


僕が見た目で付けた名前だとインパクト薄いもんね。

いいと思うよ。

僕には覚えられそうに無いけど……


「そして第一色、寛容のスミレ。

私達7人とこのギルドはあなたの為だけに存在する。

ここにはあなたを縛る物は何一つ無いわ。

ここに存在するルールはただ一つ。

あなたの美学のみ」


ギルドとして法外な報酬を要求しときながら、行く先の悪党からも奪って一石二鳥。

みんな凄いな。

素晴らしいシステムを考えたね。

こんなに自由で心躍る事は他に無いよ。


ここはみんなに習って挨拶といこうじゃないか。


「僕達には世界のルールが窮屈過ぎるから守れない。

だから僕達は悪党。

一縷の救いも無い悪党だ」


僕はナイトメアスタイルに変身して続ける。


「故に悪党は悪党らしく、自由に思うがままに奪い続けよう。

それが俺達がこの世界を生き抜く為の悪党の美学だ」

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