3
生温い風が吹く深夜。
廃墟ビルの地下にある部屋のドアを三回ノックし、更に二回ノックしたレジイナは二日ぶりにアサランド国のアジトに戻ってきた。
「あはははっ! なんだその顔!」
「ひーっ! ひっー! ダメだ、腹が痛えっ! よくそんな顔で飛行機乗れたなっ!」
顔をパンパンに腫らしたレジイナの顔を見てウィルグルとカルビィンは涙を流しながらお腹を押さえ、レジイナを指差して笑い始めた。
「よお、このじゃじゃ馬娘」
ジャドはそう言ってふーっとタバコの煙を吐いて部屋の中に煙を充満させた。
レジイナはそれを見て、下手したらこれで拘束されるなと、思いながら大人しくジャドの前へと歩いて出た。
「おい。ここのボスは誰だ?」
「……ジャド」
「分かってんじゃねえか。その下がヘマすると俺に迷惑かかるってのは理解できるか?」
「……はい。ごめんなさい」
ボソッと俯きながらそう言ったレジイナにジャドは溜め息を吐き、「ウィンドリン国から連絡がきた時の俺の気持ちも考えろ」と、ジャドはコツンとレジイナの頭を叩いた。
レジイナは暫く続いた沈黙の後、ジャドに懇願するような顔をして見上げた。
「なんだ? そんなおねだりするような顔をしようが、お座りやお手しても治してやらんぞ」
レジイナはジンジンと痛む顔を撫でてからその場で座り、手と頭を床につけた。
「なんだそれ」
「……日本式のお辞儀。ジャドお願いします。療治化を教えてください」
この不細工な顔を早く治したくてレジイナはジャドに療治化の修行をつけてもらおうと土下座してお願いをした。
意外な言葉にジャドはガハハッと笑ってレジイナの療治化の修行を承諾した。
「え、これ読むの……?」
レジイナは直ぐに手からオーラみたいな物を出して顔を治療できると思っていたがジャドはレジイナに医療書を渡した。
「お前、療治化を舐めてんな? そんな簡単にできるわけないだろ。まずは人体の構造が分からなきゃどこをどう治すのか分かんねえだろうが」
ジャドは自身が愛用している読み古した医療書の目次にある皮膚の構造を記載している箇所を指でトントンと指して、全て読んで暗記するように指示した。
「暗記!?」
「別に俺はいいぜ? お前さんが療治化がやりたきゃ覚えろ。できなきゃ修行はつけてやらん」
ジャドの厳しい条件にすぐに挫けそうになったが、後ろでバカにしてくるウィルグルとカルビィンに焚きつけられ、レジイナはソファに座って必死に文字を目で追った。
ジャドとウィルグル、カルビィンが新たに見つけた敵のアジトを特定するための会議をしている傍らでレジイナが医療書を何度も読見返して勉強していた時、ドアが三回ノックし、再び二回ノックされた。
レジイナはそれに反応して飛び跳ねるように立ち上がってスーツの胸ポケットから銃を取り出し、ドアに向かって銃口を向けた。
「おい、大丈夫だ。合図合ってただろ?」
ジャドはそう言ってレジイナの銃に手を当てて銃口を下げさせた。
「何言ってんの、既に四人揃ってるのに!」
この四人以外の誰かが来る。敵かもしれないとそう警戒している最中にドアが開いて、アジトにやってきた人物をレジイナは睨んだ。
「え、噂と違うじゃん。ブスだなお前」
レジイナを見て一発目にそう言った男にウィルグルとカルビィンは笑った。
「いや、そいつなかなかイケてるだけど、今は顔をパンパンに腫らしてんだよ」
「師匠と本気でやり合ったんだよなー、レジイナ?」
レジイナは怒りでプルプルと体を震えながら顔を真っ赤にした。後ろで野次を入れる二人に今すぐにでも殴りかかりたいが、ウィンドリン国でやらかした後なので大人しく我慢していた。
「おい、お前さんら。このじゃじゃ馬娘にそれは失礼だろ」
プププッと笑いを堪えながら二人同様にバカにしてくるジャドをレジイナはキッと睨みながら、ムスッとした顔をしてソファにドカッと座った。
「拗ねんなって。レジイナ紹介する、こいつは情報屋のブラッド・リードンだ。ブラッド、こいつはウィンドリン国のレジイナ・セルッティ。若いがなかなか強いぞ」
ブラッド……。
レジイナは今日殴りあったブリッドと名前が似ていることに顔を顰めた。こんな遠い所に来ても忘れさせてくれないのか。
「ふーん」
そう言ってブラッドはレジイナの前に立ち、品定めするかのようにジロジロと見てきた。レジイナも負けじとそんなブラッドを睨みつけた。
黒髪の短髪をワックスで立てて、ピアスを右耳に鼻、そしてよく見たら舌にも空けており、ふんわりと香る男物の香水。ストライプが入っているスーツを着こなし、両手に指輪を付けていた。
「ホストみたいね、あんた」
「おいおい、初対面に失礼じゃねえの? じゃじゃ馬娘さん」
「その言葉、そっくりそのまま返してやるわ」
ブスと呼ばわりしたお前が言うのかと、レジイナが下から睨み付けていた時、ジャドがパンパンと手を叩いた。
「レジイナ、いい加減にしろ。悪かったなブラッド。こいつ今殺気立ってんだよ、許してくれ」
「まあ、こんなガキにいちいちキレたりしねえよ」
ガキと言われてレジイナは再びブリッドを思い出して怒った。
「私はガキじゃないっ!」
立ち上がって抗議するレジイナをウィルグルが「まあ、これやるから落ち着けって」と、言いながら飴玉をレジイナの口に放り投げた。
「む……」
美味しい。
そう思いながらレジイナはブラッドを睨みつけながらソファに再び座った。
そんなレジイナにジャドはホッとしたように息を吐き、先程までしていた会議にブラッドを入れて話し合いを再開した。そんな四人の会議の内容が気になり、レジイナは医療書を読むフリしながら聞き耳を立てた。
「あんたらが追ってんのはこいつらだろ?」
ブラッドはスーツの胸ポケットからとある男の写真を三人に見せた。
「ああ、そうだ」
「そいつ、そこの商店街のショーパブの常連でな。ダンサーの女を使って家まで行かしたんだ。アジトまでは分からなかったが、そいつの家から尾行すればいずれは辿り着くはず」
ブラッドはそう言って地図に男の家の位置を書き記した。
「助かった。カルビィン、張り込んで来い」
「あいあいさー」
そう言ってカルビィンはすぐにアジトから出て行った。
「で、今回はいくらだ?」
それを見送ったジャドはアジトにある金庫から札束を出しながらブラッドに目を移した。
「今日は十万イェンでいいぜ」
「ほお、ありがてえな」
「まあ、オーダー通りアジトまで絞れなかったからな」
レジイナは本で顔を隠しながら横目でそのやり取りを見ていた。そんなレジイナにブラッドはニヤリと笑って目を向け、「じゃじゃ馬娘、本が逆だぞ」と、指摘した。
「え!?」
レジイナは本に目を落とし、本を逆さに持っていたのを気付いて急いで正しく持った。
「お前、今は本当は休暇中なんだ。任務のことは忘れろよ。それとも早く俺に会いたかったのか?」
そうふざけて隣に座り、腰を抱いてくるウィルグルの頭をレジイナは本の角で叩いた。
「いって」
「変態、セクハラ、離れろっ!」
「レジイナ、勉強しないなら療治化の修行は無しだぞ」
ジャドにそう注意されてレジイナは急いで本に目を通した。
「なんだ? お前、ああいうのがタイプなのか?」
そうブラッドを指してそう聞いてきたウィルグルにレジイナは顔を顰めた。
「ない」
「へー。でもあいつここいら一体じゃモテモテだぜー。魅惑化を使いこなして女なんて腐る程に食えるしな」
羨ましいぜと、言うウィルグルにレジイナは軽蔑の顔を浮かべてブラッドを見た。
「本当にホストじゃん」
「じゃじゃ馬娘さん、他人が言うことを簡単に信じるもんじゃねえよ。自分の目で見た物を信じないと痛い目に合うぞ」
上から目線でそう言うブラッドにレジイナはなんかブリッドリーダーに地味に似てるのが余計に腹立と、思った。
「ブラッド、俺らは仕事に行く。お前も出るだろ?」
「ああ、そうだな。こんなガキと二人にされても子守りの仕方なんて分かんねえし、出るわ」
また子供扱いされたレジイナはヴヴヴヴと牙を出して唸った。
「おー、よしよし。ほら飴やるから勉強、頑張っとけ」
ウィルグルは隣で唸るレジイナの顎を犬のように撫でる仕草をしてから、三つ程飴玉をレジイナに持たせた。
「やめてよ、気色悪い。飴は仕方なくもらってやる」
素直じゃねえと思いながらウィルグルはジャド、ブラッドに着いてアジトを出てっていった。
一人になったレジイナはガリガリと小さくなった飴玉を噛み砕きながら「あのホスト野郎、ムカつくー!」と、一人で地団駄を踏むのだった。
レジイナは休暇中、なんやかんかで毎日アジトに顔を出しては医療書を読んだり、ジャドに勉強を付けてもらっていた。
勉強が苦手なレジイナにしては真面目に取り組んでいたものの、そんな一週間足らずで療治化を使い始める程までには至らず、当初の目的であった顔の腫れも療治化の力を使わずにほとんど引いていた。
そしてレジイナがアサランド国に戻ってから六日が経ち、最後にジャドが母国のワープ国へ出発する日が来た。
「いいか、俺がいない間なにかやらかすなよ?」
ジャドはアジトに顔を出して、三人の顔を見ながら再々に釘を刺した。
「分かったって」
呆れた顔でウィルグルはそう返事した。
「まあ、努力するわ」
それに反してカルビィンはニヤニヤとした顔でレジイナを見ながら信用できない返事をした。
「努力? あんたの努力なんて信用ならない。ジャド、こいつもワープ国に連れてってよ」
レジイナは腕を組みながらカルビィンを睨みつけてそうジャドに言った。
「……はあ、不安すぎる。ということでお前さんらのベビーシッターとしてブラッドに毎日、顔を出してもらうことにした」
「嫌々な。まあ、金のためならやるけど」
ブラッドはそう言ってジャドから金を受け取りながら三人を見た。ジャドは何かあった時のためにブラッドに声をかけていたのだ。
魅惑化を使いこなすブラッドなら三人が暴れた際、止めるのに適してると判断したからだ。
金を受け取るブラッドをレジイナは睨みつけた。
私はこのホストを信用してないと、あからさまな敵意を示したのだ。
「タレンティポリスじゃない部外者を毎日ここに通わすのはどうなの?」
レジイナの言葉にジャドは「俺は信用している」と、返答した。
「確かにこいつはタレンティポリスじゃねえし、アサランド国出身だ。だが魅惑化として有能だし、何度もこいつの情報のお陰で助かってんだ。それにアサランド国出身なのはお前さんも同じだろ、レジイナ」
「……ふんっ」
ジャドの正論にレジイナはぐうの音も出ずに顔を逸らした。
「へー、お前ここの出身なのによく他国に行けたな」
「まあ、色々あんだよ。詮索したんな」
ジャドはポンっとレジイナの肩を叩いて「いい子にお留守番しとけ」と、言ってアジトから出発した。
子供扱いしてくるジャドにムーッと頬を膨らますレジイナの頬をウィルグルが面白がってツンツンし、それを見てカルビィンは「レジイナちゃん、パパが行っちゃってさびちいでちゅねー」と、バカにしているのを見てブラッドは頭を痛くした。
なんだこの低レベルな集まりは。
ブラッドはアサランド国出身者であるが、金の為なら何でもする主義者だった。金の羽振りがいい他国に情報を売った方が生活は豊かになるし、自身の扱いも手厚い。実際、暗殺部ができて一年後からブラッドはこの暗殺部に協力しており、何人もの暗殺部を見てきた。
だから分かる。こいつらは暗殺部として出来が悪すぎる。ジャドがいなきゃとっくに死んでいるだろう。
早速騒ぎ始める三人にブラッドはソファに座ってそれを鑑賞しながら、どうしたものかと頭を悩ますのだった。
——ジャドがワープ国に出発して三日が経過した。ジャドの次に暗殺部に長くおり、かつ補佐としての経験もあるカルビィンが意外と二人をまとめ、エアオールベルングズを五人を暗殺することができた。そんなカルビィンは打ち上げと総称し、四人集まって酒とつまみを買い占めて宴会を始めようと提案したのだった。
色々と意外だな。
そうレジイナがカルビィンを見直しながら板チョコをポリポリと食べながらミルクを飲んでいた。
「ガハハッ! おい、レジイナも飲めよ」
機嫌が良いのか、カルビィンはレジイナにグイッと缶ビールを差し出してきた。
「私、未成年」
「バッカ、こんな国に飲酒法ねえ。それに俺んとこは十八歳で成人だ。祝いの場で酒飲まねえのは失礼にあたるっつーの知らないのか?」
レジイナは「そうなんだ。知らなかった」と、言って、純粋にカルビィンの言葉を信じて缶ビールを受け取った。
「はーい、ストップ」
ブラッドはそう言ってレジイナの手から缶ビールを奪い取った。
「おいー、邪魔すんなよー」
口を尖らせて拗ねた顔でカルビィンはブラッドを見た。
「確かにこの国にはタバコや飲酒法もないが、無理強いは大人としてマナーがなってねえよ」
ブラッドはレジイナから奪い取った缶ビールをそう言ってから飲み干し、カランカランと音を立てて床に落とした。
「硬いやつだなー」
「まあ、金を貰ってますんで。それに可愛いじゃじゃ馬娘が帰って来た時にお酒ガバガバ飲んでたらパパが悲しむだろ?」
子守りは大変だぜ、そう言って子供扱いをしてくるブラッドをレジイナはキッと睨み、横に座って小人と戯れながら一人で飲んでたウィルグルの手からから缶ビールを奪い取って、レジイナは一気に飲み干した。
「うげー」
しかし、レジイナはあまりの不味さに殆どそのままダラーッと口からビールを出して床を汚した。
「うわ、きったね!」
「オッパイ、お行儀悪い。オッパイ、ダメダメ」
「てめっ、汚れたじゃねえかっ!」
ウィルグルと小人、そしてカルビィンはそんなレジイナから逃げるようにソファから立ち上がった。
「おいしくない……」
なんで大人ってこんな不味いものをガバガバ飲むんだろと、レジイナはミルクを一気に飲み干した。
「うう、ミルクも苦いよ……」
そんなレジイナを見てブラッドはあははっと声を上げて笑い出した。
「あははっ! やべえ! お前、最高だわ」
腹を抱えて笑うブラッドにレジイナはムスッとしつつも反論出来ずにティッシュで自分が吐いたビールを拭き始めた。
「はあ。まあ、場も和んだ所でここから本番だ」
そう言ったカルビィンはレジイナの腕を引いて立たせ、部屋の真ん中に移動させた。
「本番?」
「ああ、本番だ」
ニヤニヤと笑うカルビィンにレジイナは首を傾げた。
「レジイナ、服を脱げ」
「へ……」
レジイナはカルビィンの言葉が出ずにそのまま固まった。そんなレジイナに構わずカルビィンはスーツのボタンを勝手に外し始めた。
「ヤダっ!」
レジイナはパンッと音が鳴るほど強くカルビィンの手を振り払って一歩後ろに下がった。
「な、なんでそんなことするの……」
確かにいつもいやらしい目で見てきていたが、それなりに信頼関係を築いてきたつもりでいたレジイナはカルビィンのその行動を理解出来ずにいた。
「おいおい、これは宴会という名の定例会議だ。言ってなかったか?」
「き、聞いてないよ! それに今月は定例会議は無いんでしょ!?」
「定例会議?」
ブラッドはウィルグルに定例会議について質問した。
「ああ。俺ら暗殺部は月に一度、敵に裏切ってないかお互いの裸を見合ってタトゥーが無いか確認してんだよ」
ウィルグルはそうブラッドに返事しながら、なるほどねとカルビィンの行動を理解してニヤニヤと笑いながらレジイナの前に歩み出た。
「お前、母国に一週間滞在しなかったろ? そんな奴をどうして定例会議無しで信用できる? 俺らはお互いの背中を預けて戦ってんだ。信用できるようにしてくれよ」
ウィルグルの言葉にレジイナは息を飲み込んだ。確かに二人の言い分は最もだ。
「何だ? パパがいなきゃお前は俺らに敵に裏切ってないか証拠も出せないのか?」
ジャドのことを"パパ"と言ってからかうカルビィンに反論できないくらいに、レジイナは余りのショックにそのまま棒立ちなって固まってしまった。
「おい、レジイナなんとか言えよ。じゃなきゃ無理矢理に脱がすぞ」
「あ、あ……。い……」
「反論したら敵とみなす」
二人からの圧にレジイナはカタカタと体を震わせながらワイシャツのボタンに手をかけた。
「うひょー! やっとだぜ」
カルビィンはゆっくりとワイシャツを脱ぐレジイナを見ながら興奮していた。
「おいおい、定例会議だろ? はしゃぐなよ」
久しぶりにプロ以外の裸を見れることにウィルグルもニヤニヤとしながらも一応そう言ってカルビィンを嗜めた。
「はっ……、は、は……」
息が早くなり、目の前がクラクラしながらもワイシャツのボタンを全て外し終えたレジイナはゆっくりと袖を抜いて、次はカチャカチャと音を鳴らしながらベルトを外し始めた。
胸糞悪いショーだなと思いながらブラッドはそんな三人から目を離してソファに座ってゆっくりと酒を飲んだ。流石に部外者である自身が暗殺部のルールには口出しできないなと思って大人しく見守ることにしたのだ。
「おい、流石に焦らしすぎだ。脱がすぞ」
「きゃっ!」
レジイナはカルビィンの手によって一気にズボンを脱がされた。
「嫌なら早く脱げ。それともお前は俺に脱がされたいのか?」
「じ、自分でする……」
カルビィンの圧にレジイナはそう返事してからブラのホックを外し、ショーツも急いで脱いだ。
「は、早く確認して……」
レジイナは右腕で胸を隠し、左腕で自身の股間にやって、体を出来るだけ隠した。
「おい、腕」
「ひっ……!」
レジイナはウィルグルに両腕を掴まれ、そのまま上に拘束された。
「ぐへへへ、デケェな」
「いい眺めだなあ」
ジャドと違っていやらしい目で自身の体を見られ、レジイナは目に涙を浮かべた。そして二人の奥にいて助けてくれないブラッドを見てレジイナは我慢出来ずにポロッと涙を流した。
ブリッドリーダーだったら助けてくれるのに……。
ここにはいない思い人より先に他の男にいやらしい目で裸を見られたレジイナはショックの余りにひっくひっくと声を殺して泣き始めた。
「泣かれると余計興奮するもんだな……」
そう言ってカルビィンはレジイナの次に服を脱ぎ始めた。
「な、なんでカルビィンが脱ぐのよっ!」
確認じゃないのかと驚くレジイナに次はウィルグルが部屋内にツルを生やすよう小人に
「ウィルグル!?」
「ああ、確認だぜ。でもついでだし、気持ちいいこともしようぜ?」
レジイナは絶対絶滅の危機に頭が真っ白になった。
三ヶ月と短い期間だったがそれなりに二人と関係を築けていたと思っていたのは私だけだったのか。そしてこのまま自分の始めてをここで奪われてしまうのか。
ああ、ブリッドリーダー……。
「失礼しまーす」
ニヤニヤと笑いながら豊満なその胸を掴んだカルビィンにレジイナはブワッと鳥肌を立てた。
「や、やめてぇえええっ!」
「いいぞー。抵抗する女を無理矢理するのが一番だな」
「うげ、趣味悪っ。俺は泣かれながらするの嫌だからお前の後でいいぜ」
ウィルグルはそう言って壁に背中を預けて鑑賞し始めた。
「お願い、カルビィンやめてっ。私達、仲間じゃないのっ……!?」
「仲間? 違えよ、お前は俺らの性奴隷だ」
カルビィンはニヤッといやらしく笑いかけながら、涙で濡れたその唇に口付けをしてやろうと、レジイナの顔に自身の顔を近付けていった。
レジイナはそんなカルビィンのその言葉にプツンッと何かが切れた音が脳内でした。
「
そうレジイナが呟いた途端、拘束していたツルがレジイナから解かれた。
「なっ!?」
「はあっ!?」
二人が驚きの声を上げた途端、カルビィンの頭をレジイナは片手で掴んで床に勢いよく叩きつけた。
「ガッ……!」
そしてレジイナは右脚でカルビィンの頭をギシギシと頭蓋骨が軋む音がする程に踏みつけ、左手をウィルグルに向けて小人に
「動くな。少しでも動いたら喉を突く」
ウィルグルは何でレジイナが俺の小人に
頭をを動かさずにチラッと自身のパートナーの小人を見ると、「ご主人、ごめん。
ウィルグルは小人の言葉に驚いて目を張った。レジイナは育緑化はグレード2のはず。
育緑化はグレード1、2は小人に
俺より使いこなしてやがる……。
ウィルグルはレジイナに敵わないと理解して、痛みに悶えるカルビィンを見ることしかできなかった。
「いてえっ! 俺が悪かったからやめてくれっ!」
「ああ? 私がやめてっつってもやめなかったのにやめるわけねえだろうが」
レジイナは目で相手を殺せそうな程にカルビィンを睨みつけながら更に脚に力を入れた。
「うがぁあああっ! 頭が割れるぅうううう!」
「黙れ」
そう言ってレジイナはツルをもう一本生やしてカルビィンの口を塞いだ。
「いいか、クソ野郎共に分かりやすく話してやる。ここのボスは確かにジャドだが、実質ここを支配できるのは誰だか分かるか?」
レジイナの言葉にウィルグルはゴクッと唾を飲んだ。
それは薄々分かってはいた。
ウィルグルは自身がこの中で一番弱いことも分かっていたし、カルビィン、そしてその次に総括経験者のジャドが強いのを理解してたから今まで二人に着いてきていた。しかし、自身より若くて経験が少ないのにも関わらず、誰よりもずば抜けて天才的には強いのはレジイナだった。
それにはレジイナもここに来てすぐに気付いていた。彼女なりに先輩達を立ててそれを強く出していなかったが、とうとう我慢の限界がきた。
てめえらがそう出るなら私もそれ相当の行動を取るまでだ。
「カルビィンさんよ、確認しろよ。お前の好きな女の下のお口だぜ」
レジイナはそう言って堂々と足を広げて眼下にいるカルビィンに股間を見せつけた。
「んー! んんんー!」
口を塞がれたままのカルビィンはなんとかそうもがいて声を出した。
「おい、なんつってんだ? はっきり喋れよ」
レジイナが口を塞いでるくせにそう言って更に脚に力を入れた。
「んんんーーっ!」
「あはははっ! もがけもがけ! いいか獣化でもしてみろ、すぐウィルグルの喉元を突くからな」
狂気に満ちた顔で笑うレジイナにウィルグルが恐怖で震えた時、傍観していたブラッドが両手を上げながら立ち上がってレジイナに向かって歩き出した。
「ホスト、動くな」
「待て待て。俺はお前に触らないし、魅惑化もしない。それに足元見てみろ、意識がない奴に確認はできないだろ? 俺が確認してやる。いいだろ、ウィルグル?」
ブラッドはウィルグルにそう言って同意を求め、それにウィルグルは何度も顔を縦に振った。
レジイナは踏みつけてたカルビィンに意識がないことを確認してから足を退けた。
「ほら、髪上げてうなじ見せろ。よし、胸を上げて、次は足の裏だ」
ブラッドの指示に合わせてレジイナは自身の裸をブラッドに見せた。
「オーケーだ。服を着ろ」
ブラッドは床に落ちた服をレジイナに渡して、着替えを見ないように背中を向けた。それに合わせてウィルグルも顔を背けたのを確認してからレジイナは育緑化の力を解いて服を着始めた。
「いいよ。服着た」
その言葉にブラッドはレジイナに顔を向けた。
「やりすぎだ」
「はっ! ベビーシッターとしての仕事を怠ったあんたのせいじゃないの?」
鼻で笑ってブラッドを睨みつけながらレジイナはソファに移動してドサッ座って足を組んだ。
「おい」
レジイナは今だに震えるウィルグルに目をやって声をかけた。
「コーラ」
「へ……?」
顎で冷蔵庫を指すレジイナにウィルグルは間抜けな声を出した。
「聞こえなかった? コーラ」
ウィルグルは急いで冷蔵庫からコーラを出して震える手でレジイナに渡した。それを奪い取るように受け取り、レジイナはコーラを一気に飲み干した。
「ぷはっー。あーあ、さっきので疲れちゃった。肩」
そう言って睨みつけてくるレジイナにウィルグルはビクビクと震えながら、「は、はいっ!」と、返事してレジイナの指示通りに後ろに回って肩を揉み始めた。
「あーあ、最悪だ……」
今まで一番最悪な形態になっていく暗殺部にブラッドは溜め息をつきながらもカルビィンの生死を確認した。
「じゃじゃ馬娘から王女様の誕生か……」
ウィルグルをこき使い始めたレジイナを見てそう呟いたブラッドはカルビィンを奥の部屋へと移動して手当てし始めることにしたのだった。
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