『ハート・オブ・シティ』 最終回


 赤血警部補は、『うんじゃあ。まいやら。うんじゃあ。まいやら。』と、唱えるばかりの人々をかき分け飛び越えて、そのあねがさばあの弟という人に飛びかかった。

 

 ちょっとした隙があると見たのだ。


 らんぼう刑事も続いた。


 すると、エレベーターを降りたときに案内しにきた男が、らんぼう刑事の前に立ちふさがった。


 ばりばり。


 と、障害物にぶつかったような音が響いたのだ。


 赤血警部補は、撥ね飛ばされた。


 しかし、らんぼう刑事は、男と取っ組み合いになった。


 『いててて、どうなってる?』


 赤血警部補は、感電したような感じになっていたが、幸いにも心臓に影響は無かった。


 『うんじゃあ。まいやら。うんじゃあ。まいやら。』


 一旦ちょっと乱れた祈りの声が、また、一層高くなった。


 『まったく、市民に手出しはできないよな。』


 らんぼう刑事は、本人に任せて、赤血警部補は、やむを得ず、もう一発、男の腰あたりに向けて発砲した。


 しかし、今度は、弾も弾き返された。


 跳弾が壁に当たった。


 『くそ。遅かりしか。』


 赤血警部補は、自分の判断をちょっと悔やんだ。


 そこに、なんと、あねがさばあが現れたのである。


 『あんた、やめなさい。』


 その声は、あたかも雷の直撃みたいに、男にぶつかったのだ。


 らんぼう刑事は、突っ込んできた男を殴り倒した。


 それから、被り物を剥がしたのだ。


 『なんと、副市長か。そりゃ、見覚えあるなあ。』


 赤血警部補が呻いた。


 『あんた、やめろっていってるだろ。』


 あねがさばあが、もう一回カツを入れた。


 『ねえさん、もう、むだだ。岩盤様は活性化した。爆発は止まらない。終わりだ。』


 『いや、違うな。森の古い木々、街路樹、花々に頼み込んだよ。岩盤様を静めるように。あと、100年待つように。と。岩盤様は、承諾したよ。なんとかね。150年待つと言っているとさ。人類は、大きなつけを抱えたわけだ。あんた、自首しなさい。終わりだよ。』


 あねがさばあの弟は、そこに、あっけなく、崩れ落ちた。



    😻😻😻😻😻😻😻😻


 最新型ヘリの出番は、幸いにも、なかったのである。(街が破壊されかねない。まだ、当局に、常識があったわけである。)


 『結局、弟は、洞窟の地下から、水路をたどって、岩盤様に、接触して、まあ、取り込まれたんだな。そうして、超人みたいになった。』


 あねがさばあは、好物の焼きそばを食べながら言った。


 『簡単な話だよ。その力で、市民を操り、騒動を起こした。自殺した人は気の毒だったわね。弟が、なにかで、個人的に恨んでた人らしい。ただし、逆恨みかも。』 


 『しかし、当局は、そんな、オカルト話は受け入れないさ。君の弟は起訴される。裁判になる。どうやら記憶はあるが、話の内容はでたらめだとされている。しかし、自殺との関連性は証明できないだろうし、薬物も検出されない。市民ホールにいた人たちの記憶は、かなりあいまいだから、弟さんに決定的に不利な証拠はでないだろう。病院には入れられるかもしれないし、損害賠償は負うだろうが、極刑にはならないさ。あんた。どうする?』


 『さあ。なにかの罪になるかい?』


 『いや。罪にはならないが、誉められもしないな。おいらの昇進もない。こいつもな。』


 赤血警部補とらんぼう刑事も、焼きそばを食べた。



       🍝

 


 


 

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『ハート・オブ・シティ』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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