『ハート・オブ・シティ』 下の16


 男は、膝をがっくりと机の上についたが、しかし、意識は、なお、しっかりしているようだった。


 座り込んだまま、両手をたかく天井に差しのべて、なにかを呟いた。


 『あいつ、痛くないのかな。』


 らんぼう刑事が不思議がった。


 『諸人よ、いまこそ祈ろう。岩盤様に。あなた方の力が、わたしの力といっしょになり、そうして、ついに、岩盤様は、爆発なさるのだ! すると、それにつられて、さらに世界中の岩盤様が爆発なされ、地球は浄化されるだろう!』


 『うんじゃあ。まいやら。うんじゃあ。まいやら。うんじゃあ。まいやら。うんじゃあ。まいやら。うんじゃあ。まいやら。…………』


 物凄い祈りの声が市役所市民ホールに響いたのだ。


 『わ、わわ、わ。』


 らんぼう刑事が叫んだが、赤血警部補には聞こえない。



 あねがさばあは、この危機をすぐに感じ取った。


 『ハロー、ハロー! こら、聞け!』


 もちろん、その音は、警部補には届かなかったが、幸い、着信の赤いランプに警部補が気づいた。


 『あいよ、なんだ。取り込み中だ。』


 警部補は、無線機に耳と口を押し付けた。


 『まずいよ。岩盤がものすごく活性化してるよ、そら、爆発するかも。』


 『あいつ、そう、言ってるぞ。足を撃ったが、座り込んだだけで、ピンピンしてるぞ。』


 『だから、撃ち殺せ、といったろ!』


 『あんた、ほんとに、姉か?』


 『ほっといたら、みんな死ぬよ。いいのか? そんなんで!』


 『いや、それは、まずいな。』


 『なら、殺るしかないよ。』


 赤血警部補は、まだ、迷っていた。


 そんなバカなことが、この世にある訳がない。


 『あり得ないことの為に、殺人をしろと?』


 それは、極めて現実的でオカルト否定派の警部補にとっては、ありえない選択肢だったのだ。



         🧺


         次回、最終回❗


 


 

 


 


 

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