『ハート・オブ・シティ』 下の11


 あねがさばあは、ふたりが市役所に入るのを阻止できなかったことを、悔やんでいた。


 『まさか、あいつが出てくるとは。』


 弟は、正式には行方不明だが、事実上、生きているはずはなかった。


 7年前、となり町の山奥にある『猟奇洞』に探検に入って行方不明になった。


 もともと、姉を凌ぐ不可思議な力が強くて、しかし大人しく、いつも虐めの対象にされていた。


 内部に秘めたものを、外に見せることはけしてなかったし、姉にも見えなかった。


 とてつもない、力を秘めているのは判っていたが、それは、いつも未知のものだった。


 大学の探検サークルに入り、さかんに各地の洞窟をさ迷っていた。


 『猟奇洞』は、観光洞窟にもなっていて、前半は比較的入りやすいし、危険でもないが、その先には未調査の広大な領域が広がっていることは判っていたが、かなり沢山の枝分かれがあり、大部分は謎のままで、一般には立ち入り禁止にされていた。ただし、学術調査などは、市の許可を得て行うことは可能だった。


 その一部は、遥かな彼方にまで延びているらしい、という推測もあった。


 この街を流れるあの大河につながる水路があることは、おそらく間違いないとも言われていた。


 おそらくは、無謀な探検に挑んだに違いない、と、あねがさばあは推測していた。


 6人のパーティーだった。


 5人は帰還したが、弟は帰ってこなかったのである。


 

        🕳️ 

 


 


 


 

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