『ハート・オブ・シティ』 中の6号


 あねがさばあの探求は、まだまだ、続いた。


 市役所の直下から、この丘の直下には、巨大な固い地盤がある。まあ、岩の塊である。


 だから、地震などには強いと言われている。


 こいつに穴を空けて、市役所は建てられた。


 かなりの費用が掛かったらしい。


 一部には、政府首脳が逃げてきて、隠れるための核シェルターがあるというような噂もあったくらいだが、それは、デマだろうと、あねがさばあは、確信している。


 そうした形跡は感じられないのだ。


 そんな、予算も立たないだろう。


 ただし、この巨大な岩石には、怪しい記憶みたいなものがあるのは間違いない。


 しかも、それを、自らの力で封印しているようなのである。


 つまり、岩石なのに、意思がある。


 古くて、巨大な岩石なら、あり得なくはない。


 あねがさばあは、そいつを、なんとかして、読み解きたかったが、なかなかではないのだ。


 もし、余計な負荷を掛けたら、反発しかねないとみた。


 で、実際に、公園あたりの地盤が少し下がったのである。


 それが、巨大岩石の仕業ではない、とは、言い切れない。


 まあ、そんなことが、可能だ、とか言ったら、警部補に突き飛ばされそうだが。


 しかし、あり得なくはないと、あねがさばあは、思う。


 地盤を支えているのだから、何かの力を行使できるかもしれない。今のところは、明らかにオカルトだが。


 この丘にも、巨大な岩石地盤は、物理的な影響力を持っているだろう。


 処刑された人たちの無念を、受け止めているかもしれないが、それこそ、オカルトであろう。


 それに、もしも、そうだとしても、今ある自殺の多発や、市民が暴力的になっているのではないか?


 ということには、関係があるとは、まずは、思いにくい。


 あねがさばあは、取りあえず、葉山真司さんが辿ったであろう道すじの特定に掛かった。


 その自宅も、ここから遠望できた。


 小型の望遠鏡を使うと、見える位置にある。


 この街には、あまり、高い建物はない。


 市役所が、圧倒的に高い。


 その自宅のわりに近くには、火虎川が流れている。


 むかし、松明をくわえた虎が現れて、夜間、大洪水に襲われた人々を助けたとされる。


 しかし、そもそも、野生の虎は日本にはいなかった。


 それでも、古くから、虎は知られていたし、その皮は、一部には入ってきていた。


 さらに、2万年ほど前には、日本列島あたりにも、虎は居たらしい。


 それは、文化にはたぶん関係ないが。




 


 



 


 


 

 


 

 

 


 


 






 火虎川。



 

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