『ハート・オブ・シティ』 中の4号


 あねがさばあの、今回の狙いは、むかし、死罪になったひとたちではなくて、当然に、警部補から依頼された自殺者や、市役所などで暴れた人たちに関する情報である。


 しかし、すでに周知のように、そこには、様々な情報が介入してくるわけだ。


 沢山の木々は、毎日毎日、様々な情報を収集している。


 植物は、理解するかどうかは別として、情景だけではなくて、流れてくるたくさんの音や匂いまでを体内に蓄積している。


 かれらは、生き物だから、それらを自分達なりに咀嚼する。


 一方、壁や、岩、道路などは、見えたものをそのまま写している。


 ただし、いつまでもではない。


 ものによって、記憶力や、記憶容量も様々だ。


 より古い時代のものは、大きな自然の岩石が覚えていることがある。


 彼らにとっては、300年とか、400年とかは、昨日のようなものである。


 さらに、細かいことはそばに行って読み取る必要があるが、こうした高い見晴らしの良い場所で、一定の目安をつけておくと、わりに、やりやすいのである。


 『市役所』は、この頃の事件のキーになっていると、あねがさばあは、踏んでいた。


 だから、市役所の、ばかでかい建物全体をもスキャンしていたのだ。


 人口60万くらいの街にしては、やたら、でかい。


 ということは、情報量も多い。


 あねがさばあには、様々な情景が見えてきていた。


        🏖️



 『こりゃ、やはり、市役所は、改めまして、ブラックホールという訳じゃないけど、ブラックポイントだと、実感しますわ。あの地下には、巨大な岩石がいる。たくさんたくさん、溜め込んでますなあ。あれが、この街のボスなわけだ。でかすぎて、気がつかなかったわ。むかしは、地面の直ぐ下にいた。処刑の情景も見ていたな。怨みや、つらみも、写し取っていた。戦国時代の戦いも見ていた。大戦中の大空襲もだ。かなりの死者を埋めてるわ。でも、記録にはなかったような。そこから、最近の記憶を抜き出すのは、大変だ。』


 あねがさばあは、ある種のこつを、掴もうとしていた。


       ☠️


 


 


 


 

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