15話 鍵師の在り方
パーティ終了後、オレは手紙に記された指定の場所へと足を運んでいた。
そして、この地図の凄さを実家していた。
きめ細かく記された見張りの数や巡回の仕方。死角の場所等など…。
この地図のおかげで見張りに気づかれること無く、オレは指定の場所へと辿り着いた。
さて、依頼人はどんな人だろうか?
こうしてわざわざ人の目に付きにくい場所に呼び出すと言うことは秘密にしたい依頼なのかもしれない。
取り敢えず身を潜め、依頼人を待っていると
「依頼人の方ですか?」
「……そうだ」
微かに聞こえた足音に問いかければ返事が返ってきた。
依頼人の姿は見えない。そして声もまた何だか枯れている様な鼻声の様な声で、男女の区別も出来ない。
「依頼内容を聞かせて頂けますか?」
「……聖女プレセアの金庫の解錠をお願いしたい」
「…は?」
オレはあまりにも予想外すぎる依頼内容に間抜けな声で返答してしまった。
だってまさか…こんな依頼が来るなんて思いもしていなかった。
自分が鍵をかけた錠前を、自分の手で解錠する。親父の元で鍵師の手伝いをしていた時だってこんな依頼は無かった。
漸く鍵師として独り立ち出来たと思った矢先の予想外の依頼。
けど、答えは決まってる。
「生憎だが、プレセア…様の金庫の鍵を作ったのはオレです。だからその依頼を引き受けることは出来ません」
「………お前が作った、か。そうだな。では、報酬をお前が望む物全てを渡そう。富でも地位でも、女でも。何でもいいぞ」
「報酬とかの問題じゃないんですよ。鍵師は、丹精込めて作った錠前を依頼主に提供する。その依頼主の大切な物を守る為に。プレセアの件だってそうです。それにそもそも、貴方の依頼は正に泥棒そのものじゃないですか。鍵師は犯罪には手を貸せません」
オレの言葉に依頼主は黙り込んだ。
金庫を開けようとしている不届き者がいるとプレセアは言っていたが、間違いなくその犯人はこの依頼主だろう。
「つまり、私の依頼は受けられないってことか?」
「そうです」
「ふむ。非常に残念な結果だが…」
突然引き笑いを始める依頼主。
気味が悪くて、そして何より
なんだよ…この息苦しさ。
漂う空気が一変した気がした。
この依頼主から放たれる圧が、オレに降り掛かる。
オレは拳を握り締めて、その圧に耐える。
「……鍵師ルカよ。非常に残念だ。しかしお前は絶対にあの金庫を開ける事になる。いや、開けさせてやる」
「は? それは…どいう意味……って居ない!?」
振り向けば、さっきまで居たはずの依頼人の姿が無くなっていた。
そして依頼人が言っていたあの言葉…。
間違いなく、依頼人がプレセアの金庫を開けようとしていた犯人であり、且つまだ金庫を狙っていることが分かる。
だが、にしても何でプレセアの金庫を狙うんだ?
確かに凄い金額が入っていたが、金目当てならば城の金庫を狙った方がいい筈だ。
……プレセア個人への恨みがある、とか?
失礼だとは思うが、普通に有り得そうな話だと思った。なにせ、修道院の件ではオレもプレセアを恨みかけたからだ。
それに…プレセアの様子が変だった。
もしかしたら本人も薄々何かには気づいていたのかもしれない。
「……取り敢えず、戻るか」
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