13話 次の依頼


……眠れない。


ふかふか過ぎるベッドに、ふんわりと香る洗剤の香り。そして、肌触りの良い寝巻き。

何もかも慣れなくて疲れている筈なのにオレはなかなか寝付けずにいた。


にしても…今日だけで色々あったな。


そしてオレは今日の出来事を振り返る。

保管庫を開けたことで才能を見出され、宮廷専属錠前師として雇われた、というまるで物語の様な今日の出来事を。



「改めて思うと、ほんと信じられないような展開だ…」



もし親父が生きてたら、絶対に驚いていただろうな…。いや、もしかしたら馬鹿にしてくる可能性もある。まだ錠前師として半人前のお前が宮廷専属錠前師を名乗るなんて百年早いと。


オレ自身、親父の足元にもまだ及ばない錠前師だと思ってる。けど、宮廷専属錠前師として働く事になった以上、錠前師としての誇りを持って仕事を全うしたいと思ってる。

それに、錠前師の価値を認めてくれた人達がこの城には居る。

それだけでオレは嬉しかったし、何より更に錠前師という職業を誇りに思えたのだ。



そう言えばあの保管庫の中身…アレは一体何だったんだろう。

確かに中に何が入ってるのかは分かったが、一体アレが何の役割を果たす物なのか、オレには分からない。寧ろ、なんでアレが保管庫の中に厳重に保管されていたのかが分からない。


だってアレは…。



そう思った瞬間だった。



コンコン



扉をノックする音がした。

こんな真夜中に一体誰だ…?


オレは壁に掛けられた時計の時間を確認して、顔をしかめる。

だって、もう夜中の一時を回っている。



「……ほんと誰だよ、こんな夜中に」



オレは扉まで行き、恐る恐る扉を開ける。

すると



「どちらさま………って誰も居ねぇ…」



扉を開けて外を確認すれば、そこには誰の姿も無かった。

新手の嫌がらせか? なんて思いつつ、オレは扉を閉めようとする。

その時、オレは扉に貼られた封筒に気が付いた。



「…手紙? 偉大なる錠前師、ルカ様へ…?」



その封筒の宛先には、そう書かれていた。

と言うか、偉大なる錠前師ルカ様って…。

恥ずかしさを覚えつつ、オレは封筒を持って部屋の中に戻る。

そしてベッドに腰掛け、封筒の封を切って中の手紙を取り出すして目を通す。



簡単に言うと手紙の内容は、正直言うと意味不明な求ものだった。


____________________


偉大なる錠前師、ルカ様へ



貴方様にとある依頼をしたく、この手紙を送らせて頂きました。


今夜行われるパーティが終わり次第、王城の裏門近くの倉庫にて、詳しい情報をお伝え致します。




____________________



因みに、この手紙の送り主の名は何処にも書かれていなかった。

でも、城に雇われている人間である事は間違いないと思う。

なぜならこの記された指定の場所へと行く為の安全な通り道が記された地図が一緒に封筒の中に入っていたからだ。

城内の構図をここまで熟知しているとなると、この城で雇われている人間が依頼主で間違いないだろう。


まぁ、仕事が貰えることはいい事だ。

断る理由なんて無い。

でも、何でこんな面倒臭い方法で依頼を頼んできた? 部屋の前まで来たら直接伝える方が早いはずだ。


まぁ…依頼者側にも色々都合というものがあるのだろう。


オレは手紙を机の上に置くとベッドに再度横になった。

まだまだ慣れるのに時間がかかりそうな環境だが、少しづつでいいから慣れていこう。



オレは修道院の家族達の喜ぶ姿を思い描きながら瞼を閉じた。

待ってろよ、皆。

美味しものいっぱい食べさせてやるからな。



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