第9話 鍵作りの工程


「鍵と錠前について熱く語ったところで、今度は制作していこうと思うんですけど……」



ちょっと熱く語り過ぎただろうか。まぁそれでより興味を抱いてくれたのなら嬉しい所だが……。


オレは王女様の様子を伺う。


王女様は、キラキラと新しい玩具を与えられた子供のような……そんな表情でオレが錠前と鍵について語っていた時に王女様へと手渡した鍵や錠前たちを見ていた。



どうやらオレが思っていた以上に王女様は錠前と鍵に興味関心を抱いてくれたらしい。



嬉しくなって、オレも心が踊るのが分かった。



「まぁ制作と言っても誰でも簡単に作れる物なんですけどね」


「そ、そう言うものなのですか?」


「はい。では今からプレセア………サマに依頼された鍵を作って行きますね」



一見錠前や鍵を作るのは難しい事だと思うかもしれないが、本当に単純作業だ。


まず材料となる鉄、木材を用意したら削っていく。鉄の場合は溶かして型にはめる………以上だ。

そして鍵も同様である。


勿論、錠前には鍵穴を。

鍵にはピッチという一定の幅の山が並んでいる為、それらを作る必要もあるが、本当に単純作業である。



そんな感じで錠前と鍵を作っていく中で、オレは考える。

この錠前と鍵の在り方について。



プレセアはあの金庫を絶対に開けられない………強力な防犯対策を施して欲しいと頼んできた。


もしかしたら誰かがプレセアの金庫を開けようと試みた形跡があったのかもしれない。

だから更に強力な防犯対策を望んだ…。



それなら取り敢えずまずは、プレセアしか開けることが出来ない様にしないとな。



今回は木材で制作していこう。

理由としては、木材の錠前でもしっかりと仕事をする、と言う事を知ってもらう為にだ。



まぁ、本当は材料が木材しか無かったからなのだが……。



まぁ、強度や質はオレの手に掛かれば鉄の物と同じ、もしくはそれ以上の物になるので問題は無い。



こうして完成した錠前と鍵に、王女様はまた更に瞳を輝かせた。



「こうして作っていくのですね! とても勉強になりました!」


「オレの方こそ、ありがとうございます」


「いえ、お礼を伝えるべきなのは私の方です。本当にありがとうございました」



お互いに感謝の言葉を述べあって、頭をペコペコ下げるのがおかしくて、つい笑ってしまった。

そしたら王女様も釣られたのか、クスクスと笑い始めた。



早速完成した錠前と鍵をプレセアに届けるか。



オレは鞄に錠前と鍵をしまう。



「プレセアなら今頃、礼拝堂で祈りを捧げている筈です。もう少しで終わると思うので礼拝堂まで案内致します」


「そこまで王女様に甘えるのは……」


「私が案内したいから案内するのです。だからルカ様が気に掛ける必要は有りませんよ。それに……プレセアの驚く顔が見たいので」



まるで今度はいたずらっ子の様な笑顔を浮かべる王女様。


ほんと、仲良しなんだなぁ……。


微笑ましく思いつつ、オレは王女様に礼拝堂までの案内を頼む事にした。

隣でニコニコと笑みを浮かべる王女様を見て、オレもプレセアの驚く顔を思い浮かべてみるが………。



「全然浮かばねぇ……」



驚くプレセアの姿が全く思い浮かばず、オレの中には不安な気持ちが積もり始めた。



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