第19話弱み

鬼塚さんを見かけなかったか、聞いてまわった。その情報を元に彼女を見つけた。


洗面所で手を洗っていた鬼塚さんに声をかけた。さっきの神宮寺さんをいじめていた時に手が汚れたのだろう。

ねぇ鬼塚さん話があるの。私は真剣な眼差しで彼女を見て言った。


なんだよ?

なにかようか?

鬼塚さんはイライラしている様に言った。


あのね、貴方に演劇部を辞めてもらいたいの。そう彼女にはっきりと告げた。


貴方のやった事は犯罪です。人に無理矢理変なものを食べさせるなんて。


辞めてもらわなければ、先生もしくは、警察に言うわ。強気に言ったが、それでも穏便に済めば良いと思った。


なんだ? 変な食べ物…ああそういうことか。

神宮寺から聞いたんだな?

彼女は、私を睨みつけた。


聞いてなくても、そんな酷い事してたら、私の耳にも入ってきます。


辞めてくれますね?

彼女を刺激しないように穏やかに言った。



説教か?

こっちは彼氏と上手くいってないから、イライラしてんだよ。


おい!そういうと、2人の連れを呼んだ。近くにいつも呼び出しできる様にさせていたのだろう。


2人はすぐさまに反応し、彼女の側にきた。



1人じゃ話も出来ない人なんですか?

一対一で話し合おうつもりだったが、妨げられ、少しムッとして言った。


てめぇ良い度胸だ。おい、2人とも脱がせ。


2人はさすがにそれはやり過ぎだろうと、一瞬躊躇った様に見えた。

しかし鬼塚に恫喝されて、その通りにした。


何するの!離しなさい。

だが抵抗虚しく脱がされてしまった。



よし写メ撮った。みんなが注目するあんたの秘密の一部をね。

彼女はスマホの画面と私を交互に見合いながら言った。


もし誰かにちくったら、こればら撒くよ。

と私を脅迫している。


高く売れるだろうな。

鬼塚さんの声が普段より高くなって、私を脅しているにも関わらず、それが友達に言う様な愉しげな感じに聞こえた。


そして3人全員が笑っていた。



ふざけないで、それで私が黙るとでも?

私は強気に言った。

内心はそれをネットに流されたらと、恐怖に震えた。

それでも言いなりになれば、相手の思う壺だ。


くっ。コイツ、どうかねー。

私はどっちでも良いよ。と鬼塚が勝ち誇った笑みを浮かべていた。


甘かったと私は思った。まさかここまでする様な人達だなんて。

彼女1人ならここまでしなかったはず。


集団心理で平気でやれる人に変わる。本を読んでそれを知った。


彼女もそうなのかな。

それにしても、逆に弱みを握られてしまうなんて。


でもだからと言って、神宮寺さんにまた、手を出したら許さない。


私は覚悟してここに来たんだ。神宮寺さんを精神的に追い込む彼女達から守る。


そして、神宮寺さんに学校が楽しく来れる場所にしてあげるという強い意志は、誰にも挫けない。


なんだよその目は。鬼塚は、私目掛けて、バケツの水を私にぶちまけた。


それは写メが有るから他の人に水をかけられたことを言わないだろうと、見抜いていたのだろう。


どうだい?

参った?

謝れば許してやるよ。


そうだ。私の友達にしてやっても良いよ。

と鬼塚は言った。


私はぺっと鬼塚さんに、水を飛ばした。

彼女の頬に飛ばした水が付いた。



それをすぐさま彼女は手で拭うと、私を睨んだ。

テメェ、鬼塚さんはキレてしまった様だ。

表情からは憎悪の目が感じられた。


彼女は私に殴りかかろうとした。

しかしさすがに2人が止めに入った。


2人の反応は慌てている様だ。しかし慣れているのだろう、じゃじゃ馬を宥める様に彼女を落ち着かせた。



ふん。今日は2人に免じて許してやるよ。


またな。と3人は去っていた。


私は気丈に振る舞っていたが、反動で泣き出してしまった。うぅ。


その後心配になってきたのだろう。神宮寺さんと美雨さんが来た。


2人に気づかれないよう。涙を拭った。


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