第16話心の訴え
瑠璃。後ろから声を掛けて来たのは葉山だった。
俺は天国から一気に、現実へと押し戻された気分だ。
美雨さんこんにちは。
月宮は笑顔で挨拶した。
こんにちは。
瑠璃探したよ。図書館にいたんだね。
と葉山は言った。
あれ?
俺には挨拶なしか。別に良いが、このタイミングで来るのか。
このおじゃま虫め、と思った事をすぐに教師の癖にと自分を諌めた。
俺は、葉山を月宮から離れさす方法を思案した。
そうだ、アレがあった。ドローンを教えて、操縦させている間に、月宮と話せば良い。
我ながら良い作戦だ。
何読んでるのー。と葉山が月宮に言った。
この小説ねー。月宮がそう返答した。
どうやら2人だけの世界に入ってしまった。俺はどうしようかと思案した。
今回は退散するとするか。この場ではそれがいいだろう。
ちょっと用事を思い出した。2人ともまたな。
彼女達に遠慮して言った。
はい先生また。葉山が俺を見ずに言った。
月宮が先生また、話しましょう。と言ってくれた。
俺はふと思い出し、学術書を借りると月宮に言っていたことを思い出した。
図書室は、他にもまばらに生徒がいた。その1人はメガネをかけた女子で、かなり真面目そうな雰囲気を出していた。
何を読んでいるのか気になったが、あまり生徒をジロジロ見たくなかったので、素通りした。
学術書を借り、俺は1人寂しく職員室のドア付近まで行ったところに人影に気づいた。
その時後ろから声をかけて来た生徒がいた。
神宮寺だった。
鎌田先生こんにちは。
おお神宮寺、こんにちは。しかし、彼女は何故か覇気があまり無さそうなのが気になった。
なんか元気なさそうだな。何か嫌なことでもあったか?
さすが先生まぁね。色々あるよ。含みを持たせた言い方だった。
なんだ?
先生に相談してみろ。
じゃあ、神宮寺が辺りを見回す。
スマホで色々話しよう。と彼女が小さめな声で言った。
そうか。誰かに聞かれたくない事か?
ううん、先生といっぱい話したいだけ。
ごめんね。先生も忙しいだろうから。
あと演劇部には、入らないと思う。本当ごめんね。
あぁそれを聞いて俺は思わずがっかりしてしまった。
しかしそれを表に出さないように、務めた。
それは仕方ない。色々考えて答え出したんだろう。
親に反対されたとか?
ううん、神宮寺は首を横に振った。
そうじゃないんだけど、色々ねー、人間関係面倒くさそうじゃん。
帰宅部が私には似合ってるよ。
そう言っていたが、何か神宮寺は、泣きそうだった。
じゃまた先生。神宮寺は俺にウインクして立ち去った。
絶対何かあった。神宮寺の目がそう、俺に語りかけてくるようだった。
考えたら、人間関係が面倒くさい、果たして本当にそうなのか?
神宮寺だったら人間関係の何が面倒くさいか、俺に上手く説明するはずでは?
彼女は、明らかに様子がおかしい。
いつもは明るい、笑顔の眩しい生徒だ。
そのうち俺に相談するはずと信じて待つべきか? と俺は深く考えた。
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