第8話元凶

しかもだ。

何故かあいつ、鬼塚美月は、うちの演劇部に入っている。


もしかしたら演劇部の他の女子生徒に手を出すなよと、警告しに来たのかも知れない。


それは良いことの様にも思えてきた。それは演劇部の女子生徒に対する思いやりの様なものだからだ。


しかし彼女が本当にその思いやりで言ったのかは、疑いが残る。

それは鬼塚の性格がその様な優しい人間ではない事を知っているからだ。


自分の事にしか興味が無い、普段の生活態度が示していた。彼女の担任からも手を焼いていると愚痴られるほどに。


良く良く考えると月宮にアイツがいる演劇部に入れるのは、危険すぎるな。


何故そのことが思いつかなかったのか。月宮の様な真面目で繊細な子には、危険すぎる。  


もちろん追い出したい気持ちはあるが、かと言って、下手な事したら、アイツのモンスターペアレントが襲って来るかも。


それに演劇部では、ちゃんと真面目にやっている。その辺も考慮してやらないとな。


演劇部の他のメンバーに、嫌われているという事はない様だし。演劇部には仲間意識があるのか?



打算的に考えるとむしろ俺が演劇部辞めて、月宮と同じ部活に。今のところ月宮は、帰宅部だ。


そんな事は許されないだろうが、学校に上手く言って丸め込むのは不可能ではない。



昔帰宅部など許されてなかったらしい。


が今は許される時代だ。


確かに生徒が1番気楽そうだ。


そりゃそうだ。人間関係で疲れるものな。特に今の時代わざわざ直接会わなくても連絡取れるものな。


SNSもあるし、それだけでお腹いっぱい。そんなとこだろう。


学校も最近はその辺を配慮して、帰宅部を許してくれるようになったのだろうか?


それとも生徒達の声に押されてだろうか?


どちらにせよ、時代の変化に合わせて変えてゆくのは良い事だ。



よう先生。俺の後ろからそう声をかけて来たのは、元凶だ。廊下で鬼塚と話し終わりすぐに話しかけてきた。

石黒龍之介、諸悪の根源みたいな奴。


ここが女子校だったら最高だったのに。


俺はここが共学じゃないなら、やり易かったのにと、愚痴った。


別に女子ばかりだから天国などと言うのは幻想だ。女子校も問題はあるだろう。


その問題は俺は知っている。女子の陰口の恐ろしさ。有る事無い事いいふらす。


だがそれでも男子ほどの暴力性はない。


そう石黒は暴力装置。誰もがこいつに逆らえない。

石黒に暴力振るわれたら、警察に突き出せば良いといつも思っている。


だが通報しなそうな奴をターゲットにしているのか?

学校は大変だろうが、生徒の身より学校の方が大切なのだろうか?


そんな訳ないはずだが。


俺はおう、石黒なにかようか?

と少し間を開けて挨拶を返した。


先生さ、鬼塚とあんま馴れ馴れしくすんなよな。石黒が諭す様に言った。


石黒は、とにかく手がつけられない奴だ。しかし最近は、前より大人しくなっていると他の教師が言っていた。


何か心境の変化でもあったのだろうか?


こいつは鬼塚と付き合っている。まさにお似合いのカップルと思っている。


それは性格が共にすぐカッとなりやすいからだ。他にも様々な性格の一致がある。


だがそれは長期的に見れば、お互いが悪影響を与えあっているとも感じる。


2人が付き合い始めたのは、小学生の高学年の時らしい。


色々と話は周りから聞いているが、特段興味もないので、深くは知らない。


だが石黒は、鬼塚の事を飽きてきて、そろそろ別れたいとも噂で聞いた。


それなのに俺に鬼塚関連で絡んできたのは一体?

やはり噂は所詮噂ということか。















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