第7話ポリシー

こいつの言う事も、間違っていないからムカつく。俺は返事に窮していた。

そうしばらく何も言えなかったのだ。



ははっやばいね、鎌田先生。彼女は、腹を抱えながら笑っていた。

その様はまるで教師と生徒の立場が逆転したかの錯覚すら覚える。



くっそ月宮もあまり呼ばない俺の名前を。


俺はそろそろ反論するきっかけを探していた。


別に先生が生徒好きになるのは、ある意味仕方ないだろう。


反論になってるとも思えなかったが、苦し紛れに言った。



そりゃ高校生相手ならね。中学生にちょ、待てよって感じよ。

まぁ高校生相手でもヤバイ奴だけど。彼女が言った。その時鼻で笑った様に感じた。

だが目は笑っていなかった。



それは、全くその通りだ。こいつの言う事は、一つも間違っていないから、反論のしようがそもそもなかった。


でそれを言いに来たのか?

俺は少し睨む様に言った。


別に。ただ変な気起こされたら怖いじゃん?


月宮の次は私だったり?

あー怖っ。そう言って腕を組んで、俺から一歩引いた。


それはまさにわざとらしい様に見えたが、本当に怖がってる様にも感じた。


ふざけるな。俺は絶対にお前には手を出さない。


そんな考え自体全く無い。自惚れるなと少し感情的に心の中で言った。




そもそも月宮に手を出していないしな。



そうだ。まだ手を出していないんだ。いや、手を出すとか、出さないとか言う話ではなかった。


そもそも生徒にそんな真似はしない。


まったくなんでこんな奴と話しなんかしなきゃいけない。


もちろん教師だから、ちゃんと話さないのは俺のポリシーに違反する。と自分に言い聞かせる。


とは言え俺も人間なんだ。恋だってする。


それが中学生だったってだけの話で。


それにしてもまだいやがる。早くあっち行けって。もちろん頭で言うだけ。


月宮は逆にすぐ立ち去る。好きな生徒に、すぐ立ち去られ、嫌いな生徒はずっといる。


安心しろ。それは絶対にない。と語気を強めて言った。


まだ何かようが?

と鬼塚に言った。


話があるなら、聞いてやろう。だがないならもういいだろ?

と心の中で言った。


いや用はない。言いたい事はそんだけ、じゃあ。彼女は、そう言って去っていこうとした。


だが俺はここで鬼塚の態度の悪さが気になった。


鬼塚お前の言うことも一理あるけど、その態度はないだろう?

いくら正しい事を言っても、言い方というものがある。俺は我慢出来ずに言った。


だから何?

一理あるんでしょ? 

なら態度とか言い方とか別によくない?


俺が言いたいのは、正しい事でも言い方や態度が悪かったら、人に伝わらず反感持たれるって事だ。


まぁこいつに言ったところで通じないだろうが。それに無理したら母親が出てくる。


何?

今度は説教で誤魔化そうとしてるんじゃない?


中々本当に鋭いとこ突くな。と思った。

しかし俺は集中して頭を回転させるように、思案した。


説教じゃない、お前と話し合ってるんだ。

実際俺が言った事何か間違ってるところあるか?

先生が言った事に何か間違ってるところあるなら聞こう。


彼女は舌打ちをした。面倒くさいというような態度に見えた。


鬼塚は深呼吸をした。言い返してやりたいけど、だるい。今日はもういい。じゃあね。

と言い去って行った。


やっとこいつはいなくなった。と少し胸を撫で下ろした。


しかし彼女が去ったあと、話していたことを思い出す様に思考の闇に入り込んだ。


好きな生徒、嫌いな生徒か。ポリシーに反している。


しかしそれは、心の奥底に眠る人間としてのエゴかもしれない。


そうエゴと言う言葉が思い浮かんだのは、自分中心の考えからきている。


果たして自分だけだろうか?

他の教師もそれが間違いと認めながらも、何処がで認めている部分があるに違いない。



しかし現実は残酷だ。そのポリシーなどかなぐり捨てるぐらい無常だ。と感情が昂るのを感じた。


一部は長時間労働のせいかな。余裕を持てる時間すらも奪う。


多くの教師がぶち当たる親との衝突や、長時間労働。これが現実は無常と思わせてくれる。


俺は溜息をつき、横を向くと教室にあるパソコンがちらっと目についた。


そしてそれがたまに自分が夢想する事がある。


こうすれば教師の負担が減るのではと考えたりする。


仕事が大変ですね。と教師と2人で飲みに行った時に話し合っていた時に思いついた考えだ。


そうだなと相槌を打ったが、何も考えないのも癪だったので、良い考えないかなと、思いついた案だ。


例えば授業だが超一流の教師の動画使ったりだ。

45分ぐらい教師が普段教えるが、これを動画で25分流す。そうすれば先生も楽だ。


まぁ全部授業その動画でも良いんだ。そうすると教師がいらなくなるな。

それは自分の首を絞める事になる。


だけど全てそれにしようとすると駄目だ。やはり対面式も残して生徒と親の選択制でも良い。


オンライン授業と対面式の両立そしてAIの活用、効率が上がった時間を、生徒達の法律の議論の時間を作ったり、本の内容について話し合ったり、擬似的な買い物ツアーとか。


まぁこんな夢想を考えてる。

机上の空論という奴だ。


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