第4話ドローン

そうか。葉山早く霧で隠れる山の様に消えてくれ。と俺は心の中で、心底願った。


さっきまでの深い考えが、目の前の葉山を見て消えた。


それは哲学を語っていた人間が、現実を見た時ふと我に帰るようだった。



教室の廊下で佇む3人。あんまり廊下走るなよと他の教師の声が飛ぶ。


すみませんと謝る生徒の光景は、良くある一連の流れに思えた。


鎌田先生も走ってましたよと、言われるのではないかと、内心ヒヤッとした。


俺は月宮と2人きりで喋りたいんだ。と葉山には言えないな。あくまで心で思うだけ。



なぁ月宮、月宮は趣味とかないのか?

俺は月宮の趣味を知りたい。自然な風に言えたか?とちょっと心配になった。


趣味ですか?そうですね。小説を読むのが大好きです。


そうか俺のことが大好きっていってるのかと思ったら小説か。


と心の中で、願望と現実が織り混ざり、あたかもそれが、聞き間違いであるかのように呟いた。


そうかそうか。月宮良く本読んでるもんな。

やっぱり読書してるから月宮は、頭も良いんだな。


先生ありがとうございます。褒めて頂いて。


月宮俺は本当に思ったから言ったんだ。俺はちょっと照れながら言った。



ねぇ先生の趣味は何?葉山が割って入る様に聞いた。俺が言った台詞の月宮の反応見たかったのに、このタイミングで言うかと心で葉山を責めた。


葉山は俺に興味ないだろう。お互いに興味がない。


それでも気を遣って言ってくれたのか。そう考えを改めた。その葉山の優しさが少し嬉しかった。


まぁ悪くない質問だ。だがそれは、月宮に聞いて欲しかったんだが、仕方ない。


俺か?趣味はドローン飛ばしだな。

リモコンやスマホで操作出来るんだ。

葉山に答える様に言った。


先生面白い趣味してますねー。


そうかな。面白い趣味かー俺は気のなさそうに、答えた。


何故ドローンが趣味かと言ったら、やはりロボットを操る感覚がいいのだ。


ロボットを操り悪い奴を倒す、そう言うのに憧れていたからかもしれない。


もちろんほとんどのロボットアニメは、悪い奴と戦っているはずだが、その悪は果たして本当に悪なのだろうか?


そう言った、複雑さにハマっていたな。今はドローンが趣味だが、更に未来は、凄いのが出てくるだろう。


そしたらそちらに移行する。永遠の趣味ではないだろう。


今ドローンもドローンショーっていってな、花火大会でも使われるんだぞ。と俺は葉山に言った。


夜空を彩って凄い綺麗なんだ。しかもアニメキャラクターを描いてて、それがまたすごい可愛いんだ。そう熱を込めて言った。



そうなんですね!

先生私にもドローン飛ばすやり方教えて下さいよ。葉山が甘える様に言った。



そうだな。良い事を思いついた。葉山に教えて、月宮も興味持ったら月宮にも教えられるのでは。


良し、葉山言ってくれればいつでも教えるぞ。


俺はやましい気持ちも少しあったが、せいぜい利用させてもらうぞ。と頭の中で呟いた。


ただ人にドローンを教えるのは、結局自分に返ってくる。


やはり人に教える事で気付かされる事や、記憶に残りやすい。


自分が過去に勉強していた時のことを振り返ると、人によく教えていた。


利用させてもらうと言っても葉山にも趣味を楽しんでもらえたら、やはりそれは嬉しい。


生徒に教える教師という仕事の醍醐味かもしれない。


多くの先生は、人に教えるのが好きで、又生徒の成長が楽しみだから目指してなった。


そう思うと素晴らしい事だ。そしてその教えられた生徒から、また新たに教師になる人物が出てくる。


まるでリレーの様に。

そう例えるなら、憧れの先生からのバトンが生徒に渡り、その生徒が又バトンを渡す役になる。


自分もそうで有りたいと願うが、そこまでの器ではないと自覚している。


ただドローンを教えるのが、月宮ならなおのことよかった。と結局彼女の事を思ってしまう、情け無いと思った。


その事がやはり器量の小さいと思うところだ。








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