第2話始まりの鐘
キンコーンカーンコーン
学校の始まりのチャイムが鳴る。新しい1日の始まりだ。朝の光が学校を照らす。
ここはとある中学校だ。
生徒達が教室に入って行く皆席に座って授業が始まる。その中でもちろんその日に事情があり授業を休む生徒もいる。
そしてその授業時間の感覚は生徒によるところがある。
長いと感じる生徒短いと感じる生徒。楽しいければ短くなるかとそう単純でもない。
その中で学校の時計を眺め早く終わらないかなと、1人の教師が考えていた。
キンコーンカンコーン
夕焼けが窓を照らし、授業の終わりの鐘が鳴った。教室のドアが開き、友達と話す生徒や、部活に向かう生徒達であふれていた。
月宮ー!俺はその賑やかな中、廊下で彼女を呼び止めた。
突然だったので彼女は戸惑っていた。
先生どうしたんでしょうか?
走って来た俺は少し息を切らしていた。
しかし廊下を走るなんて、他の教師に怒られるな。
それに生徒に注意したら、先生も走ってましたよね?
と、ドヤ顔で言われそうだ。
いやでも少しだけだ。長い距離じゃないからセーフだろう。
もっとも俺は廊下を走るなと注意した事はないが。
何故廊下を走ってはいけないのか、それは人にぶつかって怪我をさせたりするからだ。
実際それで事故が起きているのだろう。
そう思うとやはり廊下を走るのは、良くなかったと自分を責めた。
いや月宮に聞きたいことがあって。
月宮瑠璃、この中学校1の美少女だ。俺はこの生徒を、是非うちの演劇部に入れたい。
彼女との出会いは入学式の日、彼女の存在感は一際際立っていた。彼女の笑顔や仕草に胸が高まった。
それからしばらくたち、俺が彼女の担任になった。月宮の学ぶ姿勢、知的で、謙虚さを持った彼女にますます惹かれていった。
ある日図書室で彼女を何度か見かけ、小説を読んでいた彼女は、時に笑顔で、時に涙を流していた。
その感受性豊かな彼女を、演劇部に入れ、将来人々を魅了するような存在になって欲しいと、心から願った。
もちろん彼女がやる気が有れば…の話だが。そう押し付けるのは良くないからな。
先生聞きたい事ってなんでしょうか?
走ってらして、急ぎの用事ですか?
ああ実はな…ちょっと緊張するな。
そう彼女はモテて仕方ない。なので緊張もするだろう。
がそれは最初だけのようだ。何故なら月宮は、自分からは、決して男に声を掛けない。
もちろん用がある時は別だ。
だから男子どもは離れていくのだろう。しかしそれは男子の注目を得ている事は間違いない。
緊張ですか?
それほど重要な事なんでしょうか?
心配そうに彼女が聞いて来た。
いや悪い出来事があったとかそういう事じゃないんだ。と彼女の不安を消すように言った。
そう俺には大事な様も無くても話しかけて来るのだ。
そう間違いなく月宮は俺の事を愛しているに違いない。
そう思うのは、彼女の日頃の接し方で確信したのだ。
俺は教師と言う立場上卒業後まで、結婚は月宮に待ってもらうしか無い。
同い年で生まれていればと、不可能なことが頭の片隅にあった。
それほど彼女への想いは、深刻なまでに深い。
だが教師としては、最低だと自覚している。その苦悩が、心苦しい。
先生どうしたのですか?
月宮が、人差し指を顔につけて尋ねた。
ああ仕草までが愛らしい。俺は心からそう思った。
月宮は、目指せば将来、女優かアイドルになれるぞ。
興味ないか?
もし興味あったら演劇部に入ってくれ。
すみません。私そう言うのには、今興味持てなくて。
彼女は申し訳なさそうに、平謝りをした。
なるほどな。やはり本物の美少女は、そう言うものは目指さ無いのだろうな。と俺は思った。
良くネットで見かける本当か嘘か分からない話だ。
それは、大学のミスコンで、可愛い子はミスコンに参加しない。
とか言う話に基づいての事かもしれない。そう俺は思った。
しかし芸能事務所は、スカウトするだろうし、そもそも若い頃にスカウトされているのかもしれない。
ならその話は眉唾ものかもな。と1人で納得したりしていた。
なら声優とかは?
月宮のような綺麗な声を持った子は、声優としても成功するかもしれない。声優も演技が必要な事だと俺は思う。どうだろう?
俺は臆せずに聞いた。
先生ありがとうございます。
そうですね。声優なら少し興味あります。
確かに月宮は、声が可愛い。確か小説とアニメが好きだと聞いたことがある。
それで声優に少し興味があるのかも知れないな。と俺は勝手に予想して聞いた。
声優か、今声優業界は、かなり競争が激しいらしい。多くの人が挑戦しているが、成功しているのは、ごく一部。
もちろん素晴らしい夢だ。月宮が、もし目指すなら教師としてしっかりと応援してやりたい。
だがその一方で、成功した声優は、ネットでかなり叩かれているとも聞くな。
少しの粗があればよってたかって色々言われる。
まぁそれは、俺が月宮になって欲しい女優やアイドルも変わらないか。
それでも、成功する事自体は悪いことではない。
本当か!
なら是非うちの演劇部に入ってくれ。俺は熱意を込めて言った。
色々と演技を教えてやれる。力になれるぞ。
仲良くなりたい邪な気持ちもあったが、彼女の将来性の高さから、
俺は力強く言った。
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