第4話 助けます!

あれから私は街道を走り続けた。

その後もスライムは時々出て来たけど、一番最初のように30体以上にもなるような集団じゃなくて、あくまでも2~3体程度の数だった。


勿論、油断はしなかったけど、短剣ですれ違いざまに切り抜けてそのまま走り去った。

止まる必要が無いならそのまま行っちゃってもいいよね?


そうして間にある休憩所を通り過ぎながら移動した。

通り過ぎるときに休憩所に居る人が騒いでいる様子だったけど、ほんの3~4秒で見えなくなっちゃうから聞こえないんだよね~


ラジャリウスまでの道のりの中で休憩所は2か所存在している。

大体3日ほど移動に時間を要するために、2か所用意されているともいえるわけだ。

でも、私の足なら1日かかるかどうかなんだよね~


そうおもって2か所目を通過して30分くらい走った頃合いだろうか、前方で荷馬車とその周りに数人の護衛の人陰らしき人達。

そして魔物・・・ウルフが10体ほどいる。

いや・・・そのうち1体はハンターウルフだ。


もともとウルフはかなり素早い魔物だ。

その中でもウルフの上位個体、ハンターウルフは厄介なことに力もあり、一度取りつかれると普通の人間では抜け出すのは、ほぼ不可能といって良い存在だ。


どうするか・・・今の私はあくまでもスライムを倒せる程度の存在だ。

ウルフ、しかも10体近くもいる集団を相手にするのは難しいのではないか?

だけど、ラジャリウスへ行くためには結局あそこを通らなくちゃいけない。


そうなるとあの人たちに加勢してウルフを討伐したほうが、あの人たちの為にも、私自身の為にもなるよね?



答えを出した私は、今まで温存のために一定ペースで走ってた力を一気に引き上げた!

スライムを倒した時だって思いのほか遅かったから、別にスピードを格段に上げる必要はなかった。

だけど相手はウルフだ。スライムと違ってスピードのある魔物。


油断すれば私はここで死ぬ!

そうして護衛の人を襲おうと飛び掛かっていたウルフに一気に肉薄し短剣を首のあたりに突き刺す!


『ギャン!!!』

「っ!!! 君は!?」

「話はあとです!お手伝いいたします!」


そうしていきなりの乱入者に護衛も魔物も一瞬気が抜けてしまったようだ。


ならばこの機会に一気に減らせるだけ減らす!

私は続いて2番目に近い位置にいる、しかし2体並んでいるウルフに一気に駆け寄った。

その後ろにも3体並んでいるウルフがいる。

そして間をすり抜けながら続けざまに4体をの首のあたりを、目いっぱい切り付けて抜ける。


まだウルフたちは態勢を立て直してない!

ならば!


体を勢いよく右方向に反転させるようにして回転させて再び2体並んでいるウルフに肉薄し首のあたりを切りつける!



と・・・ここで流石にウルフたちは態勢を立て直し始めた。

しかし、もう遅い!

すでに最初の1体も含めて7体のウルフを倒した。

残りはウルフ3体とハンターウルフ1体だ。


むしろウルフはハンターウルフを守るかのような陣形を取っている。

この状態でさっきみたいに間をすり抜けながらの攻撃は危険だ。


ならば・・・まずは左端にいるウルフを倒す!

一気にウルフへと肉薄し動き出す猶予すら与えずに首を刺す!

これで取り巻きは残り2体。

ここで隣にいたウルフが噛みつこうと飛び掛かってくるけど・・・


あれ・・あれれ・・・・?

何か遅いんですけど?


いやいや、たぶん私が倒しすぎたから恐怖で動きが鈍ってるだけだよね?

なんにしてもこれはチャンスだ!


ウルフの噛み付きをしっかりと、しかし最小限で交わしながらすれ違いざまに首を切る。

そうなれば取り巻きは、後1体だ!

一気に畳みかけるよ!

そのまま全力で駆け出してウルフの最後の1体の首に短剣を刺す。


そのまま少し駆け抜けハンターウルフとの距離を稼ぐ。

問題はこのハンターウルフだ。

ウルフと同様に素早さがあり、それ以上に力が強い。

それに見た感じ皮も少しばかり堅そうだ。


ならばまずは倒すことよりも弱らせる!

一気に距離を詰め飛び掛かってくるハンターウルフ。


ん・・・?

やっぱり遅いな~・・これなら慎重になる必要なかったかな?

いやいやいや、私はあくまでも運搬が得意なのであって冒険者じゃないんだよ?

なら慎重に慎重を重ねても足りないくらいなんだよ!


まずは左に避けながら、すれ違いざまに右後ろ脚を切りつける!

「ギャン!!」

一度少しだけ駆け抜けて、体を勢いよく反転させる。


敵はまだ振り返れてない。

再び一気に距離をつめて、同じように左に抜ける。

すれ違いざまに今度は反対の左後ろ脚を切りつけてそのまま抜ける。


「グルアァァァ!!!」


痛みのあまりか吠えている。

距離をとり再び反転。


しっかりと様子を見極めようとすると後ろ脚を両方とも怪我してるからか最早立ち上がることすらも、ままならない様だ。


ならば、ここが止めを刺す好機!!!

今までの戦闘でもかなり力を引き上げていたが、この機会を逃すわけには行かない!


私は、今の私が出せるスピードの限界の力を振り絞り一気にゼロ距離へと入り込む。

そしてそのままハンターウルフの首へと短剣を突き立てる!


敵は一切身動きすら取らずそのまま倒れた。

よし!これで敵は全滅したよ!





そうしてため息をつきながら、ゆっくりと振り返ると口を大きく開けた商人っぽい人と、護衛っぽいひとがそこには居た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る