第3話 巣立ちます!
12歳になった。
この世界では一般的には18歳が成人とされている。
そのため12歳から18歳まではそれぞれの分野に長けた学校に通うのが一般的だ。
とはいえそれはそこそこの街ならではの話。
私みたいな辺境の村出身の子供は働くための準備として低い賃金で住み込み形式で研修も兼ねる形で仕事に従事するのも一般的な話だ。
私も本来であればそういう形をするはずだったのだが、私の未来は10歳の段階でいい方向?と思われる形で狂った。
それから2年間、地道に貯金を続けた私は辺境の村:パーネストから一番近い街、
ラジャリウスに移住することにした。
その際、アギャルド商会が保証人となってくれるという紹介状を預かったうえでだ。
この保証人というのは、私が住む場所の家賃を払えなくなった時にアギャルド商会が、一時的に立て替えてくれるという物だ。
当然だが建て替えである以上、それが発生したら私には返済義務が生じる。
もう一つはアギャルド商会として、今まで私が従事してきた仕事の内容について事実であり、その分野に関しては、比較的即戦力に近い形で雇用ができるだろう・・・という一種の信用書だ。
つまり、これはアギャルド商会から、ラジャリウスの街にある商人ギルドへの紹介状でもあるのだ。
私は大事にその紹介状をアイテムボックスにしまった。
「それじゃあアギャルドさん。今までお世話になりました。また機会がありましたらよろしくお願いします」
「ええ、しっかり頑張るのですよ。貴方なら努力すれば成功できるでしょうからね。慢心はダメですよ?」
「はい!それでは行ってきます!」
「ちょっとだけ待ちなさい!その格好で行くつもりですか?」
駆け出そうとしたところ止められてしまう。
「そうですけど、何か問題でもありますか?」
「大ありです!!!」
え?そうなの?
「いいですか?ここから近い街に行くし、街道を通るとは言えども魔物が出ないわけでは無いのですよ?街中を走るだけの服装で出て行っては死ぬ可能性だってあるんですよ???」
うう・・・言われてみれば確かにそうだ。
初めから失敗するなんて・・・
「すいませんでした。ちょっと武器屋に行ってから出発します」
「全くそそっかしい子ですね。でも初めてあなたが来たときを思い出します・・・」
うっ・・・その件は黒歴史として葬ったので思い出させないで・・
「これを持っていきなさい」
革製の鞘がついた短剣を出される。
「旅立ちのお祝いです。ある程度の護身にはなるでしょう。ただしあくまでも護身ですからね?間違っても積極的に戦わないようにしなさい」
「ありがとうございます!またいつか、必ず戻ってきますね!」
そして礼を言って出ようとするとアギャルドさんは微笑んでくれた。
いい人に出会えてよかった。
両親もこの街に残るし、次にこの街に戻ってきたら必ずアギャルドさんにも顔を見せよう。
パーネストからラジャリウスへは一般的には馬車などを使えば3日間はかかると言われている。
しかしそれは馬車を使ってゆっくりと移動すればの話だ。
私には日々の配達で鍛え上げた素早さと持久力と筋力上昇、そして動体視力向上がある。
当初は素早さと持久力のみだったステータスも、筋力上昇によって一歩あたりの地面を蹴る強さが上がったのだ。
動体視力向上は移動中の地面に障害物が無いかを、気にしていたら身に着いたステータスだ。
アイテムボックスに収納できるため、荷物は守られるとは言え、私自身の体は無傷とはいかない。
そうなると怪我すれば私は仕事ができなくなる可能性があるため、そのあたりには注意を払った。
そうして私は街道を走る
「♪~~~~~、♪~~~、♪~~~~~~」
なんとなく鼻歌を小さく歌いながら走った。
そうして1時間くらい走ったところで出くわしてしまった。
スライムの集団だ。
本来であれば逃げるべきだろう。
しかしスライムは20体以上の集団でいる状態だ。
あれでは逃げようにも方々を塞がれて逃げられない。
アギャルドさんは戦うのではなく、護身のためだと言っていたけど、たぶんこれは避けられない戦いだろう。
スライムたちもこっちに気づいているのか逃げ道を塞ぐように一斉に向かってくる。
短剣を抜きながら私も駆ける。
スライムが飛び掛かってくるが・・・
あれ?なんか遅くない・・・?
飛び掛かってきたスライムを余裕で避けながら、すれ違いざまに短剣でスライムを切る。
もしかして私が一人だから油断して手加減したのかな?
だからと言って私は手加減しないけどね?
恨むなら自分の傲慢さを恨んでね。
続けて3体飛び掛かってきた。
あれ・・・やっぱり遅い。
それにこのスピードなら私は短剣を6回くらい振れそうだ。
そんなことを思いながら短剣を振る。
3体のスライムは、3振りの攻撃で倒された。
そのあともスライムは攻撃してきたけど、やっぱり遅い気がする。
余裕で対応できる。
でも、油断したら死んじゃうもんね。
最後まで気を抜かないで戦った。
結果かすり傷一つ着くことなくスライムを全滅させた。
もしかして私って強い!?
いやいや・・・あくまでも最弱の魔物スライムなんだよ?
数は多くてもそんなのを倒したところで調子に乗ったらこの先死んじゃうんじゃない!?
そう思いなおして私は駆け出した・・・
さっき戦闘をしたから少し遅れが生じたはずだ。
少しペースを上げて遅れを取り戻さなきゃね!
そうして私は再び街道を駆け抜け始めた。
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