第2話 走ります!
10歳になった。
私の家はしがない飲食店を経営している店だ。
家の家事程度であれば今の私でも手伝ってはいるが、あくまでもその程度。
商売としてやっていくうえでの料理の腕前は、私には無い。
少なくとも今は無理だ。
でも親の影響力にすがって生きている男の子たちを見返したい私は仕事を探した。
発展した街に行けば商人ギルドなるものがあるらしいが、こんな辺境の街には厳密には存在しない。
かわりに一番近くの街にある商人ギルドから認可を受けた商会が代理で商人ギルドのようなことをやってくれている。
とはいえギルドへの登録は12歳からだ。
10歳の私はまだ登録はできない。
しかし、ここで嬉しい誤算が発生した。
アイテムボックスはこの世界では希少なスキルだ。
容量などに制限はあるものの、各段荷馬車とかを使わなくても物資を持ち運びできるこのスキルは商人からは重宝されていた。
しかし私には商人自体の才は無い。
とはいえ運搬自体はできるわけだ。
その際を無にするのはもったいないとのことで、私は街の郵便配達を行うことになった。
郵便と言っても小は手紙、大はタンスくらいの大きさの運搬だ。
そしてもう一つ嬉しい誤算があった。
それは私の素早さと持久力のステータスは10歳の女の子にしては高い分類にあったのだ。
理由は言われるまでもなく近所の悪ガキ集団に追い回されてたから。
逃げる・・・というのは走るという事だ。
走りというのは基本的に速さ、つまり素早さと、
どれだけ長く走れるか、すなわち持久力が問われる。
だから、あの悪ガキにひたすら追い回された私は10歳の女の子にしては高い素早さと持久力の素養があったのだ。
対してあの悪ガキどもはグループを組んで回り込んだりしながら追いかけまわしていたため、個々として私なみに素早さと持久力が向上することは無いはずだ。
とにかく私のスキルと素養は何か物を運ぶのに適していた。
「おう、アンネちゃん。今日も頑張ってるねー!」
「はい!頑張ります」
そう言って声をかけてきたのは商会から1時間くらいの場所に住んでいるおじさんだ。
今回はこのおじさんにタンスを届けに来た。
「アンネちゃんがアイテムボックス持ちで助かるよ。普通ならこれほどの物を持ってきてもらうとなると金も時間も必要だからな。金はそのままだが時間が短縮されるのはありがてえ。街の連中も言ってるぜ」
「そうなんですね?」
「知らんのか?」
「私は日々を努力するだけですから」
「いい娘や・・・」
いや、おじさん。私あなたの娘じゃないんですけど?
「あの・・・配達完了にサインしてもらってもいいですか?」
「おっと、いけねぇ。悪かったな・・・・・・これでいいかな?」
「はい。毎度ありがとうございます!またのご利用をお待ちしております!」
この言葉は商会の人に教えてもらった言葉だ。
商会で仕事を斡旋してもらうにあたり、商会の名前を使うという事はその商会の一員のようなもの。
私がぞんざいな態度をすればそれだけ商会に悪い印象を与えるので、商会の一員としてしっかりと接客も行うように指導されていた。
配達一つとってもお客さんが仕事を依頼するからこそ儲けられる。
自分の賃金に直結する問題であることをしっかり意識しなさい、と叩き込まれた。
配達を終えた私は商会に戻り、受け取り完了の証書を渡す。
依頼主は依頼料を仮払いし、受け取り完了のサインだけ未記入の証書を預かる。
商品が届いたら、仮払いしていた料金を商会が徴収することを了承するサインをもらい、商会はその証書を保管する。
そうすることで迅速さと商売の安全性を確保していた。
何か言われたらその証書を見せて筆跡鑑定という物をやらせて証明するのだそうだ。
そうして私は日々の配達業務を一生懸命にやり続けた。
最初は得た賃金は家にいれようと思っていたが、両親からは断られた。
「あなたが働いて得たお金なんだからあなたが使いなさい」と。
普段の食費の足しにしてもらおうかと考えていることも伝えてみたりしたが、
「親が子供を養うのは当たり前のことだから、子供の年齢のうちはそんなこと気にするべきではない」
と言われてしまった私は、素直に引き下がるしかなかった。
それに小さな子供に、自身の食費を賄わせる飲食店経営者の夫婦というのはいくらなんでも外聞が悪い。
店を経営する以上、イメージや評判は大事だ。
そのあたりは、商会で仕事を斡旋してもらう身として、しっかり勉強させてもらっていた為、疑問や反抗心を感じることもなくすんなりと受け取ることができた。
受け入れるかどうかは別としてだけどね?
頭では理解しているけれど、感情面では納得してないって言えばわかるかな?
どちらにしてもこのお金をどうしようかと考えた私は貯金することにした。
確か12歳から商人ギルドへの登録ができる。
それまでにある程度独り立ちのお金をためて、ギルドに登録して、そこその街で仕事をしていけば収益も増えるだろう。
そうして私は将来のことを少し考えながら地道にお金をためていくのであった。
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