3.『黄昏時の宝物(ブライダル・タイム)』

――――焼けつくような黄金の空を、始まりと見るか、終わりと見るか。

きっと、この黄昏時に意味を見出した人々は何時までも二つの意味を問い続けて欲しいのかもしれない。

終わらない問いかけは、答えの無い問題は、永劫に語り継がれ、考えられ続けることになるのだろうから。




都市の道を、背中に浴びる夕焼けを振り返ることなく駆けぬけていく。

金色の髪が背負った陽射しで煌く様を、誰もが振り返る……なんてこともなく。

アデルはただ、目的の場所――オリオ・ヴァーレルが潜伏している区画までの道を進み続けていた。


資料に載せられていた内容を頭の中で反芻しながら、近くなっていく毎に人足のまばらになっていく周囲の風景を見回した。

ここから先については、カレイドスコープの管轄区域から少し外れた、この都市を囲う巨大な外壁の付近にある住宅区画に入っていくことになる。


こういう地域になってくると、それなりに理想郷の"陰の面"が見え隠れする。

……簡単な話、冒険者になるのに"魔邦資格"は必需ではない。

資格を持たず、自力で稼いだり、日銭をやりくりするのに苦労した都市外の人間たちが身を寄せる場所となってくる。

無論、資格を持っていればもっといい暮らしは出来るが、人によっては、それが叶わない事もある。

資格に適合しない人間、言ってみれば"素質"が無いだとか。

或いは管理局によって監視され続けるような生活を嫌ったか。

――そもそも、都市の外から不法に滞在している輩も少なくはない。

そういった集団は定期的に巡回している、カレイドスコープ直属の近衛騎士団『青の戒律』が摘発し、お縄に掛けているそうなのだが、その眼すら搔い潜る者たちは、理想郷という巨大な光によって生み出された陰の中を生き抜いている。


「……酷いな」


アデルは独り愚痴りながら、捕捉されている地域の近くまでやってきてようやく足を止めた。

古びた家屋の跡だとか、辛うじて崩れ落ちていないような荒ら家なんかが乱立している。

……何が、理想郷だと。その並び立つ物が作り出す乾いた風景を前にすると、問いかけたくもなる。

何にしても、こういった場所は身を隠すのには丁度良い、だからこそ魔印持ちの奴が集合していくもの、なのだろう。


「こンだけボロい街すら、壊さずにどうにかしろって言うのもふざけた話だ。……どうせ、直すという名目で解体するか、どかすか……」


――なんてぼやいていた時、視界に入った物から身を隠すように、咄嗟に傍らの家屋跡の残骸に入り込む。


……足音が一つ近づいてきていた。そっと顔だけ出して、現れるのを待っていると、それは間もなく視界に入った。




「……くそ、クソッ……あの餓鬼、クソ爺が……!あいつらは殺されて当然だ、俺は、何も間違っちゃ無ェ……!!」


誰かに話している様子ではない。明らかに、独りで何かをぶつぶつと呟いている。

褐色の頭髪に、獣の耳、獅子の遺伝子を持つ獣人の、毛束の分厚い尾。

襤褸を羽織って躰を隠しているが、隙間から見える装備品は、一般的な冒険者の物。

それが、『オリオ・ヴァーレル』の風貌だった。

歯軋りしながら腕を押さえているが、恐らくは魔印を焼きつけられたことで発生した痛みによる物だろう。


――魔邦資格刻印は、身体に一体化する形で刻まれるものだ。

資格刻印自体はただのタトゥーというわけではない、

この世界の空気中に漂う魔粒子と呼ばれる物質に適応した人間は、元来『魔力』を自在に操れるわけじゃない。

言ってみれば、呼吸する過程で取り込んだ魔粒子という物質から蓄積され、溜め込んだ魔力を、ただ魔力そのままの形として吐き出すことしか本来は出来ない。

蛇口に例えるなら、水を出す・止めるといった『弁』の役割を持つ能力がないのだ。

出してしまえば、そのまま魔力が枯れ果て、生命維持すらできなくなってしまうまで放出するっきりになってしまう。その魔力の『弁』を、外的に与えるのが魔邦資格刻印である。

だから、"魔邦資格刻印は人間の必需品でもない"。

魔力を使わなければ弊害はないし、剣や槍、弓といった道具だったり、鉄の弾丸を撃つ銃などで戦う資格刻印を持たない冒険者だって世の中には存在している。

その中では、『自壊爆発(デッドセル)』と呼ばれる、自身の魔力を故意に暴発させることで周囲一帯を自分諸共吹き飛ばす、いわば人間爆弾のようなことをする馬鹿もいるらしいが――そう言った輩は、そうなる前にカレイドスコープの眼に留まるわけだ。


『弁』によって自在に魔力を放出する量を変え、その色、形、温度、出力、ありとあらゆる機能を兼ね備えた魔邦資格刻印は、ならば破壊されたらどうなってしまうのか。


「……く、そ……が、ァ……!!」



――腕に刻印された魔印から立ち上る、魔粒子の光と、明滅し続ける資格刻印のタトゥー。

『体内の魔力を一定量、命に関わるレベルを下回ったまま放出し続ける』。

そして、その魔力の損失によってもたらされる身体機能の低下と、

放出される魔力からなるビーコン機能――これがカレイドスコープの指名手配の術だ。

昔は一発で刻印を完全に破壊していたらしい。だが、それにより離反者は即刻死刑とも取れる独裁的政治になりかねないと、何代か前のカレイドスコープ局長が是正した。

人道に反するレベルでの破壊ではなく、あくまで一時的な機能障害による行動の制限と魔邦資格を行使する能力の極端な低下。

そうなってしまえば、そもそもアデルが捕縛するまでもない、のだが……。



「……黒竜の鱗の弊害か?あれが……」



――漏れ出る魔力の色が、おかしい。

アデルの眼に留まったのは、オリオの抑えている魔印から立ち上る煙だ。

黒々した赤色。禍々しい色彩。本来の粒子の色とは大きくかけ離れたそれが、どれだけ異質なものか、見た目より空気で見て理解できる。



「ッ、誰だ!!」



オリオが叫びながら、抑えていた腕を向けてくる。

流石に、獣の部位を持つ人間――スロープスはとても、耳がいい。

物音を少しでも立てればこちらの位置がバレる。

すかさず、大筒『アガーテ』を背中から引き抜きながら飛び出すと共に、

その砲身をオリオへと向けた。



「動くな、オリオ・ヴァーレル。魔印持ちの落伍者が、わざわざここまで逃げてきた事は褒めてやるよ」

「テメェ……ハンターか!!」

「ヒュゥ。物知りじゃねェか、だから理解るよな?お前はここで、終わりだ」


下手に逃げられる前に先手を打つ。引き金を引いて、終わりだと思った。

――オリオの腕から迸る、黒い鱗のような電流を見ることになるまでは。



「なッ?!」

「俺、俺は……捕まらねえ!!テメーみてェに見下す野郎は!!カレイドスコープの狗共なンざにはなッ!!」



――腕から迸った黒い電流、異質な力を感じさせる光の鉾が、想像以上の鋭さを以てアデルを襲う。

その場から咄嗟に跳躍して別の物陰に隠れると、放たれた黒い電流が、先程までアデルのいた場所と、その近くにあった壁を抉り取るように炸裂させていた。


雷属性魔邦『ボルスト』系列。粒子を圧縮して発生させた電流で対象に向かって稲妻の鉾を撃ちだす魔邦。

下位資格ならば至近距離で対象を痺れさせる程度、中位で初めて遠距離の特性を持ち、上位まで極めれば魔物や人間に致命的なダメージを与えれるようになるが。

……凡庸な中位冒険者・魔邦遣いが振りかざす鉾にしては、その威力が高すぎる。

直撃すれば一撃で行動不能どころか、殺される。


「捕まらねえよ俺は!!この力で今まで俺を見下してきた奴等を!!目障りなバイズオーグの奴等も!!カレイドスコープのクソ野郎共だって!!ハハハハハハハッッ!!」


狂ったように腕を振り回し、周囲を無差別に黒い雷撃で狙い撃ちまくる。

黒い雷の鉾の弾幕を前に、物陰から物陰へ命がけで滑り込んでは銃口を向けるが、狙う暇もなく次の攻撃が訪れる。


「っちィ……ああクソ、もっと報酬せびるべきだったな……!!」


相手の攻撃射程が想像をはるかに上回っている。加えてこの密集地帯では、射線が通りづらく、狙いづらい。


「オラどうしたどうした!!さっきまでの威勢はよォ!!」

「うるせえな!!安心しろ!!テメーのドタマブチ抜いてやる準備中だ!!」

「っヒャッハハハハハ!!やってみろよ、このアバズレがァ!!」


次の狙いが定められる。次の遮蔽物は――近くにはない。

喰らえば一撃であの建物だった物体と同じ末路を迎えることになる。

それだけは御免被る。


――――そして、次の着弾を告げる、雷の裂帛と、破砕音が響き渡った。




*   *   *




「……ク、ッハハハハハハ!!何だよ、木っ端微塵かァ?!悪ィなアバズレ!!威力を絞ってやれる程器用じゃねえんだよォ!!」


――女の怒鳴り声が聞こえていた建物の壁を撃ち砕いたとき、そこには何も残っていなかった。砕け散った残骸と、黒い焦げ跡。

幾らか散っただろう金髪の毛が焦げて残っていた。

完全に殺した。オリオ・ヴァーレルは勝利を確信していた。


手から迸る黒い雷が、未だ次の対象を求めるように暴れている。

片腕で押さえ込みながら、力に酔いしれる。


そうだ。この力さえあれば転覆出来る。何もかも!

愚弄されてきた哀れな男は、全能感に浸りながら笑っている。






その頭が――――大空を舞うアデルからは、よく見えた。




「――良かったな、大馬鹿野郎」


「……あ、ァア?!」


光を纏った両足を真上に投げ出し、抱きかかえるように地面に向けた銃身。

落下しながら、銃口をオリオ・ヴァーレルに向けて、アデルは大筒の引き金を引いていた。



「魔弾――『アラートショット』」


――一瞬、アデルの身体は、放たれた光の弾丸の反動で空中に停止していた。

威力を空中で殺しきって、こちらを憎たらしく見上げているオリオと目が合ったから。


「ア、バズレェエエエエエエエエッッ!!」

「頭上注意だ、"クソッタレ"」



そして、着弾――――オリオの身体の輪郭は光に包まれたかと思えば、

遅れてやってくる『暴風』によって周囲の土を巻き上げながら見えなくなった。

光の弾丸に込められた『風』の魔邦。

着弾地点に高密度の竜巻を発生させる、本来ならば広範囲を薙ぎ払うように扱う魔邦を、単体目標に確実に撃ち込み、対象を"無力化"させる。


両足の光を失わず、アデルの身体は空から舞い降り、地面へと着地する。

高高度跳躍さえ可能とさせる身体強化の魔邦『ハイストレングスⅢ』。

黒い雷を撃ち込まれる刹那に発動し、上空へと逃げていた。

タイミングさえ合わされば、相手はこちらを消し飛ばしたと思うだろう。

……冷静な状態だったら、少なくともそれを間違えることはないだろうが。



……風の中心地点に居たオリオ・ヴァーデルは、顔を引き攣らせたまま仰向けに倒れていた。

迸っていた雷は止み、全身に裂傷を浅く負っている。

命までは奪わない威力に留めたのは――与えられた二つの依頼の一つをこなす為には、仕方ない。


「……が、ぐ……」

「よう、気分はどうだ。良い風浴びてスッキリしやがっただろうよ」


銃身の重さを感じさせることなく軽々しく振り回し、腹部に銃口を突きつける。

呻き声をあげるオリオの顔を睨みつけながら問いかけた。


「……良い薬を使ってるらしいじゃねェか。"黒竜の鱗"、知ってるだろ」

「……テメーも、欲しい、のかよ……ッ?」

「要らねえよ。お前と違って"素"でこれだけやってンだ、残念な事にな」

「ッ、アバズレ……女が……!」

「一辺倒に言いやがる。いっそマジで"昇"ばしてやろうか?あ?」

「ぐあッ」


銃口で腹部を抉る。傷口を深く押し込むように抉られれば、痛みに声を上げて悶える姿を見下ろしたまま。


「どこで、手に入れた?」

「……」

「……吐けよ、楽になっちまったらどうだ。あいにくテメーの命についてはどうしようが勝手にしろって話でな」

「……バイズオーグの、クソ尼……か……ッ」

「それからもう一人、テメーに対して個人的に恨みを持ってる奴からの依頼だ。

……殺しちまえば楽だってのに、面倒を吹っ掛けられたこっちの気持ちを汲んじゃくれねェかよ」

「……ッ、は、吐くかよ、とっとと殺せよ……アバズレ」

「そうかよ、じゃあとっとと死ね」


――引き金を引いた。

そして、零距離で炸裂する、『雷撃』の弾丸。

実体を持たない属性のみが、オリオの身体を焼き焦がす。


「ッがあああァっ?!」

「おっと、悪い。弾間違えたわ、こっちか?」


引き金を引いた。

同じ弾丸を、また零距離で。

焼き焦がし、全身を貫く。


引き金を引く。引く。引く。引く。引く。


「や、やめッ、があッ!!ぁ、ああああァッ!!殺せ、殺せよッ!!早く殺――」

「あー、悪ぃなァ」


何度も、何度も。『殺さない』。

何度も、何度も、『痛めつける』。

こいつが屠った命の痛み、こいつが奪った命の重み。

男の罪の重さを、弾丸に込めて。


「ッぁ、あ」

「――こっちも散々な目見てきて腹が立ってンだ。どうせ殺されてくれるンだろ?ちょっと付き合ってくれよ、鬱憤を晴らすのに、お前みたいなクズが丁度良くて、待ち望んでたぜ?」


電流。電流。電流。電流。電流。電流。電流。

痛み。痛み。痛み。痛み。痛み。痛み。痛み。

嫌という程浴びせて、男の意識が一瞬飛べば、次の痛みが叩き起こす。


「ひゃ、ひゃめろ、も、もお、いいだろ、こ、ここまですることッ……ぁがああああッ!!」

「止める訳ねえだろ、"こんな楽しいこと"」


弾切れはない。魔力の続く限り撃ち込める。

アデルの魔力は尽きない。"殺さない程度の"威力だったら、何発だって撃てる。

飽きもせず、笑いながら、嗤いながら、男が痛みに悶える姿に悦を映す。


「が、ッがあ、ッあ、ッうごあ、ッあ、ぁ、あ……ッ!!」

「……楽になりてえか?ああ、楽になれねえよな。良い薬の御利益だ。お前の身体をそうやって頑丈にしたブツはさぞありがたみに溢れたモンなんだろうよ。どうだ?気持ちよくなってきてイっちまいそうか?」

「りぁ、ゃ、ぁめろ、も、もぉ、は、はな、……ガあッ!!?」


振り上げて、振り下ろす。

噴き出した血で汚れた銃口は、顔面に落ちる。

オリオの苦痛に歪んだ顔が、唾液と血に汚れて凹む。

……押し付け、銃口の中に口を突っ込ませる。


「話さなくて良いぜもう。後はサンドバッグだ、とことん付き合ってくれよ。なあ。お前死にたいんだよな?殺されていいんだよな?すっきりさせてくれよ、こっちは何時までも何時までも焦らされてたまらねえって話だぜ、お前みたいな馬鹿は、俺のためにあるようなモンだ。ああ良いなァお前、優しいなァ?こんなにやらせてくれて助かるんだよ……ああ、そう、そうだな。もっとだよ、もっと」

「ッぁ、ぅぁああああああああ!!はな、はなす!!はなして!!はなすから!!やめへくれぇッッ!!」


――アデルの簡単な拷問が、オリオの心を壊す。

そこでようやく銃口が振り上げられ、アデルの肩に乗せられた。


「が、学区の出店ン中に、売ってる奴がいた!!こ、ここ最近はある通りを調べると、"黒竜の許嫁"が鱗を落としていくって!!ガキだ!!ガキが鱗を落として、それを売ってる売人がいたんだ!!そいつから買った!!使えば見下してきた奴等を、見返すことが出来るって!!俺は、俺はそいつに乗せられて――!!」

「……黒竜の許嫁?売人?」

「ぁ、……ああ、そうだ……妙なガキが、ここ最近、夜になるとアスラン学院の近くを歩き回ってて、そいつが鱗を落としていくって……黒竜の鱗だ、ちいせえ鱗ッ……!!」

「……アスラン学院……」



――脳内に新しいピースが増えていく。アデルの頭の中に散らばったピースが、形を成すことなく揺蕩う。

……どういう事だ。だって、そこはカレイドスコープの"御膝元"ともいえる場所だ。

学院、アスラン学院は――"魔邦遣いを養成するための学び舎"であるはずだ。

そんなところに、何故黒竜の鱗をばら撒く、小さな……子供?



「……」

「も、もお、良いだろ……俺は、全部、話……」

「――あ、悪い。そうだな、もう良いぜ。"くたばっても"」

「ぁ、あ……?……ぁギュッ」


囀りを聞くのに、アデルも飽きたというように。

考える頭を一度停めると、肩から勢いよく振り下ろされた白金色の重量物は、

オリオの顔面に、勢いよくめり込み――意識を刈り取った。

痙攣し、脱力した姿を見下ろした。


「……死ぬってのはな、生きるより楽だぜ。ああ、生きてたほうが、"お前の地獄は続く"」


――それから間もなく、レアトレーチェへの連絡をする。

『オリオ・ヴァーレルの"処分"を任せた』と告げ、向こうからの連絡機越しの声が笑っているような気がした。

殺しても良いという依頼を、アデルは今回初めて、殺さずに終えた。

アデルは、そうして依頼を終えた。




*  *  *






――『ノースタウン・アカデミアスクエア』


カレイドスコープのセントラルタワーから、北に向かうと間もなく見えてくる門を潜り抜けて、星々の灯りと、都市の光源となる『魔晶街路灯』に照らされた学生街。


魔邦についての学問の全般を習う魔邦学院「アスラン学院」が中央に建つクセルトリア北部に位置する学生街に入れるのは学生か教師、または双方の親族だけだ、

アスラン学院に通う学徒達の寮は男女寮それぞれに分けられており、アスラン学院を挟んで東西に建っているが、今は賑わいを報せる事もない。門限が厳しいからだ。

学院付近の広場には魔邦に関する学問書を販売する書店や、学生用に加工された教材としての魔法触媒を売る魔邦学院公認の販売店が点在しているが、夜の更けたこの時間に開いている店は、探すまでもなく見つからない。



――その夜闇の中を、歩いていく足がひとつ。



街路灯の光を浴びて、白い外套によって頭まですっぽり覆われた小さな足で、道を往き、そしてまばらに灯った光から光へと。



「……ガッコ―って、静かなのね」




凛と、少女の声は、闇に木霊する。

歩む足の主は、その場から居なくなったが。

その標をつけるように、黒い小さな、硝子のような破片が、ぽつり、ぽつりと。


街路灯の灯りに触れて、怪しく煌いていた。

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