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 籠飼翔の家で見た、引き出しの中身。

 それを三人に伝えると、三人共が同じように顔をしかめた。

「クロいなー」

「……クロだな」

「クロ……かなぁ」

 何がクロいかというと、籠飼翔が鈴鳥紗枝の存在を気にかけ、そして小鳥遊雄介に延々と連絡を送っている事。

 鍵の掛けられた引き出しの中に女性との写真が大量に、しかも同じ場所に例の箱が収納されている。

 完全な証拠にはならないが、女性との写真の段階で警戒は高めるべきだろうという結論だった。

 ただ、和輝にはどうもしっくりこない部分が有る。

「……それで、手とか出されませんでした?」

「えぇ……まぁ、そうね。押し倒された訳でもないし」

 和輝は、頭の中でここまでの籠飼の情報を整理してみる。

 まず、女性に人気が高い。これはミッターで複数の女性と繋がりが有る事からも推測出来る。

 そして女性への関心も高い。オブラートを外せば、女好きだ。こちらは先の推測と、女性と撮った写真を、わざわざ名前付きで他の写真と別に保存している事から考えられる。

 女性への警戒も緩いと見える。初対面のまひろを家に上げたのが良い例だろう。

 女性にモテるイケメンスポーツマン。短く纏めるとこうだ。

 そして以上の印象からしても、とっくに何人かの女性には手を出していると仮定しても不思議ではない。

 女性に対しても、積極的に関わろうとする姿勢が伺える。

 では、そこまで積極性が有るとして、どうして鈴鳥紗枝にはずっと小鳥遊経由で連絡を欲しがっているのだろう。

 ミッター上とはいえ、籠飼は実際にまひろ本人とやり取りしている。鈴鳥はまひろに固定の連絡先を教えているし、携帯を持っていないなんて事はない。小鳥遊から得る情報は、極端に言えば鈴鳥の連絡先だけで良い筈だ。

(俺達の周りだと、その人と会ったのは鈴鳥さんと神谷さんの二人だけだけど……)

 今しがた戻って来たまひろの証言からも、写真以外で被った被害は無かった。

 何というか、彼の印象からは肩透かしを喰らったような中途半端さを和輝は感じたのだ。

「健全っちゃ健全なんだけどな……」

 和輝の呟きに、瞬が反応した。

「なに、お前もそう思う?」

 彼は和輝と同じ思考に至った様子だ。顔を難しくして、視線は窓の外に投げながら腕を組んでいる。

「なーんかさ、微妙にズレてるって言うか……チグハグなんだよな。まるで……」

「まるで?」

 瞬の顔に、小さ目の影が掛かった。

「まるで何? どうしたの?」

 ドリンクバーから夏樹と一緒に帰宅した舞が、グラスをテーブルに置いて訊ねる。

 今までの会話が聞こえていた様子は無く、怒っている雰囲気では無い。単純な疑問の目を向けて席に戻る。

「いや……こうさ……籠飼って既視感有ンだよな」

「誰に?」

 注いで来たジュースに口を付けて舞が問う。

「俺に」

「……はぁ!?」

 舞は今度こそ目に怒りの色を浮かべて、グラスをテーブルに置いた。

 そんなに好きな人と瞬を比較するのは気に食わないのだろうか。

「そんなワケ無いでしょ! 大体ね、あとはどうやって『箱』を回収するかって事じゃないの?」

「そうだな……籠飼の人柄よりまずそっちだ」

 優弥も腕を組んではそれについて考えながら口を開いた。

「箱は実際に家に在ったんだ。ソイツをどうするかが問題だな」

 それは、そうか。と和輝も頭を切り替える事にする。

 これ以上籠飼について詮索しても予想の域を超えない。一度、横に置いておく事にしよう。

「そうなると……もう一度家に入る手段を探すところからか」

 どうする。また、まひろに会いに行って貰うという手も有るが、あの写真の存在を知った以上、迂闊に行くと危ない目に遭いそうだ。

 かと言って舞では懐柔されないかという不安要素が残る。男三人に至っては、まず繋がりを得られるかどうか。

「ふふ……そうじゃないわよ、相田君」

 悩みに悩む和輝に向かって、穏やかな声でまひろが語り掛けた。

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