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 まひろの言った事を要約するとこうだ。

 彼女は元々オカルト研究会……もとい、オカルト・ミステリー相談研究会に所属してくれる人員を探していた。

 研究会は最低五人の部員が必要だ。既に所属しているまひろと舞を除いてあと三人。

 そこへ、都合良く声を掛けて来た男が居た。もっと正確に言えば、多数の女性に声を掛けていた中にまひろか舞が居た。それが瞬だ。

 瞬は一緒に遊べる女性を、まひろはサークルに入ってくれる人間をお互いに探している。

 それが、肝試しというイベントで互いに噛み合ったのだ。誘いに掛けたのは、まひろからだろう。

 まひろは恐らくこんな事を言った筈だ。

「たった三人で肝試しに行っても盛り上がりに欠けそうよねぇ。どうせ遊ぶんなら、お友達も一緒に誘ったらどう?」

 これに対して瞬は考える。

 お化けが苦手な自分が頼れ、かつ誘い易い相手なら優弥が適任だ。

 だが、優弥は顔が良い。奴と一緒に居たら注目はそっちにいってしまわないか、と。

 そこで自分よりも目立ちそうになく、かつ誘い易い人間も含める事にした。相田和輝を。

 まひろに取ってもこれは僥倖だった筈だ。何せ、欲しかった人数をいきなりクリアしたのだから。

 どうして肝試しで入部を決めるに至ると思うのか、それは理解が及ばない。まひろの性癖とでも片付けておこう。

 斯くして集まってしまった三人の男達だが、今一乗り気ではない様子だ。

 それもその筈。ただのイベントに過ぎなかった肝試しで、本物の幽霊と出遭ってしまったのだから。

 今日この日、この時間帯に呼ぶ事は予め計画の内には入っていたのだろう。

 まひろは思いあぐねる。このまま誘いを掛けても入ってくれるだろうかと。

 その時、彼女の携帯に光明が届いた。

 『依頼人』。それは天の恵みと思ったに違いない。

 この依頼人からの相談を、もう一度この五人で解決に導く。親睦も深まるなら言う事は無い。居心地の良さは所属する人間の長生きに繋がる。

 そうすれば、多少なりとも前向きな考えに……。

「断る」

 ならなかった様だ。

 優弥はキッパリと言い切ると、にべも無く拒否した理由を連ねた。

「霊が視えるっつってるヤツが、自分からわざわざそんな場所に足突っ込むと思うか? 面倒なだけだ、他を当たってくれ。お前くらいの美人が誘って断る奴はそうそういねぇだろ」

 と、たった今断った男は目を閉じて腕を組むと、ソファの背もたれに体重を預けた。

「はーい、城戸さん」

 隣で舞が挙手している。

 それを見もせずに、優弥は口だけ動かした。

「はい何ですか? 本条」

「アタシも霊が視えながらここに居るんですが!」

「お前は好きで居るんだろ!」

 他愛の無いやり取りの眼前では、未だに瞬が神妙な面持ちで唸っている。

 和輝はと言うと、こちらはこちらで悩んでいた。

 四人とも既に思い出の中の様だが、和輝にはまだ森崎夏樹という悩みの種が存在しているのだ。

 元はと言えばそれを解決する為にここに来た。

 オカルト・ミステリー相談研究会の依頼人と言うなら、和輝が居の一番に手を挙げたいところである。

 和輝はそこまで考え、何かを思いついた様子で顔を上げた。

「まひろさん。その……依頼人って、あとどれくらいで来るんですか?」

 意気消沈としてしまったのか、まひろは少し遅れて反応すると、奥の机に置いていた自分の携帯を取りに戻る。

「えぇっと……ちょっと待ってね」

「それなら、もう来てるんじゃないか」

 まひろが携帯の画面を開く前に、優弥は彼女の方を見て事も無げに言ってのけた。

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