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唐突に核心を突かれた気がして、和輝はたじろいでしまった。
「な、何か……って?」
舞は首を傾けたまま、まだ言い悩んでいる。
確かに彼女にも夏樹について相談しようとはしていたが、ここは一度窺ってみるべきだと判断した。
これが霊的な何かで有るなら、相談のチャンスだ。
だがそうでないなら、夏樹の話を持ち出した瞬間に和輝は今からこっ恥ずかしい思いをする事になる。
「うーん……相田君、来たの今だよね」
和輝は質問の意図が解らずに、怖ず怖ずと首を縦に動かした。
「ほら、アタシ霊感有るって言ったでしょ。んでさ、多分来た時くらいからだと思うんだけど、なーんか変な空気有んだよねぇ」
舞は疑問の顔を崩していない。
相談をするならこのタイミングが最適か。
だが、和輝がそうする前に舞の方が続けて口を動かした。
「でも……今、キミを見た感じそんな雰囲気は漂って無いし。気のせいだったかも?」
きっと気のせいなんかではない。
舞が何かを感じ取った時は大学に入った時。つまり和輝のすぐ後ろに夏樹が居た。
現在は二人の姿が見えない何処かに散策に行っている。それだけの事なのだろう。
よし、と和輝は決心した。
話すなら夏樹の居ない今が絶好の機会だ。居たら話の邪魔をしてくるかもしれない。と言うか邪魔だ。
和輝は言うべき言葉を頭の中で復唱した。
(あの墓地で遭った幽霊に憑りつかれた。家にまで来て困っている。何とかならないか)
たったこれだけで良い。だけどいざ言うとなると少し緊張する。
女性に相談なんてした経験が無いからか。それとも本当に憑りつかれたなんて体験を、上手く説明出来る自信が無いからか。
和輝は呼吸を整えた後に、大きく息を吸い込み。
「じゃあ行きましょっかねー」
舞が喋り始めたのと一緒に、開き掛けの口を閉じてしまった。
本当に隠さず話してしまって良いのか。
舞は霊感が有るし霊が視える。それはそうなのだが、それ以外は普通の女の子だ。
墓地に行った時だって、幽霊の足音や夏樹の出現にだって怯えていた様子だった。
最後には夏樹に対してはあまり怖がって無かったとはいえ、憑りつかれたとあっては瞬と同じ反応を示される可能性は捨て切れない。
そうなった場合、相談どころではない。
それなら優弥かまひろに話してみた方が良さそうだ。道は遠のいてしまうが仕方が無い。
「何してんの? 行きますよー」
結論に至った和輝は代わりに言うべき言葉を探して、離れて行く舞に質問を投げ掛ける事にした。
「何処に行くって?」
「え!? 三階だけど……キミもそれで来たんじゃないの?」
何の話だかさっぱりだ。
和輝がここに来た理由は、元々は瞬からの連絡が有ったからであって……場所を指定された訳ではない。
兎も角、そこに行くと言うのなら付いていくのはやぶさかでは無かった。
探してみるのにも当ては無いのだ。携帯を見てもまだ連絡は返って来ていない。
舞は両手を頭の後ろで組んで、何かに気付いたように顔の角度を上げた。
「あ、そっか! 相田君、行った事無いんだっけ。じゃ、アタシが先導してあげよーう」
ダンスのターンをする様に反転した舞は、校舎の上を指差して陽気な大股で歩き出した。
また変な事に巻き込まれないと良いけどな、と和輝も少し遅れて舞の後に付いて歩き出す。
何かを忘れている気がしたが、歩き始めた頃には頭の中から抜け落ちていた。
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