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和輝は辺りの建物を見回す……までもなく、瞬がそこに向かって行った。
細道を抜けた瞬の先には、辛うじて車が通れるような一本道が敷かれている。
細道を出て突き当たりを左に曲がり、そのまま一軒家を飛ばしてから、瞬は駐車スペースが数台、入ってすぐに奥から上れる二階建てのアパートへと入って行った。
アパートと言うと古い木造、と和輝はイメージするのだが、ここはそれとは少し違って見える。
色こそ茶色で古風な印象を与えるが、比較的新築そうだ。
一棟八室の、一階の一番奥まで進んだ瞬は、そのままポケットから鍵を取り出して玄関扉に差し込んだ。
見た目より軽く玄関扉を開くと自分は颯爽と中に入って電気だけ点け、再び扉を開けてストッパー役となり、後ろにいた女性二人を快く招いた。
「まぁまぁまぁさぁさぁさぁ! どうぞゆっくりしていって下さい!」
「おー、ありがと! お邪魔しまーす!」
「お邪魔するわね」
最初に舞が駆け込み、次いでポニーテールの女性もゆっくりと後に続く。
「思ったより良い家だな」
自分の後ろからそんな低い声が聞こえて来たので、和輝は無言で頷いた。
実際に来た事はなかったのだが、前に家のことを瞬から聞いていた和輝は、入り口から中を覗きこんで確かめてみる。
「まぁ、狭いらしいけど。こいつん
そう言って玄関へ踏み入れようとした和輝の足を、瞬の片足が塞き止めた。
「野郎は一人千円な」
「お前いつか友達失くすぞ」
二人が中に入った途端眉間に皺を寄せた友に悪態を返すと、ついでに塞いでいた足を蹴っ飛ばして和輝と優弥は強引に中へ入った。
「冗談だって……」
と鍵を閉める音と一緒に瞬の声が聞こえたが、特に反応はしてやらないし本気で言っていたならもっと強く蹴っていたところだ。
中では隣の部屋に聞こえそうなくらい女子二人がキャイキャイと騒いでいる。
二人と言っても主な声は舞だけだが。
お湯を沸かすことにしか使われていなさそうなキッチンを通って洋室の見える扉を開くと、その声がより鮮明に聞こえた。
「で、買ってみたんだけどさー。何か変なとこに穴開いてんの!」
「何処?」
「胸!」
何だかもう少しで理解出来そうで理解出来ない話題に、和輝は声を掛けるべきか戸惑った。
「じゃあ、一回も着てないのね」
「着れないってあんな服!」
あぁ、服か。と判断の付いた和輝の目の前を高い身体が横切る。
「ネットで買うからだろ」
「いやー、ホントね。やっぱ現物見ないと……」
そこまで言って、舞は和輝の隣に腰を下ろして胡坐を掻き始めた優弥へ振り向く。
「あれ、言ったっけ? ネットで買ったって」
「現物で買ったらそんな話にならねぇだろ」
「ヤベェぞ和輝。アイツぜってぇストーカーするタイプだ」
瞬の言葉には適当に相槌を打つ。
大して知らない相手の会話に瞬時に滑り込む優弥に心底驚いていた。
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