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和輝は夜道を下向きに歩いていた。
自宅のアパートに帰っても特に何をする気力も湧かず、変に高揚したままの脳内では仮眠を取る事も出来ず、買って来たパンとカップ麺を黙々と胃に収めて今夜に備えるくらいしか出来なかった。
周囲からすれば、遊びに行くだけだろう、と馬鹿にすらされかねないが、和輝にとってはそう簡単に済ませられる事ではないのだ。
十九年間、彼女歴無し。
良い感じまでいった異性との経験も無し。
そういう事を知ったのは、文字や映像の中だけ。
平凡のまた平凡な人生を歩み、良くも悪くも派手な遊びすらした事が無い。
そんな和輝の目の前に突然現れた美女二人。しかも、初対面にも関わらず夜遅くに遊びに出掛ける。
何かを期待しない方が無理な話だ。
少なくとも、和輝は帰宅から現在に至るまでずっとそのような考えを、自分に言い聞かせている。
瞬と優弥はどう感じているか知らないが、大学での様子を見るに優弥は慣れた対応だったし、瞬は昂ぶりを隠し切れてすらいない。
比べて、和輝は同じ様な感情を抱いているのに表に出さず、だが期待に胸を膨らませる。
もしかして、瞬の方がまだマシなんじゃないだろうか。
(……人の事言えない……よな)
舞は瞬と既に連絡先を交換している程の仲だ。
まひろという女性は自分で思うくらいには不釣り合いな美貌の持ち主。
優弥とだったら、美男美女のお似合いカップルに見える。
和輝の中で、瞬と舞、優弥とまひろ、という構図が勝手に思い浮かび、じゃあ俺は何処を彷徨うんだ?と溜息を吐いた。
(俺……邪魔なんじゃないか?)
出掛ける前までは高鳴りっぱなしの心臓も何だか急にクールダウンしている。息苦しささえ感じた。
和輝が目指したのは、瞬のアパートではなく、アパート近くのコンビニだ。
瞬の住むアパートはやや入り組んだ場所に在る。
初めて行くには説明にも手間が掛かった。
その点コンビニだと目立つし、そこは隣にレストランも在るので待ち合わせの目印には最適だ。
二度、三度止まりそうな足を無理矢理にでも動かし、和輝は淡い光の元へと進む。
近づくにつれ、数人の話し声が聞こえた。
どうやら、和輝以外は既に集まっているようだ。
そうすると和輝はまた気分を低下させてしまうのだが、約束したことを今更取り消すこともいかず。
(遊びに行くだけだ……そうだ、期待しない方がいい)
と、かつてから自分に言い聞かせていた言葉で己を励まし、四人の元へ向かった。
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