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 午後の授業も酷く退屈だった。

 加えて強い空腹感。

 昼飯を食い損ねていた事を思い出して、和輝はノートの上で項垂れた。

 そう言えば今日は朝も抜かして来たんだっけか。

 終わったら一先ず何か口にしよう。

 そう心に強く決めて、和輝は今日最後の講義の残り三十分間を半ば無心で過ごす事にした。

 講義が終わったら、コンビニで何か買って……帰って、一度風呂にでも入って瞬の家?

 いや、それなら直接家に行った方が気が楽か?

 少なくともベッドで一休みしていたら、明日の朝まで起きられる自信は無い。

 無心になったらなったで今夜の事を色々画策してしまう。

 今夜の事を考えていると、何故か心臓が早まって来る。

 結局は和輝も瞬と同じで、女性と遊びに行けるのを心底楽しみにしていたのかもしれない。

 ここ最近は、覚えている限りでも高校の三学期辺りから今日に至るまで遊び仲間は決まって男だった。

 野郎しか居なかった自分の輪の中に、それもとびきり美人と愛らしい少女が混ざって来るとなれば浮かれざるを得ない。

 うん、きっとこれは邪な考えでは無くて、男としての性なのだ。

 別に目立って行動する事は無い。

 勢い余って急接近するような事もしない……多分。

 ただ、あわよくば……。

(何かの切っ掛けになったら良いな……)

 ノートを取る為の手はすっかり止まっていた。

 自分がうつらうつらとし始めている事に気付き、和輝は慌てて姿勢を伸ばす。

 と、そのノートの上に何か小さな物が投げ込まれて来た。

 紙だ。二つ折りにされたノートの切れ端。

(後ろからか? 今時紙回しも珍しい……)

 しかも、何も言われないという事は自分に宛てられたものだろうか。

 開けるのを渋っていると、すぐさま二枚目が投げ込まれて来る。

 何だか『開けて!!』と催促が掛かっている気がして、もし違ったらごめん、と和輝は思い切って二つ折りの紙を開いた。

 一枚目は『気付いてください』。

 二枚目には『私はここにいます』。

 ドキッとして、思わず恐る恐る後ろを振り向く。

 目が合ったのは、名前も良く覚えていない女子生徒。

 誰だ……全然、話した記憶も無い。

 数秒間の沈黙の後、お互いの顔に疑問符が書かれている事に、あれ、何だかおかしいぞと気が付く。

 多分相手も同じだったようで、その女子から『それ後ろの人から』とのジェスチャーを受け取り、丁寧に身体までずらしてくれた。

 彼女の身体を挟んだその向こう側では、見覚えの有る小柄な少女がにこやかに手を振っていた。

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