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本人に自覚が有るのかどうかは知らないが、黙って足組みしているだけで様になるのだから男目線には羨ましい。
それは隣で歯ぎしりをしている瞬を見ても明らかで、例えば自分達がスタート地点から走り出すのなら優弥は五百歩先から悠々と歩き出しているのだ。
そういった点で今の瞬には同調出来るが、彼も決して悪くはなく、和輝の見る限りでは整った顔立ちだ。
健康的な肌の色だし、眩しいくらいの明るい茶髪とピアスは人によっては逆に幼く見えるかもしれない。
その瞬を見ていて無意識に自分の癖毛の髪を押さえていることに気付いた和輝は、すぐにその手を降ろした。
髪くらいセットしてくれば良かった。
ただでさえ『ダルそうな顔』と周りに言われる事があるのだから、あまり無精そうな部分は見せたくない。
見せたくないだけで、手は付けないのだが。
「優弥は良いよなぁ? 面識も無いのに手ぇ振るだけでキャーキャー言われるんだからよ」
早速瞬が噛みついてきた。
それは事実だし、どちらかと言えば瞬と同レベルの立場にあるので和輝が優弥の側になって反論する気にはならない。
それを言われた優弥もすぐに切り返した。
「逆に考えてみろよ、手を振るだけで一々反応されるんだから面倒臭いだろ」
そう言われてそれもそうだな、と思った自分が何だか悔しい。
それに優弥の場合、ただ単に面倒臭がり屋なんじゃないか。
彼の家に行った時に目にした、積み上げられたままの本や起きた時のままにしてあるベッド。顔に隠されているが寝起きのままで登校して来る事もざらである。
誤解しないで貰いたいのが優弥の私生活を一部始終観察しているのではなく、朝に学校の洗面所へ行くと良く彼と鉢合わせするのだ。
学校に入って東側の、校門から一番近い洗面所。
一限が始まるまでの間たっぷりと時間を使って、そこで身だしなみを整えたりと準備をしているというのは最近知った。
「……彼女、名前何て言うんだ?」
優弥が小柄な女性を見ながら瞬に問う。
切れ長の目が更に半分細まった気がする。初対面に対して笑顔が足りないのはいつものことだ。
「はぁ!? 誰が教えるかッバーカ!」
唾が飛びそうなくらい口を開けて瞬は反抗した。
あぁそう、と優弥はすぐに諦める。
首を瞬と逆方向に傾けていたので本当に唾が飛んでいたのかもしれない。
「名前くらい自分で訊けッバーカ!!」
再度低レベルな馬頭が優弥に振り掛かった。
「良いですかぁ!? お前みたいに節操なく声かけまくり爪跡つけまくりのヤツなんざロクな事にならねぇんですぅ!!」
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