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「和輝ぃ……話題を逸らそうったってそうはいかないぜ」

「いやそうじゃなくて……」

「何せ一世一代の大仕事っつっても過言じゃねぇんだからな!」

「待て待て! 皆見てるっつってんだろ!」

「だーッ!! 良いんだよそんなこたぁ!」

 慌てて制止に入るものの、瞬の勢いは尚も止まらない。

 一旦熱が入ったらまるで特急列車のごとくしばらく止まることがなく、発車ボタンが何処に付いているかもわからない。

 瞬の悪い癖だと思うが、放って置いたら勝手に止まる。

 かと言ってこんなところで発車して貰っても困る。

 取り敢えず箸は置いてくれ。

 瞬は腰を浮かしたかと思うと、急に和輝の首に箸を掴んだままの右腕を回し、耳元でトーンを落として囁いた。

「ほらほら、相田きゅんのだぁい好きな女の子も居るんだぜ?」

 どうやら駅は比較的近かったようで正直まずホッとした。

 このまま注目の的になり続けるのはごめんだ。

 首に回しているのと逆の手で瞬が指し示しているのは、先程の女性達だ。

 瞬と何かやり取りをしているであろう携帯を片手に持っている方は、小柄で座っているのに良く動いていて子供っぽい。セミロングの亜麻色の髪が行動と対照的な感じがした。

 その隣でポニーテールの女性が見守るように座っている。

 濃ゆい赤茶の髪は着ている黒い服より目立っていて、白い肌に浮かべられた穏やかな笑みが印象的だった。

 二人組は流石に会話が聞こえていたのかクスクスと笑っている。

 瞬のせいで名も知らない女の子達から『女好き』の称号を与えられたかと思うと不服だったが、普段女性と接点の無い和輝にはそれも何だか新鮮で悪くはなかった。

 どうよどうよと悪戯悪魔が囁くその中で、和輝は笑い声が自分達の隣からも聞こえている事に気付く。

「いやそれ……お前の狙いだろうが」

 口角を上げて吐息混じりに切り込む優弥は、小さく手を振っている女性二人に同じ幅で手を振り返した。

 それを見た小柄な方の女性は、隣のおしとやかそうな女性に嬉しそうに話しかけている。

 こういう時、優弥のような整った顔の男は得をする。

 長身で手足も長い。髪を少しだけ整えて目の下のクマを無くせばそれだけでモデルとしてもやっていけそうだ。

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