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 そして和輝は、何故瞬と一緒に目の前の女性も反応したか、について少しだけ考えを巡らせてみた。

 ほんのちょっと考えれば理解出来そうだが、これは関係を探る為の熟考ではない。

 そう、どちらかと言えばそこからどう友をからかうか発展させる為の思考。

 十秒も掛からなかったと思うが、きっとその間、和輝は距離を置かれそうな程ニヤついていたと思う。

 さて、何処から掘り出してやろうか……まずはお相手のことからか?

「瞬お前……昨日かのじ……」

「ちょ、ばっかお前……! そうじゃなくてな!?」

 言い掛けた途中で瞬の声に強く制止された。

 一つ、仰々しく咳払いを挟んだ瞬は改めてこちらへ向きなおる。

 何個か言い出す台詞を選ぶように、指先を動かしながら次の言葉を探す。

 選び抜かれたのは、全く誰も想定していなかっただろうものだった。

「な、肝試し行こうぜ!」

 突然の予期せぬ提案は、和輝を面食らわせるには充分だった。

 一方の優弥はそんなことか、と冷静に携帯の画面を指でスライドさせている。

 彼を驚かすにはこれじゃ全く足りないようだ。

 少なくとも和輝の場合、真顔の無言で疑問を投げかけるのが精一杯だ。

 突拍子の無い誘いは瞬の特権だが、余りの脈絡の無さに「夜遅くまで新しく出来た彼女と遊んでいたんだろう」などといった和輝の考えは吹き飛んだ。

 やっと和輝の口から絞り出された言葉は、当然の疑問でもあった。

「は……肝試しぃ? 何でまた急に……」

 照れ隠しの話題の切り替えかとも思ったが、そう言えば先程優弥の問いにも何か答えたかった様子があったのを思い出す。

 和輝の言葉に瞬はまたもや仰々しく息を吐いて嘲た。

「オイオイオイ……何言ってんだよこのクールビューティフォー……」

 腹が立つ程芝居掛かっている。何がビューティフォーだ。

 そういう単語を聞くとこいつが大学に受かったのがつくづく謎である。

「この季節! この猛暑!! と言ったら何だね? 城戸君」

「あ? そりゃお前海……」

「肝試ししかないでしょーよ!!」

 優弥の答えにも間髪入れずに被せてくる。

 強引だ。

 そして五月蝿い。

 今やこの机には食堂の半数程もの人間の視線がひしひしと感じ取れる。

「お、おい皆こっち見てるって……」

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